第30話 エルフ族と闇の協定

 思考を放棄したオレは気を失ってしまって、エルフの森に二泊してしまったようだ。


 しかも、ブブルブの寝室に来てしまったときの、あのベッドで、また寝てしまっていた。


 子どもたちも上に乗って起きるのを待っていたみたいだな。


 そして、起きたばかりのオレに楽しそうに【あれから後】の話しをしてくれている――現在いま

 

 湖畔の民たちの壊された村を修繕を行った話しに、王族直属の鍵師がいなかったという記憶操作をした話しと、かなり、ぶっ飛んでいた。

 


「ブブルブ王が、何もなかったことにしたのか」

 


 知らされる話しに驚愕と、マジかとなっているんだよ。人智を越えた所業というものじゃないのか。


 言葉を失ってしまったオレにタイラーが手を左右に振って「父。ブブルブ王じゃなくて」と口にした。


 じゃあ、一体全体と誰なんだと聞こうとする前に、タイラーが答えを出してくれたんだ。


 想像を超えた答えはヒント自体、もともと出ている以上、あり得ない話しではないと納得もしてしまった。


 

「巷でも噂のダ・カポネ兄弟の二男が来たんだ」

「ふふふ。似ても似つかない兄弟って、いるのですね」

「噂だから、本当の兄弟なのかは分からないぞ」



 幻の次男を見ると――死ぬだとか、巷では、決していい話題ものじゃない。

 


「ダ・カポネ三兄弟の、次男か」


 

 酒の肴にされるほどだ。



「その次男が。どうして来たんだ?」



 流石に寝起きの頭も、興味心で冴えてしまった。


 知らなくてもいいんだが、聞いてしまったんだ。



「ジョイの野郎たちが影を使って逃げたんだ」

「あれにびっくりしましたわね」

「逃亡した? はァ?」



 縄をすり抜けた奴だぞ。もっと手際よく出来たはずだ。


 初めからそうしたらよかったじゃないか。



「エルフの王も激昂していたが。すぐに、噂の次男が連れ戻してくれたんだ」

「物腰も低くて、ごめんなさいねぇ~って女性みたいな口調でしたわ」

「次男、すごいじゃないか」



 ジョイと妖精王を連れ戻してくれたのか。


 一体、何が目的だったんだ? 気になるのはそこだよ。



「悪いことをしたのだからきちんと直さないと、ただじゃおかないわよ! って怒られていたな」


「わぁ! ぶぶ、ブブルブ王っ」



 ブブルブが部屋に笑顔で入って来た。

 

 思いっきりびっくりしたオレの上半身も起き上がってしまう。申し訳ない気持ちがあるからだ。


 

「あ。すいません、……また、横のベッドをお借りしてます」

「よい。儂が許可したのだからな」

「お恥ずかしいところを、その、あの……」



 しどろもどろなオレの言葉を他所に「残りの依頼を受けた金庫は、主の子どもたちに開けて貰った」と話しを続けた。



「主たちに王族直属の鍵師資格を与える」



「はぃ?」


 

 寝耳に水な言葉だった。


 唖然とするオレを囲って子どもたちが大喜びをする。

 


「エルフの森で働くことを許可しよう」



「でも、オレたちは」



 外国人である子どもたちに、いいんだろうか。


 エルフたちは納得するのか気になるが、参ったな。


 

「ダ・カポネ兄弟たちの一件は次男の計らいもあり、穏便に済ませたから心配は無用だ」



 計らいとは一体、どんなことだったのか。


 唸るオレに「破壊された最果ての湖畔を直してくれたのですわ」とメアリー・アンが教えてくれた。タイラーもだ。



「なんでもさーエルフの森を守る結界も厳重に組み替えてくれたみたいだぜ」

「次男はもう帰ったのか?」

「全部終わらせて、すぐに帰っちまったね」

 


 巷で噂のダ・カポネ兄弟が集結したところを見逃してしまったのか。


 なんてことだ。もう会うこともないだろうな。がっかりですよ。

 


「次男さー父のように神たちを自然に使っていたが、次男も神に愛された男なんじゃないのかな」

「え? 神たちを使って、たのか? 次男は」

「ええ。すごく普通にですね」


 

 オレ以外の奴を女神が愛している、だって? どういうことだ。いや、あの女神以外、他の神からの寵愛かもしれないな。


 いや、いいんですけどね。でも、モヤっとしたな。



「そうなんですかぁ」



「拗ねるな。可愛くもない顔なぞ見たくはない」



 何を口走っているんだ。


 感謝はしているが、嫌な予感がする。



「ショータ鍵師。主も王族直属の鍵師とする」



 言われた言葉に頷くオレに「あと、エルフを妻にし、子を成すのだ」と言葉が紡がれた。



「無理ですから!」

「主の血筋が儂は欲しいのだ」

「無理だって!」



 声を荒げて言い返したオレに、子どもたちも失笑を浮かべる。



「父、恩人の頼みだぞ」

「そうよ、とおさん。妹弟が欲しいわ」

「お前たちぃい~~」



 このらちの明かない話しは尾を引き、一週間。エルフの森に缶詰させられることとなった。


 結果として、オレが負けるとは思いもしなかったな。

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