第6話 拠点作り・序
side アルマ
(そういや1年前に冒険者が調査に来て1人だけ逃がしてしまったが、あれ以来調査員は来ないな。また調査員が来るようなら移動しようと思っていたが…)
『推測。虫系モンスターの幼体1匹にパーティが全滅したという話は現実味がありません、故に虚言として取り合ってもらえなかった可能性があります。』
(なるほど…まぁそれにしたってそろそろ拠点のひとつでも作りたいな。)
そう思いついた俺は手頃な洞窟を探し始める。
しばらく移動したところでやけに意識が惹かれる洞窟を見つけた。
(……)
『告。洞窟内部から高濃度の魔力が流れ出ています、深部に高魔力を保有している生命体が存在している可能性が高いです。』
(どうりで気になるわけだ。)
俺は自分がやけにこの洞窟に執着している理由に納得しつつ中に入る。
(意外と広そうだな…)
俺は思いつきでツノから微弱な電磁波を洞窟内部に向けて張り巡らせる。
(何かできないかと思ってやったけど我ながら妙案だったらしいな。)
俺の放った微弱な電磁波の網にかかった生物が感覚的に分かる、使えるなコレ。
『【スキル:
(なるほど、こういうスキルの取り方もあるのか。)
俺はさっきソナーで見つけた一番近くの生物の元へ移動する。
生物の反応があった場所にたどり着くと、そこは小さな広場のような作りになっていた。
そして、その中心では緑色の子供くらいの大きさの人型生物がイノシシを食っていた。
(見るからにゴブリンって感じだな。)
ある作品ではスライム級の雑魚扱い、ある作品ではその狡猾さでベテラン冒険者すらも手にかけてしまう曲者扱い、前者であれば楽に狩れるが…
(自分たちよりデカいイノシシを食っている…どうやら曲者タイプのゴブリンらしいな。なら様子見は無用だな。)
俺は口から
「ギギャギャアアァァ!!!!」
複数のゴブリンはしばらく似たような断末魔を上げていたが、すぐに焦げ臭い匂いを発しながら静かになった。
(コイツらの鳴き声で手頃な数が寄ってくれば御の字なんだが…)
俺がそう考えていると奥からワラワラと大量のゴブリンが現れる。
(さすがに甘かった…この数は予想外だ。)
俺の目の前には洞窟の奥が見えないほどに膨大な数のゴブリンがいた。
(クソ、こんな数今までどこに隠れてたんだよッ!)
俺は内心悪態をつきながらツノから高威力の放電をする。
バリバリバチバチと次々とゴブリンが黒焦げの焼死体となっていく。
(クソ、キリがない!それなら、これで…!!)
ツノに膨大な魔力を込めると、バリバリと電荷が飛び散る。
(どうだぁッ!!)
圧縮された雷の魔力が直線上にレーザーのように伸び、射線上のゴブリンたちに風穴を開けていく。
(まだだァ!!!!)
俺はレーザーを放射したままグルンと胴を薙ぐと、白熱の閃光がゴブリンどもの大群を横一文字に両断した。
レーザーの照射を停止すると俺のツノは赤熱化してシュウシュウ音を立てていた。
(危なかった、もう少しでもレーザーの照射を続けてたらツノが溶けてたかもしれん…)
『お見事です。膨大な存在力を摂取しました、計算に時間がかかります。【
(シエルが褒めた上にスキルが進化じゃなくて転化?…いや、今はそれより生き残りがいないか調べないと。)
ソナーを使いたいがアレはツノから電磁波を飛ばすから今は控えたい俺は目視で周りを確認する。
(……大丈夫そうか?しかし、ゴブリンの死体が多過ぎるな。この中に身を潜められては敵わん。)
俺は壁の方まで寄ると壁をよじ登り天井まで移動する。
(よし、ここからなら索敵しながら進めるし新手と出くわしても早々バレないだろ。)
俺はそのまま洞窟の天井を這って進んでいこうとした瞬間、背中に何かが着弾して爆発を起こした。
(なんだ!?)
俺はすぐに後方にある死体の山に目を向けると、ボロボロのローブを着たゴブリンが杖を構えていた。
よく見ると杖の先端から煙を燻らせている。
(アイツが魔法を撃ったのか…今は雷電は使いたくない、となれば)
俺は口から鋼糸の塊を弾丸のように飛ばした。
キュインと空を裂く音と共にローブを着たゴブリンの額にコイン1個分の風穴が開いた。
ゴブリンはしばらく立ち尽くすと、額から血を噴き出しながら倒れた。
『【スキル:
(おお、これはラッキーだな。)
思わぬ棚ぼたで俺は頬を綻ばせながら(?)進んでいく。
洞窟は多少入り組んではいるが、迷うほどではなかった。
最奥までたどり着くと先程以上の大軍勢が待ち構えていた、しかも明らかにゴブリンの上位種のような奴らも見て取れる。
そして、上位種を両側に侍らせて石でできた玉座に座る一際巨大なゴブリンがいた。
(フェンリルほどではないにしろ…アイツはヤバいな。)
幸い、天井を這っていたのもあり俺の存在には気付いていないらしい。
(雑兵の群れを片す分には問題ない、上位種が混ざってきても多分勝てる……だが、
『推奨。新スキルによる極大範囲攻撃を提案します。』
俺がどうするか考えているとシエルから鶴の一声がかかる。
(新スキル?糸弾のことか?)
『否定。【スキル:王雷】のことです。』
(そういえば大群を相手してる時になんか手に入れてたな…スキルの詳細は。)
『王雷(おうらい):その雷は神をも焦がす神罰の矢、防御貫通効果を持つ雷を放つ。範囲殲滅アクティブスキル【
(デメリットがデカい…が、今は他に方法も無いか。使用方法は?)
『念じれば発動します。』
(よし、【獄雷】。)
発動した瞬間ツノから黒い雷が迸り出す。
バチバチという音にゴブリンたちが反応する。
ボスゴブリンが俺を指差して何か言った瞬間、周囲にいた上位種のゴブリンたちが驚異的な跳躍力で俺に急接近してくる。
だが次の瞬間、俺のツノから光すら飲み込む漆黒の本流が放たれる。
天井にいる俺を見上げていたゴブリンたちが呆けた表情のまま闇に呑まれる。
それはさながら、天から降り注ぐ神の裁きだった。
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