第42話 二人の幼馴染

 ほくが小学校六年生になると、二つの大きな変化があった。


 まず一つ目は、両親の離婚、そして、おじいちゃんとおばあちゃんの養子になったこと。


 二人は前世では直系の祖父母だったので、養子になっても心の中では両親としての認識が薄かった。


 その為、二人のことをそれぞれお父さん、お母さんと呼ぶことはなかった、


 しかし。今世は遠い親戚であるものの直系ではないので、かえって両親としての認識はしやすいところがあった。


 そこで、ぼくは、二人の正式な養子になった後、敬愛の意味を込めてそれぞれお父様、お母様と呼ぶことにした。


 ぼくのこの言葉を聞いて、二人は喜んでくれた。


 ぼくとしてもうれしかった。


 そして、もう一つは、子会社の社長に就任したこと。


 会長にはお父様は就任。


 顧問は井頭さんが、本社の顧問と兼任する形での就任となる。


 ぼくの正式な秘書は、高校入学時に採用することになった。


 それまでは、井頭さんは秘書的なことも兼任で行ってくれる。


 ぼくは、ビジネスネームを名乗ることになった。


 名前は、熱倉春陸(ねつくらはるりく)。


 この名前で仕事をしていくことになる。


 ぼくは、お父様、お母様の為にも、この子会社を一本立ちさせ、収益が上げられるようにしようと強く思うのだった。


 また、ぼくは、これを機に、自分のことを「わたし」「俺」と呼ぶことにした。


 前世でも、この頃その切り替えを行っていたので、ちょうどいい頃だと思い、凝り帰ることにしたのだ。


 会社などの公式な場や、お父様とお母様の前では「わたし」を使い、心の中や、プライベートの場では、「俺」を使う。


 俺としては、今までの自分からの脱皮という意味も込めていた。




 さて、伸時ちゃん、きぬなちゃん、そして、紗淑乃ちゃんとの関係はどうなっていうかというと……。


 小学校一年生の二学期以降、平日に遊ぶことは減ったものの、休日はよく遊んでいた。


 しかし、小学校二年生になると、この四人で遊ぶのは限られた日のみとなった。


 伸時ちゃんはサッカークラブに入り、きぬなちゃんと紗淑乃ちゃんはお稽古事をするようになったのと、俺も勉強でさらに忙しくなったからだ。


 やがて、小学校三年生になると、四人で遊ぶことはますます少なくなった。


 ただ、伸時ちゃんはきぬなちゃんとの結びつきを深めていくようになっていった。


 伸時ちゃんは既に美男子の片鱗を見せ始めていたし、きぬなちゃんの方も美少女の片鱗を見せ始めていた。


 きぬなちゃんは、伸時ちゃんのサッカーの試合があると可能な限り応援にいくなど、なるべく伸時ちゃんのそばにいようとしていた。


 将来の美男美女カップルといったところだろう。


 小学校五年生の時、俺はきぬなちゃんに、


「伸時ちゃんのこと好きなの?」


 と聞いたのだが、その時は、


「そんなことあるわけないじゃない」


 と言っていた。


 しかし、顔を真っ赤にしていたので、好きなのは間違いないと思った。


 そして、伸時ちゃんに対して恋する心を持ち始めていることを理解した。


 ところが、伸時ちゃんは、そんなきぬなちゃんの心が理解できない。


 鈍感だと言っていい。


 まあ、この年頃だと、理解できる人の方が少数派だろう。


 ただ、俺は、この二人のことを心配していた。


 前世で、幼馴染を寝取られてしまった俺。


 まだ具体的なことは思い出せていないままだ。


 しかし、それでも恋人を奪われてしまったということは心に刻まれていて、その言葉を聞く度に心が痛み出す。


 最近、その回数は増加していて、俺としてもつらいところだ。


 この二人は。まだ恋人どうしになるかどうかはわからない。


 でも、きぬなちゃんは伸時ちゃんに恋をし始めている。


 伸時ちゃんも、心の底ではきぬなちゃんのことが好きなのだと思うのだが、それは自分が持っている鈍感さの為、なかなかそれを自分で認識することができていない。


 俺はそれを歯がゆく思うことが多くなってきている。

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