第39話 後継者に向かって
ぼくの話は続く。
「そこで、今後、ぼくのことは、前世と同じように呼んでいただけるとありがたいと思っています。定陸くんではなく、定陸と呼び捨てで呼んでいただけるとありがたいです。また、きみではなくて、お前と呼んでいただけるとありがたいです。もちろんおじいさまの意志には従いますが、ぼくとしては、申し訳ありませんが、ご検討いただけるとありがたいです。よろしくお願いしたいと思います」
ぼくがこのような申し出をするのは、前世と同じ呼び方にしてくれた方が、ぼくの心が落ち着いてくるからだ。
おじいちゃんにとってもその方がいいだろう。
ぼくがそう思っていると、おじいちゃんは、
「そうだな。わたしとしてもその方が落ち着く。では、そのように呼ばせてもらうよ」
と少し微笑みながら言ってくれた。
こうしてぼくは、おじいちゃんの後継者になる為、一生懸命努力をすることになった。
おじいちゃんの後継者になる為の教育がその翌日から始まった。
小学校一年生の残りの間は、ITの基本や、経営の基本の勉強をする。
そして、小学校二年生からは、経営についての勉強と並行して、IT関連の主要な資格を取得する為の勉強を始める、
主要な資格については、小学校四年生までに取得することが求められた。
そして、小学校五年生・六年生で会社の実務の手伝いをすることによって。実務を身につけていき、中学校一年生になると同時に子会社の社長に就任する。
実務の手伝いは、平日の放課後に行われることになる。
これが全体スケジュールとなっている。
ぼくには家庭教師がつけられ、その人のもとで、小学校四年生まではみっちりとこうした勉強をすることになった。
家庭教師になったのは、おじいちゃんの会社で専務取締役を務めていた井頭歳助(いとうとしすけ)さん。
おじいちゃんよりも高齢で、今は顧問という肩書になっているが、的確なアドバイスは健在だということだ。
厳しい人を想像していたが、穏やかそうな人で一安心した。
教え方もうまく、おかげでぼくの能力はどんどん向上していった。
そして、小学校三年生の終わりの時点でIT関連の主要資格を取得することができた。
経営についての知識も身についてきて、小学校四年生からは、一年前倒しする形で、実務の手伝いをすることになった。
おじいちゃんとおばあちゃん、そして、井頭さんは、ぼくの能力の高さに驚くとともに、後継者の道を着実に歩いていることを喜んでくれた。
しかし、ぼくは決しておごることはない。
おじいちゃんとおばあちゃん、そして、井頭さんがいるからこそ、こうして進むことができているのだ。
それを絶対に忘れてはいけない。
ぼくは、
「ここまでくることができたのは皆様のおかげでございます。ありがとうございます」
と言って頭を下げ、この三人に対し、感謝の思いを伝えた。
その後、ぼくは小学校四年生・小学校五年生で会社の実務の手伝いを行った。
手伝いとは言っても、会社の業務を一通りこなすことになる。
そこでの実績が評価されることによって、子会社の社長に就任できるかどうかが決まるので、全身全霊をこめてこなしていかなくてはならない。
後見役は、今までの教育と同じ井頭さんが担当してくれた。
ぼくは既にITについての知識と経営についての知識は、この会社の中にいる優秀な人たちにも負けないほど、身につけていると自負するまでになっていた。
しかし、実務になってくるとそう簡単なものではなかった。
最初の内は、失敗を重ねてしまうことも多かった。
また、会社の人たちは、ぼくがまだ小学生ということで、事前にそのことを気にしないようにという指示がおじいちゃんから出されていたものの、それでも必要以上に意識されてしまい、やりにくいと思わざるをえないところはあった。
しかし、一生懸命努力をした結果、小学校五年生に入ると失敗することはなくなっていった。
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