第2話 シエル

side ???


綺麗な青空にしばらく思いを馳せた現実逃避したあと俺は周囲を散策し始めた。


(酷いな、猛獣と虫の食い合いだから仕方ないとは思うが。)


周りは互いに貪られ食い散らかされた死骸が多く残る。


それはそれとして俺は少し困惑もしていた。


(この惨状を見てと思う俺もモンスターコイツらと同じということか。)


『肯定。』


物思いに耽りながら慣れない幼虫の身体でノソノソ移動していると不意に脳内に機械音声のようなものが響く。


(もしかしたらとは思っていたが…お前が俺のナビということか。)


ある程度のアニメやラノベ知識があった俺はとくに焦ることは無かった。


『重ねて肯定。当支援システムは対象【個体名:未設定】を支援するスキルです。』


(個体名未設定…そういえば今の俺には名前が無いんだったか。前世の名前使うのもな…)


『提案。当支援システムのオート機能により個体名の設定を行えます。』


(ふむ…なら頼む。)


『了承。【個体名:未設定】から【個体名:アルマ】への変更を提案。』


(アルマ、か…確かどこぞの国じゃ鎧という意味だったか。カブトムシの幼虫だからか?)


『肯定。当個体は【種族名:甲虫帝王インペリアル・ビートル】と呼称される甲虫系最上位モンスターの幼体に当たります。』


(マジか。)


支援システムの言葉を聞いて俺は高揚した。


(………俺は、強くなれるか?)


『肯定。甲虫帝王の成体はモンスター全種の中でも飛び抜けた攻撃力と防御力、加えて膨大な魔力を有します。』


(弱点が無いな…)


『否定。当種族は火属性及び雷属性魔法に対する抵抗力が著しく低いです。』


(…こればっかりは仕方ないと割り切るしかないか。)


『告。当個体は特異個体のため、雷属性に対する親和性が極めて高いです。』


(マジか。)


落ち着いてきていた気分がまたしても高揚する。

通常俺の種族は火と雷に弱い、だが俺は雷に強い。


(つまり、実質俺の弱点は火属性だけということか。)


『肯定。』


(…これから楽しくなりそうだ。)


『再度提案。【個体名:アルマ】に設定しますか?』


(頼む。)


『承認。当個体を【個体名:未設定】から【個体名:アルマ】へ変更します。当個体がユニークモンスターに定義されました。【スキル:|王の覇気】を獲得しましました。【スキル:雷撃ライトニング】を獲得しました。【スキル:鎧皮アーマースキン】を獲得しました。【スキル:鋼糸スリングワイヤー】を獲得しました。【スキルetc…』


名前を設定した瞬間に始まったスキル獲得祭りはしばらく続いた。

俺自身がスキルを覚えられないのもあり、スキル運用は全て支援システムに任せることにした。


しばらくしてスキルの獲得が終わる旨をシステムに告げられる。


『推奨。当支援システムのオート機能によるスキルの統合を提案します。』


(至れり尽くせりだな…頼む。)


『了承。スキルの統合を開始…完了。【固有ユニークスキル:甲帝こうてい】を獲得しました。【EXエクストラスキル:雷電サンダーボルト】を獲得しました。』


(聞くからに強そうなスキルだな…しかも2つとも普通のスキルとは違うのか。)


『肯定。ユニークスキルは唯一のスキルであり、例外なく強力です。EXスキルはUCアンコモンスキルの上位スキルになります。』


(なぁ支援システム…長いな、お前にも何か名前を付けるか。)


『疑問。当システムはスキルであり、既に【支援システム】という名称が存在します。』


(毎回支援システムって呼ぶのもな…支援スキルだからシエルなんてどうだ?)


『………了承。当システムの名称を【支援システム】から【シエル】へ変更します。…よろしくお願いします、マスターアルマ。』


(ああ、よろしくな。それで聞きたいんだが、ユニークスキルの上は存在するのか?)


『肯定。ユニークスキルの上に超越エクシードスキルが存在します。しかし、超越等級は神話に登場するような超常の存在が扱う人智を越えた能力のため、別名神格ゴッズスキルとも呼ばれています。』


(…まぁ、気長にやっていくか。)


『同意。それがよろしいかと存じます。』


名付けたから愛着が湧いたのか、シエルが名付け前より人間ぽく感じた。

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