第63話 俺の反撃
俺も最初堂々とした態度を取られた時は、少し威圧を受けてしまった。
しかし、実の父親の立場の方が弱いのだ。
それを実の父親も認識している以上、どんなに俺に対して堂々とした態度を取ったととしても、それは虚勢でしかない。
怒りが大きくなってきているのも、俺が容易に援助に応じない為、余計に虚勢を張らなければならないという思いの現れではないかと思う。
そして、実の父親は、
「わたしがいなければ、お前がこの世に生まれることはななかった。お前はこの世に存在していなかったんだぞ。それだけ父親というのは偉い存在なんだ。だからお前はわたしの為にすべてを捧げなければならない。いくらお前が親不孝な人間でも、わたしの言っていることはわかるだろう。さあ、援助しろ! わたしに援助するんだ! それが子供のお前の果たすべき使命だ!」
と言ってきた。
実の父親の言った言葉をまとめると、
「親がいなければこの世に自分は存在していない」
という言葉になるが。この言葉を重く受け止める人は少なくないと思う。
俺も前世のことを思い出していなければ、実の地位値親のこの言葉を重く受け止めることになって、援助を断ることに支障がでたと思う。
しかし、俺は前世のことを思い出していた。
前世において、俺と言う人間はきちんと存在していたのだ。
今は前世以外の過去世のことは思い出すことは残念ながらできないが、その内、思い出せる日も来るだろうと思っていた。
つまり、実の両親と実の両親がいなくても、俺と言う人間は存在しているのだ。
俺は、
「お言葉を返すようですが、俺という人間は、実の父親と実の母親に関係なく存在しているのです。したがって、もしあなた様や実の母親が結婚をしないか、結婚しても子供を作らなかったとしても、別の両親の子供として生まれることになったと思います。とはいっても、縁あってあなた様と実の母親の子供として生まれたわけですから、あなた様や実の母親が尊敬する人であれば、援助をする気になったかもしれません。まあ、わたしが尊敬する人たちであれば、お互いに浮気をして離婚をすることはなかったでしょうから、援助と言う話すらなかったと思いますが。いずれにしても、自分がいなかったらわたしの存在はなかったということがありえません。そのことを持って、わたしに援助を強制することも筋違いですので、改めてお断りをさせていただきます」
と実の父親に対して力強く言い切った。
実の父親は、
「な、なんという世迷言を」
と言ったのだが、その後の言葉が出てこない。
しばらくの間、沈黙がその場を支配する。
実の父親の気力は弱まったように思えたのだが……。
やがて、実の父親は、
「わたしのことが憎いのか、お前は? わたしはお前の幸せをいつも願っている。これはお前への愛と言っていい。お前はそれなのに、さっきからわたしの命令に従わないままだ。父親の愛を全く無視して、援助のことを断るなど、父親を侮辱するような振る舞いだ! お前はそういうことを自分で理解しているのか? まあ、していないんだろう。お前が父親も愛を理解していたら、父親の申し出を断るようなことはしないはずだからな」
と言い出した。
また気力を取り戻し始めたようだ。
それだけ俺の援助がほしいのだろう。
実の父親に対しては、俺を捨てた人なので、嫌いな気持ちはもちろんある。
でも、俺にとってはもう過去の話なので、どうでもいいことだ思うようにしている。
それにしても、実の父親は俺に対して、
「お前の幸せをいつも願っている」
という嘘をどうしてこう平気で言えるのだろうと思う。
(あとがき)
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