第12話

 「私……みんなが傷ついているのに何もできなかった……。お母さん……!」


私は手元にある万年筆を握りしめながら泣いてしまった。万年筆に涙に涙がかかった。




その途端——。




暖かいく白い、霧がかかる。




白昼夢の中にいる様な穏やかな気持ち……




「ひなた。こっちにおいで……」




「お母さん……!」




私はお母さんを抱いた。




「ずっと……会いたかったんだよ」


「……私もよ




「ひなた。もう私行かなくてはならないの」




「どうして?せっかく会えたのに」




母はシリルとガーネットが傷ついている幻影を見せた。




「この子たちはひなたが助けてくれるのを心から思ってる」




「でも……私、魔法使えない」




「大丈夫よ。私があなたを癒した様に、あなたが彼らを癒すのよ」




私は首を横に振った。




「ひなたならできるわ。だって私の娘だもの」




「そう。私はお母さんの娘」




お母さんは頷いた。




「——生きて。生きて、幸せにおなりなさい。ひなた」




霧と共に母は消えてしまった。


私は元の世界に帰ってきた。




「お前どこ行ってたんだよ!」




「今から、あなたたちを癒してみせます」


「はぁ!?」




私は万年筆に、みんなの傷が癒えるように、念じた。




白い、光が私を包み込む——。


背中から光の翼が生え、髪が玉虫色に光る——。




私は宙に浮き、傷ついたみんなを癒した。




「無詠唱……?!そんなバカな……!」


ジャスパーの傷が癒え、シリルとガーネットも起き上がった。




私が地面に着地すると、光の翼は消えて、髪も輝きを失った。




「今の……ビクトリアがやってくれたの?」


シリルが私に問う。


「そうよ」


「すっげぇ!今のが初めての魔法とか凄いな!」


「安心してる暇はないよ、ガーネット。今すぐに倒さないとさもなければ時間が」




「でもボクたちの攻撃が通用しない」


「ぼくが時間停止魔法を使うよ。そして、その間にモンスターツリーを袋叩きにするんだ!」




「多分、それでは倒せないわシリル」




「私に作戦があるの」

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