異世界ファンタジーを読むのが苦手

 はい。非常に唐突なのですが、私は異世界ファンタジーを読むのが苦手です。

 何を言ってるんだ?――という感じですよね。


 順を追って説明いたします。


 まず、この〝苦手〟とは〝読みたくない〟という意味での苦手ですね。ですので読むのは好きです。決して〝嫌い〟ではございません。


 私自身も異世界ファンタジーを書いておりますし、異世界ファンタジーは大好きです。なのですが、異世界ファンタジーを読むのが苦手なのです。


 それはなぜか?

 まさに〝私自身も異世界ファンタジーを書いているから〟です。



 じつは私は、登場人物などの名前を考えるのが苦手でして。

 それが大きく絡んでまいります。


 そうなんです。異世界ファンタジーを読むと、時おり登場人物などの名前が「自作と被る」ことがあるんですよね。


 世界観や設定などが丸被りするなんてことはあり得ないんですが、名前だけは割と被ってしまいます。「エクスカリバー」などの有名なものならば、被ったうちにも入りませんが、ちょっとオリジナル感を出して名づけたものや、頭を捻ってようやく絞り出したものなどが、もろに被ってしまうと悲惨です。


 別にどっちが先だの、パクっただのパクられただのと、そういう話を完全に抜きにしても、被ってしまうとなんだか気まずくなるんですよね。特に大好きな作品と名前が被ってしまうと、自作に劣等感すら覚えてしまいます。


 たとえば「ヒイロ」という名前のキャラが登場したとします。すると「こいつ、いつか自爆するだろ」と常々考えてしまったり、「おまえを殺す」という台詞が脳内を占拠しつづけてしまったりで、読むのに集中できない方もおられるでしょう。



 さらにツライのが、「まだ登場させていないプロット段階の名前が被ってしまった」場合なんですよね。プロット段階とはいえ、作者である私自身の頭の中では、すでに「その名前」で物語が、ずっと先の先まで進行しています。


 ですが、うっかり同名の人物が登場する作品を読んでしまった場合「あ、被ってしまった。出す前に変えた方がいいのかな」と感じてしまうわけなのです。


 しかし、そうすると問題がありまして。


 すでに「被った名前」が付いているキャラは、私の中では「その名前」でなくてはアイデンティティが揺らいでしまうんですよね。急に変更してしまうと「こいつ誰だ?」といった状態になってしまうのです。


 その結果、自作の登場人物の名前を忘れてしまったり、間違えたり、昔の名前に誤字ってしまったり。最終的には愛着がなくなってしまったりと、それはもう散々です。キャラクタにも申し訳ないですね。


             *


 余談ですが――。私の遺作であり代表作である「ミストリアンクエスト」も、最初は「ミスティリアクエスト」という名前だったんですよね。神の名前もミストリアではなく、ミスティリアという名の女神でした。


 なのですが。この作品を投稿する前に「ミスティリア」と名の付くゲームが配信されてしまったので、やむなく変更してしまったのです。このせいもあり、「ミストリアンクエスト」を最初に投稿した際には、なんとなく収まりが悪いというか、「しっくりこない」タイトルだったんですよね。


 今では馴染んでおりますが、これは読者さまが「ミストリアンクエスト」というタイトルを、声に(文字に)出して呼んでくださったおかげなんですよね。名前というものは自分以外の他人から、「それ」を呼ばれた時点で命を得ます。


 コメントでタイトルを呼んでくださり、さらに主人公や、作中人物の名前を呼んでくださったからこそ、私のキャラは命を得たのです。


 いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。


             *


 さて、ここからは更なる余談です。さきほどの話の続きですね。


 私が名前を決める際には二通りのパターンがありまして、一つは作者である「私が名づける」パターンと、もう一つは「登場人物自身が名乗る」パターンですね。


 このうち後者の場合は、他の作品と被ろうがどうしようが変更しません。すでに自我を獲得している以上、その名前でなければ存在が歪んでしまうからです。


 基本的に登場人物自身が名乗るパターンが多いのは、キャラクタの命名法則が定まっている人たちですね。具体的には主人公やヒロイン、私の別作品からの引用勢、エルフ勢、ドワーフ勢、古代人勢などです。彼らは法則に従って名乗っているので、絶対にその名前でなくてはならないという信念があるのです。


 また、ミストリアンクエスト自体が「名前」というものを重要な要素として描いておりますからね。性質上、簡単に変えることができない傾向にあります。



 逆に私が苦労して名付けた場合は、被ってしまうと迷いが生じてしまうんですよね。もしも私が足跡をつけて、その作者さまが読み返しに来られた場合などは、かなりヒヤリとします。別にパクったわけではないのですが、なんか気まずくなるんですよ。――どう思われてるのかなって。


 あと、まだ読んではないのですが、とても気になっている作品がありまして。今のカクヨムはプレビューが表示されると思うのですが、あそこにチラリと、今後の物語で私が登場させる予定の名前が見えてしまったんですよね。


 はい――。残念ながら読むことができませんでした。


 その名前を私も登場させたあとならば、もしかすると読むかもしれませんが。今読んでしまうとどうしてもね。パクッたと思われるのも嫌ですし。


 見ただけであって、まだ読んでおりませんのでセーフということで。これ以上、私の少ないレパートリを減らされるのはキツイです。


 一見すると名前が長く、覚えづらいキャラの方が、こうしたリスクを回避するには最適なのかもしれませんね。リズムが良くて長い名前の方が記憶に残ったり、逆に覚えやすかったりします。こうした命名のセンスが欲しいですね。とても。



 今回は、このようなお話でした。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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