第11話

「よし!みんな、行くぞー!」

ガーネットは先陣を切って戦った。

「やれやれ」


「木に炎は、飛んで火に入る夏の虫!いくぞ!」


『Basic flame!!!《基礎 炎》』


ガーネットの魔法はモンスターツリーの全身を包んで、焼いた。しかし、効果がなく、モンスターツリーをさらに激昂させただけだった。


「いや、なんで効かないんだよ!」

「何歳まで基礎魔法を使ってるつもりだ?!そろそろ、自己(オリジナル)魔法を完成させる年頃だろう!

こんな魔物、ボクの魔法で一つで十分だ」


『Piece of Cake!!!《楽勝》』


激しい、プラズマの閃光が龍の様な線を描き、モンスターツリーに直撃した。だが、びくともしなかった。


「今度はぼくの番だ!」


『Basic Ice!!!《基礎 氷》』


シリルの魔法でモンスターツリーを凍らせたが、


『ぐぉぉぉ!!!!』


モンスターツリーは自ら、シリルの氷を砕いた。


「強すぎだよー!」


『ぬおぉぉー!!!!」

モンスターツリーは木の根を触手の様に操り、 3人を薙ぎ払った。しかし、3人は辛うじて魔法で食い止めていたが、本当にギリギリの所だった。


「おい!お前!お前も戦え!」

強い口調で、ジャスパーに戦う様に促された。

「ごめんなさい、私……」

「ビクトリアは魔法が使えないんだ!」

シリルが説明してくれた。

「えっ?」

「なんだよ!お前はただ、突っ立ってるのか?」

ジャスパーは私を怒鳴った。

情けなかった。仲間が傷ついていく様をただ1人傍観し、何も出来ない。実に哀れだった。


『ぐわぁぁぁ!!!!』

3人はついに、モンスターツリーに押し負けられ、倒れた。傷だらけだった。


「……!」

私は倒れた3人の許(もと)へ駆け寄った。

「ガーネット!シリル!ジャスパー!」

2人とも、呼吸をしていなかった。

ジャスパーだけが、辛うじて猛攻を耐えた。


「……君が一番まともだと思ってたんだけど。

まさか魔法が使えないなんて、失望したよ。ビクトリアさん」

ジャスパーが負傷した右腕を抑えながら立ち上がった。

「ごめんなさい…私……」

ジャスパーはため息をついた。


私は手元にある万年筆をただ眺めた。

何も起きなかった。

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