第8話 拠点作り・急

side アルマ


(ひとまず不慮の事故ではあるが、この大穴という下地ができたのはラッキーだったな。)


『どのような拠点になさるおつもりですか?』


(そうだな…外から攻め難く、内に入れば逃げられない。そんな砦を作ろう。)


『承知しました。では私の指示通りに動いてください。』


(ああ、頼む。)


『まず壁面に沿って螺旋状に通路を作りましょう。』


(わざわざ通り道を…?まぁ頭脳担当のお前のやることだしな。)


俺は壁面を大雑把に雷電で削り、細かいところは噛み砕いたりツノで削っていく。


作業を進めていく中、数時間経ったところで俺は気付く。


(この穴、深くないか…?)


『マスターの攻撃がそれだけ強力だったということです。』


(シエルの見立てでいい、どのくらいかかると思う?)


『約1週間ほどかと。』


(意外と短いな…よし、1週間を目処に進めていくぞ指示を頼む。)


『分かりました、では──』


──1週間後──


結論から言えば、俺の巣はアリの巣型のダンジョンと化していた。

螺旋状の通路は真っ直ぐ降りられれば時間をかければ底にたどり着ける、だが通り道には無数のの横道が掘ってある。

その通路は袋小路になっているものもあればループするように作ってあるものもあり、中には近道になるように掘ってあるものもある。

何故か問えばシエル曰く、『適度な刺激は必要でしょう。』とのことらしい。


俺は巣穴を見上げながら達成感に満たされる。


(…為せば成る、か。やってみれば意外とできるもんだな。)


『私の演算とマスターのトンデモ馬力が合わされば造作もありません。』


(トンデモ馬力て…けど、そうだな。)


シエルの言い回しにクール美女が無表情でジョークを言う姿を幻視する。


(…顔は見えんが、シエルは随分表情豊かになった気がするな。シエル、ステータスを見せてくれ。)


『ステータスを表示します。』


------------------------

名前:アルマ


種族:甲虫帝王/特異種/成蟲/前期

成長度:3%


固有技能

・甲帝

・シエル

・王雷

技能

・金剛殼

・同化

・掘削

------------------------


(途中から掘り進めるのが楽になったと思ったら、やっぱりスキルが発現してたか。)


『素養があれば行動に移すことで熟練度を獲得し、スキルが発現することは予想していました。』


(全部計算の内か、うちのサポーターが優秀で頭が上がらないよ。)


『……』


気のせいかも知らんが、シエルからドヤ感が伝わってくる。


気を抜いたからか、急激な空腹感に襲われる。


(作業に夢中で忘れてた…そういや穴に籠って何も食ってないな。)


『1週間の間で僅かですが近辺にモンスターが出没しています。』


(思ったより早いな。)


『いち早く高濃度の魔力に順応した種、それはつまり──』


(他より強いモンスターってことか…)


俺はしばらく考え込む。

安牌を取って弱いモンスターたちが現れるまで待つのも手だが…


(そんなことじゃ強くなれんよな…シエル、行くぞ。)


『魔力反応があった場所を共有します。』


シエルのサポートで強い魔力を感じる場所が感覚的に理解できるようになる。


『マスター何をしようとしているのですか。』


俺が巣穴の壁面をよじ登ろうとするとシエルから待ったがかかる。


(…?穴を出るんだろ?)


『マスターは成蟲となったことで羽を手に入れました。つまり今のマスターは──』


『──飛べます。』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る