第56話 恋に到達するところまで後一歩

 きぬなちゃんの方も、最近、より一層美しくなってきたので、人気はどんどん上がっていくことになると思う。


 どちらもこれからは、中学生の時よりも、告白する人たちが増えていくことだろう。

 中には猛烈なアタックをしてくる人たちもいるだろう。


 その攻勢に二人は対抗できるのかどうか、心配になってしまう。


 一番対抗できる方法は、二人が付き合い始めることだ。


 恋人どうしになれば。それをじゃましようとする人はほとんどだとは言えないまでも、少なくなると思っている。


 もちろんこの二人が恋人どうしになったとしても、あきらめずにアプローチをしてくる人は、少ないながらも存在すると思われる。


 俺が前世で寝取られたのがその一番わかりやすい例だろう。


 俺にとっては、一番思い出したくないことではあるのだが……。


 それでも、そうした状況になることは、可能性が相当低くなるとは言えるので、その意味でも、この二人に付き合ってほしいと思っている。


 俺は紗淑乃ちゃんのことがあるので昔も今も、人のことを言える立場ではないのだが、それでも、この二人の今までのことを思うと、すぐにでも相思相愛になってほしいと願っているところだ。


 このまま進むと、以前から懸念しているように、どちらかが別の恋人を作ってしまう可能性がある。


 その場合、恋人を作られてしまい、恋人になれなかった方は、心の打撃を受けることになってしまう。


 そして、この二人は幼馴染であるので、その打撃はより大きなものになってしまう。


 そこで受けた心の傷が癒える為には時間がかかることが十分予想される。


 俺も二人の幼馴染なので、そうした苦しみは避けてほしいと思っているのだが……。


 とにかく伸時ちゃんがきぬなちゃんの自分に対しての想いに気づき、きぬなちゃんへの恋する心を育てることが、二人の相思相愛への道につながっていくと思っていた。


 俺は高校の入学式の時、紗淑乃ちゃんの高校の制服姿を見たのだが、とても美しいと思った。


 今までの紗淑乃ちゃんも、俺の理想とする容姿を持った美少女だったのだが、それがさらに向上している気がした。


 少し長めのストレートヘアで、さらさらな黒髪。


 柔らかそうな白い肌。


 バランスよく整った容姿。


 素敵だとしかいいようがない。


 紗淑乃ちゃん、好きだ!


 この勢いで紗淑乃ちゃんに告白をしたい!


 俺の心は沸き立っていき、そのようなことを一瞬思った。


 しかし、すぐに俺は自重することにした。


 紗淑乃ちゃんとの関係は、慎重に進めなくてはいけない。


 一時の心の沸き立ちに左右されてはならない。


 紗淑乃ちゃんも俺も、まだ心の準備ができていないのだから……。


 俺は歯をくいしばりながら、何とか心の沸き立ちを抑えていった。




 俺は、紗淑乃ちゃんとの関係をどうするのか、高校に入ってからより一層悩むようになった。


 幼馴染としての枠を越え、恋人どうしになりたい!


 俺の心の中において、紗淑乃ちゃんへの想いは、恋に到達するまであと一歩というところまで来ていた。


 しかし……。


 紗淑乃ちゃんは相変わらず、


「定陸ちゃん、好き」


 と無表情で言っていた。


 中学校一年生の頃までは、そう言われることへの戸惑いや恥ずかしさから。あいさつとの認識をなるべく持つようにしていたものの、俺への好意の現れという認識はしていたので、そこまで深刻に考えることはなかった。


 しかし、中学校二年生以降になると、俺の紗淑乃ちゃんへの想いが「恋という意味での好き」という方向に進んでいくようになっていくと、紗淑乃ちゃんのそうした態度に対して、今までのようなあいさつとしての認識がだんだん困難になってくる。


 そして、紗淑乃ちゃんに「好き」という言葉を言われると、心が一気に沸き立つようになり、紗淑乃ちゃんとまともな話ができなくなってしまうようになった。


 俺はそうした自分の心の変化に、どう対応したらいいのかわからなくなっていた。


 それが、俺の紗淑乃ちゃんに対する想いを、「恋という意味での好き」というところにまで到達させることのできなかった大きな要因の一つになったのだと言えると思う。




(あとがき)


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