【各エピソードの感想】戦士オリビアの憂鬱 ~最弱パーティーで何が悪い!ㅤ魔王を倒して世界を救う〈英雄〉になってみせます!~/作者:夜月 透さま《1》

>◇「参加作」を読もうと思った理由:あり


 近況ノートへのコメントにて、ご参加の表明をいただきました。強く惹かれましたのは、やはりコピーにある〝仲間との冒険譚〟という文言ですね。冒険小説は、いくつになってもワクワクするものです。それが異世界であれば尚更のことですね。


 また、あらすじにあった〝戦えるのは主人公だけ〟といった文言にも惹かれました。果たして他の仲間はどういった役割を果たすのか。少しコメディ要素も感じさせてくれますね。期待です。




>第0話ㅤ若き戦士の冒険譚


 プロローグといった感じのスタートですね。魔王とのいきなりの緊迫戦。どうやら主人公は〝双剣使い〟のスピードファイターのようです。


 ここでさりげなく主人公の名前と使用武器を表しているのは、非常に良い点であると感じます。彼女の気高い性格も動作や台詞から一発でわかりますし、主人公〝オリビア〟の造形が一気に浮かんでまいりました。


 〝魔空間〟内での戦闘。戦闘時に展開される、一時的な〝バトルフィールド〟のようなものか。それとも〝異空間〟のような、多層世界を有した世界観であるのか。個人的には、興味のある部分ですね。とはいえ、説明を求めているわけではありませんからね。世界観好きの私が食いついた部分ということで。



 また、この戦闘描写も非常に素晴らしいです。古典ファンタジーを感じさせる筆致とライトノベルの読みやすさを融合させた感じですね。とても読みやすいです。


 ここの〝まんしんそう〟と〝げっこう〟には「ふりがな」があると親切であるかもしれません。私はこれを、すでに辞書登録しておりましたので、あくまでも私の基準ですね。私ならば〝ほうこう〟にも付けるのですが、これは無くともよいかと思われます。


>ㅤ「くッ……!!」


※この部分にのみ、カッコの先頭に空白が入っておりました。故意であるなら大丈夫です。


 また、場面の区切りを示す〝▶▶▶〟なのですが、オリビアのスピード感が表れていて非常に良い選択であると感じました。細かく配慮されておりますね。



 魔空間内での魔王との対決。この出来事は、果たして過去か未来か。

 この〝第0話〟は、そういったお話でした。




>第01章 踏み出した戦士の一歩/第1話ㅤ心優しい戦士、オリビア


 舞台は飛んで、世界観の説明からの開始ですね。この始まり方は重厚なファンタジーを感じさせてくれますので、私は非常に好きですね。前述した「ライトノベル的な読みやすさ」との齟齬も感じませんでした。


 地の文の語り的に、吟遊詩人が英雄譚を語っているといった雰囲気を感じますね。これも好きです。また、〝冒険者〟の定義が説明されている点も、オリジナルの世界観を創ろうという気概を感じます。とても素晴らしいですね。


 オリビアの容姿と年齢が、さらに詳しく語られました。主人公であることが印象づけられますので良いタイミングですね。また、この世界では〝メートル法〟が使われている、もしくは語り手が〝メートル法を知っている〟ということもわかります。


 オプションにありました、師匠〝アテナ〟も登場いたしましたね。年配の女性ということは予想外でしたが、やはりこうした世界観での師匠は熟年者である方が説得力がありますね。年齢が出た時点で、経験を積んでいることは明白だとわかりますから。アテナの容姿や立ち居振る舞いから察するに、もしかすると〝踊り子〟のような職に就いていたのかもしれませんね。


 また、〝木の棒を剣のように使わせる〟という修行内容から、アテナとオリビアがただ者ではないことが窺えます。師匠の腕が良いのでしょう。



 今回は、そうですね。オリビアが森に入っていった後の部分に、もう一行「空行」があると、場面転換がわかりやすいかもしれません。また、この地の文の語り口調は非常に好みです。服装の説明を一気にせず、必要に応じて行なう点もお見事かと。


 ウサギ様を殴ってしまったことは――。しっかりと葛藤もあったようですので、今回は許しましょう。なにより、ウサギ様から仕掛けてまいられましたからね。もしかすると、こっそり逃がして差しあげたのかもしれませんし。



 主人公オリビアは師匠であるアテナからの指示により、森へ食材を探しに行く。そして家に戻ると、来客があり――。この〝第1話〟は、そういったお話でした。




>第2話ㅤ旅立ちの日は唐突に。


 前回から数日後。タイトルどおり、オリビアがアテナからの唐突な旅立ちを命じられる場面からの開始です。


 〝デリカリア〟という街の名前が登場しましたが、すぐに説明を入れてくれるために負担にはなりませんね。良いバランスであると思います。到着まで二日ということで、距離の予想はつきましたので、大体の方角も加えてみると、さらに作品世界のリアリティが増すかもしれません。



 このエピソードから「吟遊詩人(仮称)目線の語り」と「オリビアの一人称での語り」が混じっておりますが、私は特に違和感には思いませんでしたね。私自身があまり〝視点〟にこだわっていないせいもあるかとは思います。


 大切なことは「いまは誰々の視点」だと明らかにすることよりも、物語の内容を伝えることですので。その点において不自然さはありませんでした。これを貫き通すのも面白いのではないかなと。


 オリビアが旅立つ前の会話の中で〝(笑)〟が使われておりましたが、後の地の文にてオリビアが苦笑している様子はわかりますので、削っても良いかもしれません。文章力は充分だと感じますので。今後も使う予定であれば、このままでも大丈夫です。


 大きかった背中が小さく見える。成長を表す描写として王道ですね。オリビアのアテナに対する親愛が伝わってきて非常に良いと思います。


 また「うなずく」ではなく〝うなづく〟としているのも古典ファンタジーを感じさせて良いですね。普段は〝ず〟を使っておりますが、どちらかというと私は〝づ〟の方が好みです。



 いきなりの旅立ちを命じられたオリビア。アテナから手渡された、二本の剣が示す意味とは――。この〝第2話〟は、そういったお話でした。




>第3話ㅤ始まりの街、デリカリア


 まずは〝始まりの街〟へ。これまた王道展開ですね。もちろん〝良い意味〟ですよ。上手くテンプレ要素を取り入れていると感じます。


 出だしはアテナとのやりとりなのですが、この部分は削ってしまっても良いのかもしれません。新しいエピソードは「旅立ったあと」から始まった方が物語も引き締まりますし、テンポも確実に良くなるでしょう。とはいえ、あくまでも一例です。この〝口パク〟が何らかの伏線である場合などは、無理に触らない方が良いですね。


 羊の魔物が出てまいりましたね。手早く特徴を説明してくれる部分は本作における素晴らしい点であると感じます。欲をいえば、〝大きさは子供程度〟ではなく「大きさは人間の子供程度」あたりにするとリアリティが増すかもしれません。とはいえ、前後を見ればわかることですので、それほど気にする部分ではないですね。


 それほど重要でない戦闘は手早く終わらせるのも、テンポを重視する点においては効果的であると思います。ただ、ここで「二刀での戦い」を披露しておくと、〝第0話〟との対比ができてよかったのでは――と、いう思いはありますね。


 森から戻った場面ではなく、街に着いた段階で〝アダム〟の説明をするのも良い点ですね。この説明で「あの人か」とわかりますからね。かなり計算され尽くされた、素晴らしい進行であると思います。



 師匠アテナに半ば追い出される形で旅に出たアテナだったが、道中出会った人や師匠からの計らいによって、無事に冒険者ギルドに辿り着いた。


 この〝第3話〟は、そういったお話でした。




>第4話ㅤ冒険者の三原則


 これも王道展開、嫌な先輩冒険者との遭遇からの開始です。ここの最初の会話文にも、先頭に空白が入っておりますね。ここまでを読み進めた時点で、他に目立った誤字などは見受けられませんでした。非常に丁寧に執筆されておられると感じます。


 冒険者を撃退するなかで、師匠アテナの意外な素顔が明らかになりましたね。まさか〝剣聖〟だったとは。また、この男らが〝流派〟を訊いてきたあたりも世界感を構築するうえで、非常に良い点であると思います。


 そしてオプションにもある〝冒険者試験〟も始まりました。まず、試験内容が良いですね。〝一番恐れているものと戦う〟とは、誰しもが恐怖感を抱く試験内容ではないかなと。そして、自動で回転する砂時計。こういった小道具は大好きです。



 開始された冒険者試験。果たしてオリビアは〝冒険者の三原則〟を全うできるのか。そして彼女の前には何が現れる――?


 この〝第4話〟は、そういったお話でした。




>第5話ㅤ剣聖の弟子が恐れる者


 嫌味な先輩がたの敗北シーンからのスタートですね。ここで不合格になってしまっては、もはや先輩ではありませんね。


 とはいえ〝ライゼル〟は果敢に恐怖と向き合ったという点において、非常に評価できますね。どのような理由であれ、懸命に頑張る人物は大好きです。


 私は敵役を推す傾向にありますので、「いまのところの最推し」は〝彼〟かオリビアかといったところでしょうか。


 ここでオリビアの「戦況を見極める冷静さ」が窺える点も良いですね。そしていよいよ始まる彼女の試験。現れたのはもちろん――。この〝第5話〟のタイトルが〝恐れる者〟であることからも、彼女で間違いありませんでしたね。


 さて、〝第3話〟において「双剣での戦いを披露してもいいのでは」と申しましたが、これほどの戦闘が待っているのであれば、あそこは「あっさり」で正解であると感じましたね。構成は今のところ完璧であると思います。


 戦闘の場面ですが、非常に臨場感がありますね。テンポという面でも丁度良く、ここは絶対に弄るべきではないと存じます。合間に男らが感嘆する様子が入っているのも、オリビアとアテナの凄さを引き立てますね。とても好きな、良い闘いでした。



 冒険者試験を見事に突破したオリビア。果たして彼女は〝本物〟の背中を越えられるのか。この〝第5話〟は、そういったお話でした。



             *



 これで各エピソードの感想を終えさせていただきます。あとは次のページにて、各オプションに基づいた感想のまとめを述べたいと思います。

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