第2話 最悪の約束と、厄災の収束
「当、国際科学センターは、国の最高峰の技術の粋を集め、周囲に関連施設を含めると20を超す建物があり、勤務している科学者の数は2千人を超えており、化学博物館等関連従業員を含めると、1万人を超える巨大研究施設となっております。お客様方および従業員の安全確保のため、全施設の地下に非常用通路を備え、外部へと繋がっております。緊急時にはお近くの
注意事項を説明するGロイドが僕らの先頭に立って旗を振り引率していく。注意を引くように設定された高らかな音声と、そのぎこちない感じの仕草がコミカルで、最先端アンドロイドなのに古い人形のようだ。Gロイドなどのアンドロイドは、形こそ2足歩行で人間に似せて作られているが、見ればアンドロイドだとわかるように作ってある。これは人と間違わないための『仕様』らしい。精巧に人に似せて作ったものもあるが、基本的に危険な現場用のアナウンサーアンドロイドとして国営放送でしか滅多にお目にかかれない。そういう
「「まあ、規制の原因はアレなんだろうけどさ…」」
インターネットの
移動しながら解説するGロイドの長い話にそんな事を考えていると、バスを降りてからも団体行動ヨシとして、多少ズレはあるものの同じ配置で整列して歩いていく。これはこれで学生の修学旅行の見学態度としては正しいと思う。僅かに前を歩く見慣れない少しピンク色の艶やかな
ふと、考えていた事が恥ずかしくなって顔が熱くなってきた。
「雨宮君、顔赤いよ!大丈夫?なの?なの?」
やばい、見られた。
「遠藤さんこそ、今日なんかいつもより話しかけてくるし、話し方が違うよ?どうしたの?」
恥ずかしさのあまり、慌てて質問を質問で返す的になってしまった。教室でコソコソとまではないものの小さな声で話す遠藤キラリとは違う。会話の語尾も繰り返すのは一体何なのだろう。自分の
「ちょ、ちょっと興奮してるだけ!す、すごいよ、ここのGロイド!こんな動きするなんて、もう人間だよ!だよ!」
ディープサイトでSロイドの艶めかしい動きを見ている身としては、Gロイドなんておもちゃのシンバルを叩くチンパンジーか、飲食店で給仕をするルート配送ロボットと変わらなく見える。
「そ、そうなんだ。よかったね…」
食い気味に迫ってくるキラリにちょっと引きつつ、どんなにS系サイトを見まくっていても実経験は一切ないので、桃色の唇ともう少しで触れそうな胸にドキドキしてしまう。
「こんなに精巧に動くしAIも発達して行動や発言も人間と変わらないくらいだし、人肌そっくりな人工スキンもあるのに、人間そっくりなアンドロイドってなんで一般に許可されてないだろうね」
まさに、僕がさっき考えていた事であった。
「そりゃー、AIが発達してもう人間みたいな受け答えもできるのに、人間に似せたらアンドロイドも自分を人間だと思い込んじゃって、人と変わらない感情を持っちゃったら大変だからじゃないかなぁ」
両親が古い映画が好きで、日曜日になると家の一番大きいモニターはそれで占領されてしまう。そんな中に、自分を人間と思い込んだシッターアンドロイドがその子を思うがあまり、その子にちょっとでも悪意を持って接してくる人間を殺してしまう『ミリンダ』という、ホラー映画のストーリーを思い出した。
「YOUTUNEの動画でさ、オールドシネマのミリンダって、子守アンドロイドが女の子の親だと本気で思い込んで、大きくなった女の子の恋人とか殺しちゃうって映画あったんだけどそういう風にさ?」
まさかSロイドや暗殺として使うかもだなんてどう説明すればいいのか、彼女の唇と制服に押し込められた胸から心をそらすために、思ってたんと違う意見を述べた。
「うん、それ知ってるよ!でもアンドロイドとかロボットってロボット三原則ってリミッターが掛けられてるから、そうはならないはずだよー、だよ!」
第一原則「ロボットは人間に危害を加えてはならない」
第二原則「第一原則に反しない限り、人間の命令に従わなくてはならない」
第三原則「第一、第二原則に反しない限り、自身を守らなければならない」
そのロボット工学三原則リミッターを掛けられているはずのアンドロイドが、女の子を襲おうとした暴漢の手首を握りつぶし、頭を持ち上げるときに髪の毛を頭の皮ごと引き千切るアンドロイドホラーだったのだけど…
「もし、今何かの手違いで、リミッターとやらが外れて襲われたらどうするの?」
IFの話をするのは夢や幻、夢想の領域だけど僕は夢の中に生きる人間なのでいろんなパターンを思い描いて、頭の中ではスーパーパワーの勇者でそんな強力ロボット軍団も一ひねりさ!と思いを馳せるのである。そう、僕はクラスでは顔に微塵も出さないが、隠れ中二病なのだ!
「その時は雨宮君のスーパーパワーで助けてよ!」
ゲフ!この娘、心を読んだのか!
「なぜ!それを!」
「よく図書館で小説流し読みしながらよくコソっと言ってるよね[モア、スーパーパワー!]って、助けてくれるよね、約束だよ!」
普段は髪に隠れて地味な雰囲気の瞳が髪をかき上げることで、顕わになってきらきらと潤んでいる。ほんのり赤い頬と桃色の唇の巨乳ロリっ子がはにかんだ顔で見つめてくる。
げぼぁ!僕は1万のダメージを受けた!
それでもぼくらは異世界に憧れる 夜闇咲華 @yoiyaminisakuhana
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