第1話 学校の噂
太陽がよく見える、白一つない青が広がる晴れ晴れとした空。
とある高校の2-Bと書かれたプレートが目印の教室では、一番窓際の8席で構成されている列の前から2番目の机を挟んで、二人の少女が向き合いながら座り、話を始めようしていた。
「なぁ聞いたか?A組の佐藤さん、3日前から行方不明らしいぞ?」
そう、目の前の人物に話題を振ったのは、挟んでいる机と対になる椅子に座っている少女だ。
少女は、ボブカットの髪型に暑いのか制服のブレザーは羽織らずに椅子に掛け、第二ボタンまで開けたブラウスと太ももが良く見えるぐらい短い丈のスカート、そして首周りにはゆるく指定のリボンを付けた、いわゆる、ギャルと呼ばれそうな格好をしている。
不良という訳ではないが、生活指導担当教員が目撃でもしたら、木刀を持って追いかけて怒鳴ってきそうな感じがするほどの着崩し方だ。
彼女の名前は、
さっぱりした気のいい姉御のような性格で、やんちゃな男性みたいな口調が特徴の可愛いもの集めが趣味という普通の女の子である。ちなみに、今は、とろけた表情で寛ぐ猫を題材としたシリーズの【ふにゃねこ】なるものを集めるのが楽しいらしい。
「それって、うちの学校で一番て、評判の性格が悪い美人さんの事ですか?」
話題を振られた少女は、友華の前の席に座る少女で、友華とは親同士が親友で生まれた頃からの仲である。簡単に言えば、幼馴染みである。今は、友華とお喋りをする為に椅子を180度回転させて、机を挟んで向き合って座っている。
そんな少女は、背中の真ん中くらいまでの長さがあろう、真っ直ぐのロングヘアーを右耳の下辺りに集めて、一つの三つ編みを編むと、それを前に流し、胸に垂らしているような髪型に、制服は規定道理に、ブラウスは第一ボタンまできっちりと留め、ブレザーを羽織り前きちんと閉めている。指定のリボンもきれいに付け、スカート丈なんかは太ももが見えず、膝が少し、隠れる程度の長さで、いわゆる、優等生のクラス委員長と間違うような恰好をしている。
がり勉という訳ではないが、生活指導担当教員が目撃でもしたら、服装違反者の前に、見よこれが花丸で100点で満点な制服の着用見本だと、出されそうな感じがするほどの着こなし方だ。友華とは真逆である。
彼女の名前は
優しそうな見た目とは裏腹に、毒舌で、冷徹、腹黒な容赦のない性格をしているが、懐に入れたものには、甘い、敬語で少しおっとりな口調が特徴の大人の女性のような考え方をする普通の女の子である。そして、可愛い子を愛でるのが趣味らしいので、いつも、自分が可愛いと思っている大好きな友華を愛でているのだ。
「そうそう、その性格の悪い美人さんって…、性格悪いはよけいだろ;」
「すみません。私、正直者なのでついお口が」
「さいですか;相変わらずだな…お前も」
「褒めていただき、ありがとうございます♡…それにしも、物騒な世の中になりましたねぇ」
「そうだなぁ~、あっ…、そういやぁ、隣町にある
「あら…皆様、学校で一番の美人で、性格がお悪いのでしょうか?だとすると、同一犯の犯行かもしれませんね?…それにしても、そんなことまで知っているだなんて、情報通ですね友華ちゃん♡可愛い♡」
「だから、性格悪いは余計だろ;;いや、これは情報通、つうよりも、
「さぁ、知りませんねぇ。私、あまり他人に興味ないもので。…あ、でも、友華ちゃんに関する事なら興味ありますよ♡安心して下さい♡」
「ホントお前、あたしの事、好きだな;;」
「ええ♡」
「話し戻すけど、同一犯として犯人は一体何を考えてんだか、訳わかんねぇな」
「そうですね…。犯人さん、美人の方ばかり誘拐して、一体、何が目的なんでしょうか?」
「そりゃ、おめぇ…美人ハーレムでも、作るんじゃねぇか?…多分犯人男だろ?」
「まぁ…、厭らしい。」
二人は、頷く、指折る、首を傾げる等の身振り手振りも付け足して、心地の良いテンポで、会話を進めている。
「まぁ、あたしらには、関係ねぇな。だって、あたしら、まぁ顔は悪いってわけじゃねぇけど、特別美人てわけでも、性格が悪いわけでもねぇし」
そう言いながら、首をふる、友華。そして、
「もし、犯人があたしらのクラスで獲物を、見つけるなら…、」
後ろを振り返り、
「うちのクラス、一番のかわいこちゃんの梓じゃねぇか?」
と、後ろで静かに読書をしていた少女。名前を
梓を見てから、梓の注意を本から自分たちに向けさせる為だろうか、少し張った大きな、梓がこちらに気付きそうなくらいの、そんな声でそう言った。
「………、えっ、何?何か用?友華???」
友華の作戦は効いたのだろう、本に集中していた梓は、最初は自分が友人声を掛けられている事に気付きはしなかった梓だが、少し間を置いた後に、聞こえてきた内容の意味を考えたのだろう。顔を上げ前にいる友人たちへと意識を向け、
「おぉ、本読んでる途中でわりぃな、梓。いや、なに、今、櫻子と学校の噂話しててよぅ、んで、隣のクラスの美人が行方不明になったて、話じゃねぇか?もし、うちのクラスで誘拐犯のお眼鏡にかなうとしたら誰だって事で、【桧木梓】まさじゃねぇか?と思ってよ。……、マジで、気いつけろよ?梓」
「???何の話だか、わかんないけど、とりあえず分かった??気を付ける????」
「おいおい、語尾が
「たぶん????」
「……;;」
この、友華に心配をされている梓という少女は、確かに、100人中120人が見惚れるくらいの容姿をしていた。
詳しく描写するならばこうだろうか。
その少女は華奢だが、決して不健康という訳ではなく丁度良いバランスを保つ体躯を持ち。肌もキメ細かく色も新雪のようなしみ一つもない白さだが、決して、病弱などという印象は与えない。髪は、ミルクティーの様に甘やかな色合いで美しくウェーブの光を反射して艶やかだ。目も髪色と同じ長いまつ毛と二重瞼にパッチリとした、可愛らしい印象が残る茶色の瞳をしている。唇も桜色に可愛らしく色づいて、まるで採れたての果実のような瑞々しさもある。誰の目から見ても美しい少女だ。
「あら、梓さんなら大丈夫じゃないかしら?」
友華と梓二人の会話に割って入ってきたのは、それまで、成り行きを見守っていた櫻子だった。
「あ“?何でだよ、梓は誰がどう見てもかわいこちゃんだぜ?」
「えぇ、私も梓さんは、可憐な美少女だと思ってますよ。友華ちゃん♡」
「だったらなんでだ?」
「だって、梓さんは容姿だけでなく中身もその姿に相応な美しさなんですもの。ふっ、これまでの
「…、それ、理由になってなくないか??」
「あら、友華ちゃん。こんな完璧な美人さん見るだけで十分ですよ。手元に置いておくなんていつ奪われるか、恐怖で寝られなくなっちゃいます」
「お前、何気にすげぇ事言ってんな……;;」
「あっ、大丈夫ですよ友華ちゃん!!私は、友華ちゃん一筋ですから浮気はしませんよ♡」
「そうゆうこっちゃねぇよ;;」
「???と、とりあえず、友華の言う通り気を付けるよっ!!!」
「…おう、十二分に気を付けろよ梓、お前、そこらの美人より美人なんだから」
「まぁ、大丈夫だと思いますけど…、用心に越した事は有りまんせよ梓さん。友華ちゃんの言う通り一応気を付けてくださいね?」
「わかった!!二人ともありがとう!!」
二人、特に、友華の方はは念入りに梓に忠告をして梓はその忠告を素直に受け入れていた。
「そういや、近所においしいパン屋ができたんだけどさ今度、三人でいかねぇか?」
「まぁ♡友華ちゃんのお薦めですか!?!?ぜひっ行きたいですっ!!」
「友華のお薦めかぁ~私も行きたいけど、お母さん、買い食い許してくれるかな?聞いてみるね」
「…、そっか、良かったら一緒にいこうな」
「たのしみにしてますね」
「うんっ!!」
「じゃぁ、私からもお話を聞いて頂きたことあって、実は………」
その後、三人は話題を色々と変えながら楽しそうに談話に夢中になり続け、終わりの時間がすぐそこまで来ていた事に彼女たちは気付いてはいなかった。
そして彼女たちは、午後の授業の始めは、視聴覚室にて参考の映像を鑑賞したのち、グループで課題を話し合うそんな授業内容ということをすっかりと失念していた。
昼休みの終わりを告げるチャイムが響き渡ると、彼女たちは慌てた様子で次は移動教室という事を思いだし教室を出ていく。
その際に、梓は、読んでいた本を、片付けるのを忘れ机の上に開いたまま放置していった。
一つ、ぽつんと残る、その本は小説だろうか、登場人物のある一言から始まっていた。
『私が、美しくなれば。あなた様は、私を、お姉さまよりも愛してくれますか。』と
***
午後の授業の始まりを告げるチャイムが響き渡る。昼休みを堪能した生徒達が教室に戻り授業を受けている最中、校長室には二人の教員らしき人物、一人はこの部屋の主人である校長先生だと思われる男性ともう一人は中年ぐらいだろうかと思われるスーツに身を包んだ男性がいた。そして、あと一人。黒髪が特徴の美しい女性がいた。女性は、真っ黒なのセーラー服と足を覆う同色のタイツに真っ赤なスカーフの出立をしており、おそらくは学生なのだろう。それにしては、大人びた不思議な色香を纏っていた。
三人は、校長室にある応接用の横に長い、大人が三人程余裕に座れるくらいの大きさのソファに腰掛けて座っていた。どのようにかと言うと、入口のドア側から見て、左から順番に女性一人、応接用の机、男性二人という並びで、座っている。
机の上には、「校内に関するご案内」と記載されたパンフレットのようなものと、重要な書類のようなもの置いてある。
「では、手続きは以上となります。明日から、よろしくお願いしますね。水谷先生」
「はい」
校長から、この水谷と呼ばれた教員は、2-Bの名簿を持っている為、クラス担任なのだろう。
そして、会話を聞くに、女性は転校生なのだと伺える。
水谷は転校生の女性に声をかける。
「じゃあ、明日からうちのクラスってことで、よろしく」
転校生の女性は水谷を見て、妖艶に微笑み、一言
「はい」
と、だけ返事をしたのだった。
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