第64話 みじめな姿の実の父親

 俺は実の両親の離婚によって、両親と別れて以降、音信不通となった。


 俺は実の両親によって、利用価値がないと判断されたことにより、親子の縁を切られてしまうことになった。


 別れた当初は、


「なんでこんなことに……」


 と思ったこともなくはなかった。


 でも、それは一瞬のことで、すぐにその考え方は変わった。


 その後、正式に今の愛情あふれる両親の養子になることができたからだ。


 それからはもう実の両親のことはただの他人と思うようになっていった。


 両親は今の両親以外にはいないと認識するようになった。


 実の両親とはもう会いたいとも思わなくなっていたのだが……。


 しかし、実の父親は、俺に利用価値があると認識すると、手の平を返して俺のとことにやってきた。


 こういう態度のどこが、


「幸せをいつも願っている」


 ことになるのだろう?


 これにはさすがに腹が少し立つ。


 でも、すぐにそれは抑えていく。


 俺は、


「お言葉ですが、わたしはあなた様のことは憎まないようにしております。わたしはあなた様によって縁を切られた身ですが、もうだいぶ前のことです。今はあなた様とはなんのつながりもありませんので、そうした憎しみについても、どうでもいいことだと思うようにするとともに、これからは忘れるだけのことだと思っております。それにあなた様のことを憎めば、人間としてのレベルがさがってしまう気がするからです。また、『わたしはお前の幸せをいつも願っている』と言われておりましたが、そんな心にもないことを言われても意味がないと思います。わたしは、あなた様が家にいる時は、怒られた思い出しかありません。それのどこにわたしの幸せを願う要素があったというのでしょう?」


 と言うと、それに対して。実の父親は。


「わたしはお前を怒ったのは、しつけの為だ。そこにはお前に対する愛があり、幸せを願う気持ちがあったのだ」


 と応えた。


 まあ、想定内の返事ではある。


 俺は、


「あなた様や実の母親のわたしに対する怒りは、わたしへのしつけとか愛というものではなく、ただのストレス発散の場だったと認識しています。わたしは幼少時、あなた様と実の両親から怒られまくったことにより、心を苦しめられたことをあなた様が理解することはできないでしょう。あなた様の怒りの中に、わたしの幸せを願う気持ちなどはなかったと言わざるをえません。そういうことですから。わたしはあなた様の要請を受けることはありません!」


 と力強く応えた。


 実の父親は、俺の言葉によって打撃を受けたようで、


「何というやつだ。ここまで父親の言うことを聞かない人間に育ってしまうとは……」


 と言ってうなだれた。


 そして、


「やっぱりお前はわたしのことを憎んでいるのだな。だからわたしの要請を断り続けるのだろう、わたしはお前の幸せを願い続けているというのに、なぜその気持ちを汲んで、わたしを援助しようとしないのだ……」


 とつぶやいた。


 それに対して、俺は、


「先程も申しました通り、わたしの人間としてのレベルが下がってしまうような気がしますので、わたしはあなた様のことを憎まないようにしております。そのことはどうかご理解ください。そして、そろそろわたしは仕事に戻らなくてはなりません。この後も、援助のことをお願い続けても、わたしの気が変わることはなく、断り続けるだけですので、もうお帰りください。お願いいたします」


 と言った。


 実の父親は、気力をどんどん失ってきているようで。


「わたしはお前の援助が欲しいんだ」


 とはいうものの、その声は弱々しい。


 俺は、その言葉に対して、


「いくら援助がほしいという話をしても、お断りさせていただきます!」


 と厳しく、そして、冷たい口調で言った。


 実の父親は、俺の言葉を聞くとうなだれた。


 しばしの間、その状態で黙り込んでいたが、やがて、


「実の息子の援助を受けられないわたしはみじめだ。情けない。こんなことなら、浮気などしないで、お前の母親と離婚はせずに、お前と三人で暮らすべきだったんだな。そうすれば幸せな生活ができたかもしれない。でももう間に合わない」


 と言った後、


「わたしはこれで帰る」


 と言って立ち上がった。


 そして、憔悴した様子でドアの方に向かって歩いていく。


 みじめな姿だとしかいいようがない。




(あとがき)


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恋人を寝取られて苦しみ、心と体を壊した前世の俺。しかし、俺を苦しめた二人は……。今世の幼馴染は美少女だが、俺の前では無表情。俺は幼馴染を理解したい。そして、相思相愛になり、結婚して幸せになりたい。 のんびりとゆっくり @yukkuritononbiri

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