第57話 これからも日曜日にゲームを一緒にしたい

 俺は紗淑乃ちゃんに「好き」という言葉を言われると、心が一気に沸き立つようになった。


 そして、紗淑乃ちゃんとまともな話ができない状態になってしまった。


 中学校三年生の十二月頃が一番酷い状態だったのだが、その後、このままではどうにもならないと思い、少しずつ克服に向けての努力をし始めた。


 高校生になった今は、それを克服し、紗淑乃ちゃんへの想いを恋にまで到達させたいと思っているところだ。


 紗淑乃ちゃんの方も、その「好き」という俺に対する想いは、「恋としての好き」までは到達できないまま、中学生の時代は過ぎることになってしまったのだと思う。


 そして、高校になっても同じ状態が続いている。


 しかし、紗淑乃ちゃんの方もそうした自分を変えていきたいと思っているはずだ。


 今まで、日曜日の昼間は、紗淑乃ちゃんと「かわいいキャラクターが多数登場するほのぼのとしたゲーム」を今の両親の家で一緒にプレイしてきた。


 俺がマンションに引っ越したということで、そうしたことも終わるのでは、と思ったのだが、紗淑乃ちゃんは、


「定陸ちゃんのマンションの部屋で、一緒にこのゲームのプレイを続けたい」


 と無表情で言ってきたのだ。


 俺のこのゲームは幼い頃から大好きだったが、紗淑乃ちゃんも大好きだった。


 それが今でも続いている。


 最近、新作が発表され、俺もそれを買ったので、プレイをしようと思っていたのだ。


 ただ、俺は一人でプレイするのも好きではあるのだが、長年紗淑乃ちゃんと一緒にプレイしてきたので、これからも紗淑乃ちゃんと一緒にプレイしたいという気持ちは強かった。


 その点でも紗淑乃ちゃんの申し出はありがたい。


 一方で、紗淑乃ちゃんは俺に対し、異性として意識しているのかどうか、わからなくなる時があった。


 この時の俺も、


「俺も一応は異性で、紗淑乃ちゃんは、俺のことを恋としてではなくても、「好き」だと言ってくれているのだから、その異性と二人きりになると言うのであれば、もう少し顔を赤くしてもいいと思うし、恥ずかしがりながら言ってもいいとは思うんだけどな………」


 と紗淑乃ちゃんには言わなかったものの、そう思っていた。


 今までも俺の部屋では二人きりにはなっていた。


 しかし、家全体では両親がいることが多かったし、二人がどちらも出かけていて、本当の意味で二人きりになったこともあったのだが、その時もお父様とお母様の家で暮らしている意識が強かったので、そこまで二人きりということを意識したことはなかった。


 でも、これからは違う。


 俺たちは本当の意味で二人きりでゲームをプレイすることになるのだ。


 紗淑乃ちゃんもそのことは理解していると思う。


 だからこそ、俺は紗淑乃ちゃんが俺を異性として意識した態度をとってくれるものと思っていたのだが……。


 紗淑乃ちゃんの俺に対する想いは、恋にまでは到達していないままのようだった。


 それが紗淑乃ちゃんへの対応で悩んでいる大きな要因の一つになっていた。


 しかし、俺にはその悩みがあるものの、もともと、紗淑乃ちゃんと一緒にいることについては、苦にすることはなかったし、ゲームを一緒にプレイしている時は楽しかった。


 そこで、俺は、


「うん、いいよ。これからも日曜日はここで一緒にゲームをして遊ぼう」


 と応えた。


 紗淑乃ちゃんはその時、一瞬だけ微笑んだ。


 すぐに無表情に戻ってしまったが、そういう反応を示したのは初めてだっだ。


 それだけでも、これからの俺たちの関係にとっては、希望と言える変化だと思った。


 そして、俺は、紗淑乃ちゃんの方だってこの年まで俺に対して、


「好き」


 という言葉を言い続けているのだから、ただ好きというだけでなく、「恋としての好き」という想いにあと少しまで来ているのではないかと思うようになっていたのだ。


 その意味で、これから毎週日曜日の昼間、俺のマンションの部屋において、二人きりでゲームをプレイするということは、そのお互いの想いを恋にまで到達させる絶好の機会になるのではないかと思っていた。




(あとがき)


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