第47話 恋はまだ遠い
紗淑乃ちゃんとしては、俺のことが好きなことは伝えたい。
その気持ちが俺と初めて会った時から途切れることがなかったので、今まで俺に対してをその想いを毎日のように伝えてきていたのだろう。
そして、紗淑乃ちゃんは、その想いを恋に発展させてきているように俺は思えた。
恋に発展してくれば、次は、俺に告白したくなってくるのではないかと思う。
しかし、紗淑乃ちゃんは、俺に告白はしなかった。
紗淑乃ちゃんの先程の対応からすると、俺に告白しようとしたが、それは言葉にならなかったので、できなかったように思える。
紗淑乃ちゃんとしては、俺に告白してOKしてくれればいいのだが、俺に断られてしまったら、幼馴染としての関係がそこで終わってしまうという懸念があり、それが言葉にするのを妨げたのではないかと思う。
俺は、紗淑乃ちゃんに告白された場合、付き合うことを受け入れる方針を決めているが、それは、つい先程のことだ。
それまでは、心が定まっていなかったのだから、紗淑乃ちゃんが懸念するのも仕方のないことだと思う。
それが、躊躇につながっているのではないかと思っていた。
こうしたことを紗淑乃ちゃんに直接聞ける雰囲気ではないので、今まで思ったことは俺の想像にはなってしまうのだが、多分、九割は合っている気がしている。
それならば、俺の方から紗淑乃ちゃんに対して告白できればいいのだと思うのだが、それも依然として難しい。
告白をすると、恥ずかしさで俺の心が壊れてしまうのでは、という懸念がどうしてもある。
そして、俺としても、紗淑乃ちゃんが俺への想いを恋に発展させてきているとは思うのだが、紗淑乃ちゃんに直接確認することができていない。
今の紗淑乃ちゃんは、俺から直接確認できる雰囲気は持っていないのだ。
確認できない以上は、俺の方からアプローチをすることは困難だ。
その為、俺の方も躊躇せざるをえなかった。
その後は、お互いに沈黙が続いた。
そして、結局、この日の俺は紗淑乃ちゃんに対して、恋愛の話をすることはできなかった。
紗淑乃ちゃんとの関係を進めるには、お互いに恋をするというところまでいく必要があると思っている。
しかし、この日確認できたのは、俺のことが本当に好きだということだが、これも今までの延長戦上でしかなく、俺に対して、恋愛としての好きになってきているかどうかといところまでは確認できなかったので、関係を進める以前の話になってしまった。
この日の紗淑乃ちゃんの様子からすると、俺に恋をしている可能性はあると思われた。
しかし、それは言葉にすることはできなかったので、結局のところ俺に恋をしているかどうかの確認はできずに終わった。
俺のことを本当に好きなことは理解できたとは言っても、その好きの意味によって、これからの展開が大きく変わってくる。
紗淑乃ちゃんの好きという言葉が、俺に対して恋としての好きだということが確認できたら、そのまま恋人どうしになれた可能性は高い。
そのチャンスを今日は逃してしまったことになる。
もちろん俺はまだ小学生なので、「好き」の意味を深く考える必要はなかったと思うし、ここでそうした確認ができなくても仕方がないところはあると思うのだが、、中学生になったら「好き」の意味はきちんと考える必要があるし、お互いの想いをきちんと確認する必要があるだろう。
恋と言う意味での好きになっていかなければ、幼馴染の域からは脱することはできない。
もちろんそれは、紗淑乃ちゃんの方だけではなく、俺の方も同じだ。
しかも、俺の紗淑乃ちゃんに対する好意が恋に変化する為には、紗淑乃ちゃんに対する理解を深めていく必要があり、まだまだ時間がかかると思うので、人のことは当然のことながら言えないのだが……。
俺はこの日、紗淑乃ちゃんに対して恋愛の話をすることができなかった。
その為、そのことを話す気力を失ってしまった。
そして、当分の間は今の関係を維持するしかないと思うようになっていた。
結局のところ、小学校六年生の間は、その方向での対応が続くことになった。
その結果、
「定陸ちゃん、好き」
と紗淑乃ちゃんが毎日言ってくることには変化はなかったのだが、関係の方も進展することはないままになってしまっていた。
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