「伏線のある作品」は人気がない?

 以前、『伏線回収が気持ちいい小説』という自主企画に参加させていただきまして。私自身もそうした作品が好きなので、参加一覧から作品を拝読したり、コメント等を拝見したりしていたのですが。――まあ、なんと申しますか。


 やはりWEB小説においては「伏線のある物語は好まれないのかな?」と。

 そう感じてしまった次第ですね。


             *


 これは「決してコメント批判ではない」のですが、私の作品をお読みくださる方にも、序盤で色々と推察や指摘のコメントをくださるものの、いざ「それが回収される部分」までは、お読みくださらないという方が時々来られまして。


 共通点として、序盤の部分で「これが気になります!」と、あれこれコメントをくださるんです。それ自体はとてもありがたいんです。断言します。「嬉しいです」


 なのですが。大体は〝そこ〟でリタイアされてしまわれるんですよね。


 これが正直ツライ。――ですので、なんとか改善できないかなと。

 日頃からいろいろと、情報を集めていたというわけですね。



 さて、突然ですが。

 私の中では、「読者さまには、主に二通りの好み」があると思っておりまして。


 一つは物語から得た情報を、自身の記憶に蓄積されてゆかれる「ブック型」。

 もう一つは物語から得た情報を、その場で消化される「ペーパー型」ですね。


 名称は、私が勝手に名づけました。なんとなくです。また、どちらが「良い」とか「悪い」といった話ではございません。わかりやすさ重視です。



 基本的にブック型の読者さまは「黙々と、淡々と読み進めてくださる」感じで。そして物語に区切りがついたタイミングで、まとめてご感想やレビュー等をくださる方ですね。ちなみに、私もこちらのタイプです。


 対し、ペーパー型の読者さまは「その場その場で気づいた点や疑問点などを都度コメントなさる」タイプですね。どちらかというと、「物語そのもの」を楽しむというより、「コメントを通したコミュニケーション」を重視されておられる方にも多いタイプではないかと感じます。



 そしてくだんの「伏線」の話なのですが。

 割と「ペーパー型」の読者さまには不評のようで。


 一見すると、「コメントをくれるのなら相性は良さそう」とも思えるのですが、残念ながらそうしたコメントは「どの作品を見ても、序盤にしか無い」のですよ。


 もちろん、「カクヨムの悪習にして本質」である「営業コメント」の可能性もあります。あの「続きが気になります!」というやつですね。「もう続きはあるんだから読んでくれよ」と、書き手ならば誰もが感じる〝あれ〟です。


 とはいえ今回は関係がないので、営業のことは一旦忘れることにします。

 そもそも読み専さまの場合は、営業の線はゼロですからね。



 おそらくペーパー型の読者さまにとっては「疑問に感じた時点で解説が入る」というのが、最も望ましい展開だったのではないかと。私の作品のように、序盤の伏線が章の後半や、数章後に回収されるなんてものは「そこまで覚えてないし、読んでられない」と感じてしまわれるのでしょう。


 以前、どなたかの近況ノートにて、「伏線」について悩まれておられる記述を目にしたこともありました。その方は〝読み手側〟の意見として、「なんでもかんでも疑問に思った瞬間に説明されてしまって味気ない」と嘆かれておられました。おそらく、この方は「ブック型」だったのでしょう。


 やはり私自身も「ブック型」ですので、すぐに説明が入ると読むのは楽に感じる分、奥深さというかいんというか、なにか心に残るべきものが奪われてしまったような。そんな物悲しさを感じるのです。


 個人的には、気になったらその部分を読み直し、「前回とは違う感動」を味わいたいんですよね。「あー! これはそういうことか!」と。この「脳が喜ぶような感覚」は、なんともいえず心地よいものなのです。



 しかし現実問題として、誰もが毎度毎度、そうすることができないのは承知しております。私も常々、時間に追われておりますからね。本当に時間が足りません。


 特にカク・ヨム両方を行なっておられるユーザーは、時間配分がシビアです。限られた時間の中、自らの作品を執筆し、さらに「読み」にも回らなければならない。


 私は「読まなければならない」と感じてしまうのを絶対に避けるため、書く日と読む日を分けておりますが、書き手さまの投稿頻度などによっては「そうもいかない」と仰られる方もおられるでしょう。そうしたユーザーにとっては、「一度読んだ部分を読み直す」時間など〝無い〟というのが現状です。


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 さらにカクヨム全体の空気として、基本的に読み専の方は「読むだけ」です。レビューやコメントはもとより、★評価や応援♡を押してくださる方も稀ですし、そもそもユーザー登録をされていない方もおられるでしょう。


 これは個人の自由ですので、まったく問題ございません。

 お読みいただけるだけでありがたいです。――本心は「★をくれ」ですが。


 ですので必然的に、積極的にコメントをくださるのは主に「書き手」の方ということになります。そして前述したとおり、基本的に書き手は時間が無い。よって「伏線がなかなか回収されない物語は、途中で投げ出されてしまう」といった流れですね。



 ただ、聞くところによると、「カクヨムのユーザー比率は圧倒的に『読み専』の方が多い」とのことでした。――ということは、実際に書かれているコメントとは裏腹に、「伏線のある物語は求められている」とも考えられます。


 とても言い方は悪いのですが、「一部の少数派の、大きい声だけが目立ってしまっている」という可能性も、捨てきれないというわけですね。


 たとえば批評を行なう方も、基本的には作家と兼任です。少なくとも私は今のところ、読み専門の批評アカウントには出会ったことがありません。――もしかすると、おられるのでしょうかね? 今は「いない」ものとさせていただきます。


 それで「そうした一部の方々」が、とにかく目についたものに片っ端からツッコミを入れてきたり、「伏線がなかなか回収されない」といった意見を書かれていたとしても。それを上回る数の、「『伏線のある物語』を楽しみにされている方」がおられるかもしれない、ということですね。



 私も「伏線のある作品」を書く身として、「絶対にそうに違いない」と断言してしまいたいのですが、まだ確証はありません。「自作を読んでくださる方が、楽しんで読んでくれていたら嬉しいなぁ」といった〝願望〟ですね。


 特に「テンポの良さ」と「スピード感」と「わかりやすさ」が求められるWEB小説において、どうしても「しっかりと伏線を張った作品」は苦戦を強いられてしまいますが――。これからも書き手として頑張りたいなと。そう感じている所存です。


 こうして様々な意見やコメントを目にすることで、いくつかの利用できそうなアイデアや、改善点が発見できましたしね。すべての意見に流されることなく、取り入れられる部分は使い、譲れない部分は押し通します。



 いずれにせよ、面白い作品は読まれますからね。

 面白ければ読む。個人の好みや感想に〝絶対〟は無い。

 結局は〝そこ〟に行き着くのです。


 私も今後とも、精進を重ねてまいります。

 お読みいただき、ありがとうございました。

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