第6話
私は分厚い問題をめくり上げた。問題の内容は中学程度の国語と数学、難関だったのは魔法史だ。私はこの世界に来て間もなく、魔法のいろはも分からないのに、こんなの分かるはずなかった。私は直感に任せてペンを動かした。
鐘のチャイムが鳴った。
「そこまで!ペンを置いて下さい。」
先ほどの亜麻色髪の少年は頭を掻かきむしっている。どうやら問題に苦戦したようだった。
「今から私が問題を回収いたします。そのまま着席していて下さい。」
「以上で午前の筆記試験は終了です。お疲れ様でした。各自、昼食をとって午後に臨んで下さい」
私はまた誰かに話しかけられるのが嫌だったので、裏庭に移動した。途中、ペア表があったので確認してみた。“シリル”と言う名前の人、中性的な名前なので男性か女性か判別できなかった。
中庭に出ると大量のバラの花が咲き乱れており、香りが鼻を抜ける。丁度いいベンチがあったので腰をかけ、ジョウンから持たされた袋の中を開けると、チーズとレタスのサンドイッチが入っていた。簡素な作りだったが夢中で頬張った。初めて誰かが私のために弁当を作ってくれた事、新品の服をくれた事、だが、これから先の未来が見えず、不安な事、それにサンドイッチの素朴さ身に沁しみてが複雑に混じり合い、片涙かたなみだしてしまった。またその涙が頬を伝い、風に沁みて痛い。そして、それがレンガの道にに落ちて地面を濡らし、それがバラの栄養源になる。皮肉な話だ。
食べ終わり、私は万年筆の手入れをしていた。午後の試験に実技がある、しかし、これまで魔法を扱ったことが無いので特別不安だった。せめてもの抗いで万年筆をくるくる回し、心を鎮めさせ平静を装う。
「ほぅ、万年筆の魔力発生装置……珍しいな」
私の不安そうな表情を察しられたのか、はたまた魔力で勘づかれたのかは知らないが、突然、薄い水色髪の若い男性教師が話しかけた。
手をかしげて私の万年筆を観察している様であった。
「おや、これは失敬。私の名前は“フォンセ”この学校で教師をやってます。君は受験生だね?
「はい、ビクトリアです」
「君にはすごい魔力を感じる。一緒に授業出来ることを楽しみにしているよ」
私が「ありがとう」と言う前に彼は去ってしまった。
時計を見ると試験開始五分前の鐘が鳴った。私は試験会場へ急いだ。
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