恋人を寝取られて苦しみ、心と体を壊した前世の俺。しかし、俺を苦しめた二人は……。今世の幼馴染は美少女だが、俺の前では無表情。俺は幼馴染を理解したい。そして、相思相愛になり、結婚して幸せになりたい。
第22話 もう一度恋人になってくれることを信じる
第22話 もう一度恋人になってくれることを信じる
翌日、俺は、学校にある喜緒乃ちゃんの下駄箱に、心血を注いで書いた手紙を入れた。
この手紙を喜緒乃ちゃんが読んでくれて、俺の方に心が再び向いてくることを一生懸命に願っていた。
そして、放課後、俺は俺たちが再会した公園に喜緒乃ちゃんを呼び出していて、来るのを待っていた。
公園の話の方を待ち合わせ場所にしたこともあり、周囲には人はいない。
まだ梅雨は明けておらず、今にも雨が降りだしそうな空模様。
少し蒸し暑かった。
俺は俺の手紙を読み、喜緒乃ちゃんが来ることを信じていた。
そして、俺の手紙によって、俺が喜緒乃ちゃんのことを他の誰よりも想っていることを理解してくれて、もう一度俺の恋人になってくれることを信じていた。
いや、信じたかったのだ。
だからこそ、喜緒乃ちゃんがこの公園にやってきた時はうれしかった。
俺の誠意が通じたのだと思った。
しかし……。
喜緒乃ちゃんは一人でやってきたのではなかった。
一番ここには来てほしくない糸敷と一緒だった。
その時、俺は大きな衝撃を受けるとともに、その可能性について、何も考えていなかった自分の情けなさを思わざるをえなかった。
「倉春よ、俺の恋人である喜緒乃と、二人きりで会おうとして呼び出すなんて、どういうつもりなんだ?」
糸敷は最初からけんか腰だ。
俺は糸敷に対抗して、
「俺は糸敷のことはここに呼んでない、喜緒乃ちゃんだけを呼んだんだ」
と怒り気味に言うと、今度は喜緒乃ちゃんが、
「もうわたしは舞助くんの恋人だと言うのに、なぜ二人きりで会おうとして呼び出すのよ! 信じられない話だわ。だからわたしは舞助くんに一緒にきてもらったの」
と言ってくる。
俺はあっという間に窮地に追い込まれてしまった。
でも、俺はここで倒れるわけにはいかない。
「喜緒乃ちゃん、手紙は読んでくれた?」
俺がそう言うと、喜緒乃ちゃんは、
「うん。読んだわ。倉春くんがわたしのことを好きだという想いは伝わってきたわ」
と言った。
昨日以来、俺の呼び方が忠陸ちゃんから倉春くんに変わっていて、それは残念なことではあったが、俺の想いは伝わっているようだ。
俺は少しホッとしたが、それもつかの間のことでしかなかった。
喜緒乃ちゃんは続けて、
「わたしはもう舞助くんのことしか心の中にはないの、倉春くんに想いを寄せられたって、迷惑でしかないの。今日は倉春くんとここに来たけど、それは、倉春くんにこんなことを二度としてほしくないと厳しく言う為よ。わかってくれた?」
と厳しい口調で俺に言ったのに対して、糸敷も、
「喜緒乃が言った通り、俺たちは二度とこんなことをしないよう、お前に注意をする為に、ここに来たんだ、ありがたく思えよ」
と厳しい口調で言ってきた。
この二人に関係のない人間であれば、息がピッタリ合っているということで、褒めるところだろう。
しかし、喜緒乃ちゃんの恋人だった俺には、絶望を与えるものでしかない。
さらに心身が壊れ始めた俺だったが、これでは心血を注いで喜緒乃ちゃんに手紙を書き、そして、喜緒乃ちゃんをここに呼び出して意味がなくなってしまう。
それどころか、俺が今まで生きてきた意味までがなくなってしまうことになる。
そうしたことは絶対に避けたい!
俺は最後の力を振り絞り、
「喜緒乃ちゃん、俺の恋人にもう一度なってほしい!」
と喜緒乃ちゃんに言った。
俺のこの熱い想いが今度こそ喜緒乃ちゃんに届くことを願ったのだ。
しかし……。
「いい加減にして、倉春くん。わたしの恋人は舞助くんなの。わたしは舞助くんだけを愛するの。もう二度とそういういうことは口にしないで!」
喜緒乃ちゃんからの決定的な言葉。
その言葉は、俺の心に致命的な打撃を与えた。
うなだれる俺に、糸敷は、
「どうだ、倉春、喜緒乃は俺のものなんだ。二度と俺の恋人に手を出すな!」
と叫び、喜緒乃ちゃんの手を握った。
恥ずかしそうな喜緒乃ちゃん。
いきなりここに二人のラブラブな空間が出現した。
糸敷は、喜緒乃ちゃんに、
「こいつには厳しく言うことができたから、もう二度と喜緒乃を苦しめることはしないだろう。ではそのお祝いということで」
と言うと、喜緒乃ちゃんを抱き寄せ、
「喜緒乃、好きだよ」
と言った。
喜緒乃ちゃんも、
「わたし舞助くんのことが好き」
と甘い口調で応える。
そして、二人は唇と唇を重ね合わせた。
幸せそうな二人。
俺の心はもう立ち上がれないと思われるほどの打撃を受けた。
二人はやがて、唇と唇を離した。
糸敷が、
「じゃあ、喜緒乃、これからデートをしよう」
と言うと、喜緒乃ちゃんは、
「いいわね。行きましょう」
と応えた。
二人は俺のことは全く無視して、手をつなぎながらこの場を去って行った。
俺はもう二人に何も言うことはできなかった。
そして、俺はその場に手をついてうなだれて、
「ああ、もうこれですべての希望。期待が打ち砕かれてしまった……」
とつぶやくしかなかった。
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