第36話 おじいちゃんの話
ぼくは、おじいちゃんとおばあちゃんの家の台所にあるテーブルに、おばあちゃんと並んで座ったおじいちゃんと向き合っている。
晩ご飯は、話が終わってから一緒に食べることになった。
おじいちゃんは、
「よく来てくれた。今日はきみに話をしようと思っていたんだ。よろしいかな?」
と言ってきた。
前世での祖父は僕に対して、最初は孫であり、その後養子になったので、忠陸やお前と言っていた。
今世では、母方の遠縁で、おじいちゃんとは血がつながっていない為、定陸くんやきみと言った呼び方になっている。
これは仕方のないところだろう。
「はい。よろしくお願いします」
ぼくはそう言うと頭を下げた。
すると、おじいちゃんは、
「では、始めることにしよう。わたしはここにいるおばあさんから、きみが前世のことを思い出したことを聞いた。だいたいのことは把握したと思っているのだが、きみの口から概略でいいので説明できないだろうか?」
と言った。
厳しい口調というわけではないのだが。聞く方にとっては、背筋をピンと伸ばさせられるほどの緊張をさせられる威厳を持った口調だ。
前世でも今までの今世でも、おじいちゃんと話す機会が少なかったぼくだが、話をした時は、こうした経験を何度かしている。
やはり苦手だ。
しかし、おじいちゃんから説明を求められている以上、前世のことについて、説明をしなければならない。
ぼくは、おじいちゃんの要望通り、思い出した前世のことについて、概略の説明を行った。
とは言っても、結局のところ、ぼくのおじいちゃんにより良く状況を把握してもらおうと思ったので、かなり詳しい説明になってしまったのだが。
ぼくの悦明が終わると、おじいちゃんは、
「きみの説明、わかりやすかった。ありがとう」
と言ってくれた。
ぼくは、何とか説明を終えることができてホッとした。
「さて、定陸くん。わたしは、きみと最初に会った時から、どこかで会った気がしていた。そして、前世の忠陸と同じ雰囲気を持っていることを認識したのだ、わたしはその時に、もしかしたら定陸くんは、忠陸の生まれ変わりではないかと思ったのだ。ただ、わたしたちが生きているこの世では、人生は一度きりで、生まれ変わりなどないと思う人がほとんどだ。わたしもそう思っていたので、一旦は気のせいだと思った。でも、きみと会っている内に、前世の忠陸とますます同じ雰囲気を持っていると思うようになっていた。その時に、おばあさんからきみの前世の話を聞いたのだ。その話を聞いて、定陸くんは忠陸の生まれ変わりであることを認識したのだが、やはり、こういうことは実際に確認したいと思ったので、きみをここに呼んだというわけだ。今日ここできみの話を聞いて、わたしもきみが前世の忠陸であることを認識した」
おじいちゃんは、先程よりも柔らかい口調でそう言った。
それにしても、今まで家では寡黙だったおじいちゃんが、ここまでたくさんのことを話す人だとは思わなかった。
いや、それはただ単に、ぼくがおじいちゃんの持っている違った一面を知らなかっただけのことだろう。
急成長しているIT会社の社長なのだ。
対外的には、能弁な人なのに違いない。
「ありがとうございます。ぼくもおじいさまのことを前世の祖父だと認識しています」
心の中ではおじいちゃんと親しみを込めて呼んでいるぼくだが、こうして面と向かって話をしていると、緊張していることもあって、おじいさまという言い方になる。
「お互い、前世の孫、祖父と認識したということになる。うれしことだ」
「ぼくもうれしいです」
「ただ、わたしは、前世では、きみのこと配慮していたつもりだったが。結局のところ、配慮しきれなかった。もう少しわたしがきみに配慮をしていれば、きみのような優秀な人材を若くして失うことはなかった。そこのところは大変申し訳なく思っている」
おじいちゃんは、心の底から悔やんでいるようだ。
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