第4話・もっとテッペンへ……メイズ・ダンジョンの惑星は未知の迷路や迷宮が星の奥底へ向って広がっている

 ダンジョンの長い山道を進むチーム闇姫は、峠にある茶屋で一休みしていた。

 スマホの地図を見ながら辰砂が呟く。

「次の配信目的迷路は、魔のメイズ【グルグル】渦巻き飴のような形態をしている二重迷路か」

 冷たいお茶をすすっる辰砂。

 峠道をヒーヒー言いながら登って来た、チーム毒ササコが茶屋の近くで湧き出ている岩清水で喉を潤す。

 それを見た、辰砂が手招きをして言った。


「良かったらこっちに来て、冷たいお茶飲まない? 冷えた麦茶もあるよ」

 間髪を入れずにササコが怒鳴る。

「金がないっチャ! あたしらが、所属している事務所はケチだから……ここまで、道端の草食べて生き延びてきたっチャ、肉が喰いたいっチャ」

「だったら、ウチらが次に配信目的にしている【メイズ・グルグル】で配信勝負しない? グルグルは別名肉の迷路」

 ササコの口から唾液が条件反射で垂れる。

「に、肉の迷路……肉が喰えるっチャ」


 眼鏡女子高校生の腐狂ワオンが遠慮しながら辰砂に言った。

「あのぅ、もし良かったら……あたしを、そちらのチームに入れてもらえませんか。チーム毒ササコは貧困で満足に食事もできないので」

 黒子の姿をしたクロハツの口から銀色の鍼が、ワオンの首筋に刺さり吸い込まれていく。

 ガクッとうなだれた、ワオンの口から狂戦士の狂った笑いが響き渡る。

「ケケケケケケッ」

 ワオンは笑いながら峠の下り道を、メイズ・グルグルに向って走り去って行った。


  ◇◇◇◇◇◇


 チーム闇姫がメイズ・グルグルの入り口に到着すると、先に到着していたチーム毒ササコがいた。

 ササコの足元には、鎖でグルグル巻きにされて転がされた、狂戦士ワオンの姿があった。

 狂笑するワオン。

「ウケケケケケケッ」


 立っているササコに、話しかける辰砂。

「どうして、迷路に入らないで待っていたの?」

 ササコが入り口のアーケード文字を指差す『ようこそ、喰うか喰われるか肉のメイズ・グルグルへ』そう書かれていた。

「喰うか喰われるかの迷路だなんて聞いてないチャ」

「だから、うちらが来るのを待っていたのか」


 入り組んだ迷路道を歩きながら、辰砂がササコに言った。

「ササコは知っている? この世界が五分前に爆誕したって言ったら信じる?」

「はぁ? なに言っているチャ……そんなコトあるワケないじゃないチャ」

「誰でもそう思うね……でも本当、前世界はウチとセシウムが愛し合って滅ぼした」

「愛し合って滅ぼした? どうやって?」


 立ち止まった辰砂は、セシウムに目で合図を送り、セシウムがうなづく。

 辰砂とセシウムは、いきなり迷路の通路で抱き合ってイチャラブをはじめた。

 唇を重ねたセシウムの口から、辰砂の口に可視化されたプラーナ生体エネルギーの透過光エネルギーが流れ込み、辰砂の唇の端から透過光が垂れる。


「んっ……セシウム、好きワクワク」

「辰砂……愛している……はぁ、きゅん」

 見られているのも関係なく抱擁して、互いの体を撫で合って濃厚なキスをする二人に、酸欠表情のニセ辰砂ササコが赤面して怒鳴る。


「な、なにやっているチャ? 堂々と迷路の通路で!」

「なにって、愛し合っているんだけれど……前前前前世から、ずっと」

「意味わかんないチャ、それが世界を滅ぼしたコトに、どう繋がりが?」


 抱き合ったまま、辰砂がテ・ルルに言った。

「もう、ウチらが愛し合っているところを見せたから、チーム毒ササコの記憶を消しちゃって」

 テ・ルルがササコたちに向けた手の平の、中央に横の亀裂が走り目が現れた。

 催眠眼を向けたテ・ルルが言った。

「忘れろ!」

 ササコたちは、辰砂から聞いた世界が五分前に爆誕した……と、いう話しを忘れた。

 記憶消去をされたササコが、目の前で抱き合っている辰砂とセシウムを見て驚き顔を赤らめる。

「な、なにやっているチャ? 迷路の通路で抱き合ってイチャイチャして」


  ◇◇◇◇◇◇


 メイズ・グルグルに、全長二十メートルくらいの、顔がブタの巨大オークが現れた。

 肉の門番だと名乗ったブタオークの体はタレでテカり、体からは焼き豚の美味しそうな匂いが漂っていた。

 焼き豚オークが言った。

「オレは毎日、体にタレを塗ってレア状態に体を焼いて維持してきた、オレを食べたかったら倒してオレを食べろ」

 焼き豚オークが香辛料の匂いがする、こん棒を構える。


 辰砂が配信くんを、地面に置いて変形モードスイッチを押して言った。

「天井が高いから、ここはウチが焼き豚の匂いがするオークを倒す」

 辰砂が前世から受け継いだ能力で、収納のポケット空間から漆黒の青龍刀を取り出す。

 青龍刀を構えて、辰砂が言った。

「闇をまといし、我が体……闇の力にて巨大化する」


 黒龍のような、黒い煙のようなモノが辰砂の体にまとわりつき。

 辰砂の体はそのまま巨大化していく。

 焼き豚オークが見上げるサイズにまで、着衣状態で巨大化した辰砂が呟くように言った。

「身長・四十メートル、体重・三万五千トン(推定)ビック辰砂登場! さあ、調理の開始です……オラオラオラ」


 一斉に、視聴者コメントが流れる。

《巨大辰砂きたぁぁぁ!》

《巨大化したのに、どうして服は破けないんだ?》

《それは、大人の事情……察してやれよ》

《スカート長いから、パンツ見えないなぁ》


  ◇◇◇◇◇◇


 数分後──巨大辰砂の青龍刀で調理された、焼き豚オークを食した辰砂がテーブルクロスのようなハンカチで拭きながら、両手を合わせる。

「ごちそうさまです、美味しゅうございました」


 配信を続けながら、メイズ・グルグルを奥へと進むチーム闇姫とチーム毒ササコ。

 

 次々と現れる、野菜や肉の食材もといモンスターたちを辰砂の青龍刀が調理していく。


 魚介類、肉類、野菜類、練り物類。

「もう、お腹いっぱいデス……焼き鳥食べられないデス」

 アンチモンは、バクバクと食べている、プロレスラーの胃袋は無限ブラックホールのようだ。

 ササコとクロハツは食べ過ぎでダウンしていて、すでに配信撮影できる状態ではないようだ。

 しかたがないので、鎖でグルグル巻きにされて、引っ張られてここまできた狂戦士ワオンの鎖をアンチモンが引き継いで引っ張っぱり先へと進む。

「ウケケケケケケッ」


  ◇◇◇◇◇◇


 メイズ・グルグル最終部屋──そこには、家族サイズの土鍋があった。

 煮え立つ鍋の中には、辰砂が迷路で倒してきた具材の怨念が闇鍋となって渦巻いていた。

 普通サイズに戻った辰砂が、アンチモンに言った。

「アンチモン、狂戦士を解き放って……闇鍋を食べてもらうから、彼女だけがメイズ・グルグルに入って何も食していない」

 アンチモンが、腐狂 ワオンの鎖を解くと。

 狂戦士は箸を手に闇鍋に襲いかかり、口の中を火傷しながら狂ったように食べはじめた。

「ウケケケケケケッ、うぐっ、アチッ……うががぁ」

 

 視聴者コメントが流れる。

《うわぁ、あの食べ方は熱い、口の中の皮がベロベロに剥ける》

《メイズ・グルグル攻略! すげぇ》

《メイズ&ダンジョンは、まだまだあるぞ! チーム闇姫、さらなるテッペンを取れ! これからも応援するぞ》


『メイズ・グルグル』……攻略配信完了。

 チーム闇姫のメイズ・ダンジョン配信チャレンジは続く。


 短編なのでとりあえず~おわり~

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ウチらが〝メイズダンジョン配信〟のテッペンを取る! 楠本恵士 @67853-_-

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