第8話
「シリルさん、私たちも行きましょう」
「……そ、そうだね……」
シリルと私は他の受験者よりだいぶ遅れてスタートした。
迷路には宝が埋まっている。だが、それを見つける術が分からない。魔法で探すのか、ヒントが隠されているのかも。
迷路は複雑な作りになっており、分かれ道がいくつものパターンを生み出し、一つ一つ通って行ったら時間切れになるだろう。私たちは宝の手がかりを探しながら、難解な迷宮を進んだ。
「………」
「………」
と、その時、私が角を曲がった瞬間……
「……!危ない!!」
シリルが叫んだ。目の前には、苔むした石の塊が動いていた。目が赤い。敵対心が剥き出しの様だ。
「……シリルさん!」
「ゴーレムだ!ビクトリアさんはさがってて!!」
殺伐とした雰囲気が周りを飽和する。
シリルは懐の懐中時計を取り出し、竜頭を押すと時計の文字盤を露出させ、それと共にあたり一体を鋭い冷気が満たす。
『Basic Ice!!!《基礎 氷》』
シリルが呪文を唱えると、時計の針がくるくると互い違いに廻転し、氷が空に舞う。それにより、ゴーレムは凍りつき、それはまるで氷の結晶のようだった。
あまりにも寒さに私は膝から崩れ落ちた。シリルが指を弾くと、ゴーレムの氷はたちまち、弾け、四方八方をつららの様に散った。
「大丈夫!?」
シリルが近寄って来た。不安そうな表情を掲げ、齧歯類げっしるいの瞳の様に、心配そうにこちらを見ている。
「怪我はない?」
「大丈夫です」
「よかった……!ぼく、人が傷ついているの見てられないんだ……」
ゴーレムの倒した跡から紙切れが落ちていた。
開くと、私たちのグループの宝の道が記されていた。
「……。時間がない……」シリルが懐中時計を見ながら言った。
「……急ぎましょう」
私たちは先を急いだ。
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