第62話 怒り出す実の父親
「離婚の原因? わたしがちょっとした浮気を何度かしたら、今の結婚相手が怒りだしてしまったんだ。それぞれの浮気相手とは何度か、男性と女性が仲を深めていくホテルに入っただけだと言うのにな。わたしがイケメンでモテるということを十分理解して結婚しているのだから、わたしのことを好きになった女性たちと、それぐらいしてもいいじゃないかと言っても、怒るだけで折り合いがつかないんだ。こちらもやってられないよな」
実の父親の返事は、俺の想像を越えるものだった。
実の父親はイケメンだったので、今の妻と結婚した後もモテていたのだろう。
でも、だからと言って、浮気をしていいものではない。
俺の実の母親と結婚している時も浮気をして、その浮気相手と結婚してからも浮気を繰り返していた実の父親。
どうしてこの人は、浮気をするのだろう?
俺がそう思っていると、話はまだまだ続く。
「結局、わたしはそうした女性たちと別れることになってしまった。今の結婚相手も憤懣がたまっているようだったが、わたしの方も憤懣がたまっていた。それで、ケンカが続くようになり、やがて、仲の修復ができなくなってしまった。その為、わたしたちは離婚をすることになった。悪いのは、今の結婚相手の方であって、わたしは何も悪くないということを、お前だったら十分理解してくれるだろう。さあ、こうして話をしたんだ。お前は黙って俺に援助をしてくれればいいのだ!」
相変わらず堂々とした態度で話を終える実の父親。
ここでも俺に少し威圧を与えてくる。
しかし、ここでもすぐに心を切り替えた。
実の父親は続けて、
「さあ、わたしに援助をするんだ!」
と言ってくる。
この人の要請はきちんと断らなければならない。
「援助のことはお断りいたします」
俺は厳しく、そして、冷たい口調でそう言った。
「今、お前何と言ったんだ?」
「ですから、援助のことはおお断りします。と申し上げたのです」
俺がそう言うと、実の父親は、
「お前は自分が何を言ったのかわかっているのか?」
と言ってきた。
だんだん怒ってきているようだ。
「もちろんわかっておりますよ」
「父親が苦しんでいるというのに、援助を惜しむというのは、何ごとだ! さっきも言ったように、お前はわたしの子供なんだ。子供は父親の命令に従い、父親が苦しんでいる時は率先して助けるものだろう? なのにお前の態度はなんだ!」
実の父親の怒りはますます増してきている。
しかし、俺の方は逆にどんどん冷静になっていく。
俺は実の父親が虚勢を張っていることを理解し始めたのだ。
既に離婚の話が出ている時点で、実の父親は苦しんできたようだ。
その前にも浮気相手とすべて別れざるをえない状況で、その苦しみもあったのだろう。
俺に対しては、それほど気にしていないような話をしていた。
俺もそのように認識していたのだが、改めて実の父親の貌を見ていると、そうではないと思うようになってきた。
よくよく実の両親の貌を見ていると、イケメンというところが失われていることは認識していたが、それだけではなくて、年齢以上に歳を取ってきているように思うようになってきた。
これは、浮気相手の女性たちと別れたことと、離婚することになったことによる苦しみが影響していると言っていいと思う。
俺が援助をしなければ、実の父親はますます苦境に陥ることになる。
高い給料をもらっていたはずなのだが、浮気相手の女性たちを中心に使ってしまい、もうそれほど貯金は残っていないのだろうと思われる。
その性格上、俺に頭を下げることができないので、堂々とした態度を取って俺を威圧するという対応を選択し、俺に援助をさせようとしたのだろう。
(あとがき)
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