第52話 俺たちの入学式

 俺は高校に入学し、高校一年生の春を迎えようとしていた。


 桜が咲き、心地良い陽射しが注がれていて、春爛漫と言った雰囲気の中、入学式が行われようとしている。


 伸時ちゃんとその隣にいるきぬなちゃん。


 そして、紗淑乃ちゃんとその隣にいる俺。


 全員、高校の新しい制服に包まれていて、初々しい。


 俺たち四人は同じ学校に入学した。


 伸時ちゃんは、俺たちに対して、


「俺、この俺を含めた親友の四人一緒で、これからの学校生活を送っていけると思うと、うれしくてたまらないんだ。これからの学校生活も四人で楽しく、そして、有意義に過ごして行こうぜ!」


 と微笑むながら、力強い口調で言った。


 きぬなちゃんも紗淑乃ちゃんも、そして、俺も、微笑みながらうなずく。


 ただ、きぬなちゃんは少し残念そうな表情。


 きぬなちゃんは、伸時ちゃんに対して、自分のことを親友ではなく、恋人と呼んでほしいと思っているのではないかと思う。


 紗淑乃ちゃんとの関係が進展しない俺なので、人のことを心配している場合ではないのだが、俺にとってもきぬなちゃんは幼馴染の一人なので、どうしても心配になってしまう。


 そして、それと同時に、俺の方も紗淑乃ちゃんとの関係をどうにか進展させていかなければと思っていた。


 俺たちが通う高校は、名門校ではあるが、前世の俺とは違うところ。


 俺も、どこの高校に通うかということで悩んでいたことがあった。


 前世の時もそうだったのだが、なるべく知り合いのいない名門校に行きたかったのだ。


 ただ、幼馴染が一人だった前世の時とは違い、今世の俺には紗淑乃ちゃん以外にも伸時ちゃんときぬなちゃんという幼馴染がいる。


 伸時ちゃんは、


「この四人で一緒の高校に通いたい」


 といつも言っていた。


 きぬなちゃんも、そして、紗淑乃ちゃんも賛成していたのだ。


 きぬなちゃんはもともと伸時ちゃんと同じ高校に行きたいと思っていた。


 そして、紗淑乃ちゃんは、絶対に俺と一緒の高校に入りたいと言っていた。


 伸時ちゃんの提案は、そうした二人の願いに沿ったものだった。


 俺は、前世で通っていた名門校とは、別の名門校に通いたいと思うようになった。


 俺が他の三人にその名門校を目指すという話をすると、三人も賛成し、この四人でその名門校を目指すことになった。


 サッカーも強いところなので、伸時ちゃんにとってもいい選択肢ということになる。

 

 なるべく知り合いのいない名門校に行きたいと思っていた俺だが、この四人となら一緒に通いたいと思うようになっていた。


 中学校での成績は、俺が学年一番で、紗淑乃ちゃんは二番で、中学校一年生の時から卒業までずっとその位置を保っていた。


 伸時ちゃんときぬなちゃんも、いつも二十番以内に入っていた。


 その名門校のレベルには、この四人とも十分達していたので、全員合格することができた。


 こうして、同じ高校に入学をした俺たち四人。


 入学式では、俺たち全員が満面の笑みを浮かべるとともに、これからの学校生活に大きな希望を持っていた。




 俺は高校入学を機に、一人で生活をすることになった。


 俺の通学時間は、電車に乗る時間を入れて三十分ほどなので、決して長くはない。


 しかし、俺は社長をしていて毎日忙しい為、今の両親から、少しでも通学時間が短い方がいいのでは、という話があったのだ。


 そして、放課後はいつも会社にいかなければならない俺にとって、学校から会社への通勤時間は少しでも短い方がいいのでは、という話もあったのだ。


 そこで、俺は今の両親と相談した結果、学校から歩いて五分ほどで、会社からも電車に乗る時間を入れて二十分ほどの高層マンションの部屋を買うことにした。


 駅からも歩いて五分ほどなので、近いと言っていい。


 いずれもマンションの敷地に入った時の時間ではなく。俺が買った部屋に入った時の時間なので好立地だということが言えるだろう。


 この時間短縮は、俺にとってはありがたいことだった。

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