【各エピソードの感想】ミストリアンクエスト/作者:幸崎 亮さま《1》

>◇「参加作」を読もうと思った理由:あり


 まずは本作を読むことに決めた理由ですが、タイトルとタグですね。「古典風ラノベ」とありましたので、かつて私が慣れ親しんだ「古き良きラノベ」に近い作品ではないかなと。あとはコピーに「各章完結」とありましたので、とっつきやすくもあるかなと。あらすじも拝見しましたが、何度も改稿なさっているそうで。作品を愛しておられることが伝わってまいりました。



>第1話 冒険者の二人


 主人公〝エルス〟とヒロインの〝アリサ〟が、魔物と戦う場面からの開始ですね。バトルありの異世界ファンタジーであることが伝わってまいりますし、二人の口調などから、なんとなくキャラクタ性は掴めました。良い始まりであると思います。


 専門用語についてですが、魔法はオリジナルであるものの、〝コボルド〟などの魔物名には馴染みがありますので取っ付きやすいのではないでしょうか。私が異世界ファンタジーに慣れ親しんでいるという理由も、当然ながらございます。


 また、本作での太陽は〝太陽ソル〟と呼称するようですね。我々の世界の「太陽」と同一のものなのか、〝良い意味で〟気になりますね。魔物を除けば、登場人物も主人公とヒロインのみということで、専門用語の数は気にはなりませんでした。


 エルスとアリサが軽々と魔物を倒し、次の〝依頼〟へと向かう。

 この〝第1話〟は、そういったお話でした。



>第2話 魔王との因縁


 エルスが店番の依頼をこなしつつ、あらすじにあった〝魔王〟に関する回想シーンが出てくるといった内容ですね。


 〝第1章〟のタイトルにもある〝ファスティア〟という街の様子にも重点を置いて描かれており、世界観の良さが伝わってまいります。テンプレ作品に登場する〝冒険者〟の再定義がなされているのも良いですね。オリジナリティのある世界観を創りだそうという気概を感じます。


 依頼を開始したエルス。そんな彼は過去の苦い記憶を思い出し――。

 この〝第2話〟は、そういったお話でした。



>第3話 冒険者の街・ファスティア


 前エピソードでの「やらかし」を挽回すべく、エルスが店番を頑張るといった内容ですね。街や店の様子や、〝どう〟といった小道具などにも詳細な描写がある点など、私は非常に大好きですね。


 ただ、構成の改善案にあった〝冗長さの是正〟を優先するならば、もう少し簡略化しても良い部分ではあると思います。しかしながら「私は大好き」です。


 また、前回はエルスの容姿、今回はアリサの容姿の説明がさりげなく入っておりました。エルスはサラサラの銀髪。アリサは小柄で幼児体型、茶髪ポニーテールの軽戦士といった印象でしょうか。前回の過去回想から、おおよその年齢も察せました。


 オプションにあった〝執事〟も登場しましたね。確かに名前は出てきませんでしたが、只者ではない印象はあります。〝良い意味で〟変人サイコパスといった感じでしょうか。この場かぎりの脇役かとも思ったのですが、どういう役回りなのかが〝良い意味で〟気になりますね。


 あからさまに〝怪しい杖〟を販売したエルス。売り上げは上々ではあるが――?

 この〝第3話〟は、そういったお話でした。



>第4話 はじまりの時


 エルスが杖を販売し、アリサと別れた場面からの開始ですね。店のあるじも戻り、エルスは思わぬ高収入を手にすることに成功しました。正直なところ、私自身もエルスと同様に「あれを売っても良かったのかな」と〝良くない意味で気になりはした〟のですが、店主が『良い』と言っているのなら、良いということなのでしょう。――いや、絶対に一悶着ありそうですけどね。


 今回は「前回の後始末と説明の回」といったところでしょうか。私は好きですし、堅実に物語が進んでいる感はあるのですが、特に序盤ということもあり、もしかすると少し退屈だと感じてしまわれる方もおられるかもしれません。


 もしも構成を弄るならば、「前回のエピソードとくっ付ける」のも手ではないかと感じましたね。文字数はかさんでしまいますが、話数で判断した方が〝冗長さの是正〟には効果的ではないかと考えます。実際に拝読した感じ、そこまで「文字数が多い」とは感じませんでしたので。「削るとしたらエピソード数」でしょうか。



>第5話 出会いと再会の酒場


 別行動で依頼を請けたアリサと合流するため、エルスが酒場に向かう。――といった場面から開始です。エピソードごとに「場面が大きく飛ぶ」といった展開のない、堅実な進行ですね。やはり好みはあるでしょうが、「古典風ラノベ」好きの私としては、好きな進め方ではあります。


 この〝ファスティア〟という街が〝酒場〟を中心に誕生し、日々面積を増しているという設定は、非常に良いと感じました。まさに世界が生きているという感覚ですね。酒場内の喧騒や臭いなども良く伝わってまいりました。好きな場所ですね。


 ここでエルスの恩人である〝勇者ロイマン〟と再会するも、互いに意見がかみ合わず。さらに、そこへ謎の人物が――?


 この〝第5話〟は、そういったお話でした。



>第6話 ライバルとの対決


 酒場で勇者のパーティに加わる申し出をするものの、謎の乱入者によって妨害されるといった始まりですね。彼の登場より以前に、勇者には断られていましたが。


 勇者〝ロイマン〟に続いて新キャラの登場ですね。この〝ラァテル〟という人物は、クールなイケメンといった感じでしょうか。言動にはトゲがあるものの、礼儀は弁えているという、エルスと対になっているような印象を受けましたね。


 そして〝見所〟にも挙げていただきました〝第6話の決闘シーン〟なのですが、非常に臨場感があって素晴らしいと思いました。主役となるエルスとラァテル以外にも、観客の様子などが随時差し込まれている点なども好みです。まさに「主役を引き立てる脇役」といったところですね。


 エルスは〝勇者パーティ〟への仲間入りを願うものの、予期せぬ乱入者・ラァテルとの決闘をすることになってしまう。さて、勝敗は――。


 今回の〝第6話〟は、そういったお話でした。



>第7話 敗北を乗り越えて


 タイトルどおりに、ラァテルに敗れてしまったエルス。そんな彼のもとに、アリサが合流する――。という始まりですね。


 まず「主人公が敗北する」という展開は非常に珍しいのではないでしょうか。「酒場で勇者とモメ事になる場面」といえば、その勇者を返り討ちにして主人公の強さをアピールする展開が予想されましたからね。もちろん好みにもよるでしょうが、主人公の成長の余地を感じさせてくれる展開で私は良いと思います。好きですね。


 また、人間やエルフやドワーフといった〝種族〟の違いが少し垣間見える話でもありました。ラァテルは身体能力がぜいじゃくなエルフでありながら、格闘術に長けるという個性も良いのではないかなと。彼が〝悪役〟であるのか否かはわかりませんが、〝敵役〟としては、今のところ一番好きですね。


 第1話の〝エンギル〟に続き、新たな魔法も登場しました。回復魔法の〝セフィド〟ですね。これも個人的な好みですが、やはりオリジナルの魔法名は良いですね。今後の展開でどのような魔法が出るのかといった部分も楽しみです。


 ライバルとの対決に敗れ、悔しい思いをしたエルスだったが、アリサに迎えられて心身ともに癒される。


 この〝第7話〟は、そういったお話でした。



>第8話 霧に包まれた世界


 気持ちを切り替え、アリサと共に酒場から出たエルス。すると街の様子が――と、いった始まりですね。


 霧に包まれた街。ガラリと雰囲気が変わって非常に良いのではないでしょうか。たしかに〝物語の一区切り〟という感じはありますね。この霧が「特別なもの」であることや、それが「この世界の住人にとってはあたりまえ」であることが示されているのも良いですね。この世界への没入感が増しました。


 主人公の回想シーンに続き、今度はアリサ視点での回想ですね。13年前の誕生日に起きた惨劇というのが、今後の鍵となるのでしょうか。幼い時期ならではということもあるのでしょうが、このアリサは少々変わり者というか、ほんの少し、感覚が常人とズレているような印象も受けましたね。もちろん、「嫌い」というわけでは決してないです。どちらかというと〝良い意味〟での気になりですね。



 たしかに「次へ向かう展開」で終わっていることから、ここで読むのを区切ってしまう方が出るのも納得ではありますね。


 エピソードの最後は、一件落着で終わる〝締め〟と、なにかの事件などが起きて終わる〝引き〟の形があると思うのですが、今回の〝第8話〟は〝締め〟で終わっている印象を受けました。もしも構成を見直すのであれば、次の9話の冒頭部分を加えて〝引き〟を作ってみるのもアリではないかなと。よろしければご一考ください。



 酒場という密閉空間から外へ出ると、そこには真っ白な光景が広がっていた。謎の霧や、タイトルにもある〝ミストリア〟という神の名前も登場し――。


 この〝第8話〟は、そういったお話でした。



>第9話 冒険者の役割


 エルスとアリサは〝冒険者の役割〟の一つである〝魔物狩り〟へ向かおうとするものの――。ここから新たな場面へ突入といった始まりですね。


 まさに「事件発生」といった慌しい緊迫感と、エルスの心情の空虚にも似た静けさの対比が良いですね。どちらかというと「繋ぎの回」といったところでしょうか。もしかすると、このエピソードは分割し、前後の話とくっ付けた方が得策であるのかもしれません。あくまでも私の感覚ですが、文字数にも余裕がありますし、エピソード数を圧縮するという意味でも得策ではないかなと。そう思った次第ですね。



 魔物を狩りに街の外へ向かおうとしたエルスとアリサだったが、街には〝緊急事態〟が発生しており――。この〝第9話〟は、そういったお話でした。



>第10話 勇者の矜持


 街の自警団に続いて酒場に戻ったエルスとアリサ、そこでロイマンと再び対面するも――。と、いった始まりですね。


 相変わらず、酒場の内部の描写などは力が入っていて素晴らしいのではないかと思います。特に緊迫感のある中、居眠りをしていたり薄ら笑いを浮かべている客の様子などが、私は特に好きですね。まさしくファンタジー世界の酒場といった感じで。


 そして〝見所〟の第10話なのですが。なるほど、主人公エルスの印象がかなり変わりました。これまでは「年齢のわりにはちょっと子供――というかガキっぽいかな」と感じていたのですが、アリサやロイマンに対する態度によって、それらがかなり緩和されましたね。このエピソードのコメント欄にも「真っ直ぐな主人公」とあったのですが、私も同じ感想です。私は好きですね、こういった主人公。


 また、ここで勇者ロイマンとラァテルが再登場するのですが、彼らへの印象も変わりましたね。ロイマンは彼なりに信念に基づいて行動している。そしてラァテルは口数は少ないながらも、ちょっとお茶目というか、愛らしさを感じました。


 たしかに、幸崎さまの仰られるとおり、この〝第10話〟までは是非とも読んでいただきたいなと。そう感じさせてくれるエピソードでございました。



 ファスティアに迫る危機。〝はじまりの遺跡〟なる場所から大量の魔物が?

 この〝第10話〟は、そういったお話でした。



             *



 さて、これで各エピソードの感想を終えさせていただきます。あとは次のページにて、各オプションに基づいた感想のまとめを述べさせていただきたいと思います。

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