第20話 壊れてしまった俺たちの関係

 こうして俺は、今までの人生を思い出すとともに、祖母や周囲の人たちから聞いた話も思い出してきた。


 これらを組み合わせることによって、俺の人生の全体像を把握できることになる。


 それにしても、俺の今までの人生は悲惨としかいいようがない。


 生まれてから一年で実の両親は離婚し、捨てられてしまうとは……。


 実の両親は、ラブラブな状態で結婚したという話なのに、と思う。


 実の両親がラブラブの状態を維持できなかったとしても、少なくとも仲のいい状態が続いていれば、離婚はせずに祖父母に迷惑をかけることもなかったし、イジメの標的にされる可能性も低かっただろう、


 イジメに対しては、毅然とした対応はしてきたものの、結果として、俺は幼い頃から中学生までずっとイジメというところから逃れることはできなかった。


 俺は既に幼い頃から酷い目にあってきたと言えるだろう。


 実の両親に対しては、


「全くもって何をやっているのだ!」


 と言わざるをえない。


 今はそれぞれ再婚して、それぞれの伴侶や子供と幸せに暮らしているのだろう。


 俺の幸せを犠牲にして。


 俺としては、実の両親を憎んでも時間の無駄なので、忘れたいと思っているのだが、産みの親という事実はどうしても残ってしまうので、憎しみをどうしても持ってしまう。


 心が壊れそうになることもある。


 俺はその度に時間の無駄だと自分に言い聞かせることにより、何とか憎しみを抑えて、心が壊れるのを防いでいた。


 その点、祖父母には、ここまで育ててくれて、感謝してもしきれない。


 また、喜緒乃ちゃんは小学生の時までは、幼馴染として俺の心の支えになっていた。


 俺の心が今までもってきたのは、祖父母の存在が大きいのはもちろんだが、喜緒乃ちゃんがこの時期にそばにいなかった場合、小学校五年生までの間のどこかで壊れ始めた可能性はあったと思う。


 喜緒乃ちゃん本人にはその自覚はないと思うが、俺としては心が壊れるのを食い止めてくれたということで、小学校五年生までの喜緒乃ちゃんには感謝をしたいと思っている。


 小学校六年生の時に疎遠となり、中学生の時は離れ離れになってしまって、会うことすらできなくなったのは、今思っても残念で仕方がない。


 この間に、喜緒乃ちゃんとの関係を恋人として強固なものにすることができていれば、今の俺は、みじめな状態になっていなかったかもしれない。


 それにしても、喜緒乃ちゃんが寝取られてしまうとは……。


 俺は喜緒乃ちゃんと小学校六年生の卒業式の時に別れたのだが、その後。中学生の三年間を通じて喜緒乃ちゃんへの想いをより一層強いものにしていった。


 喜緒乃ちゃんのことで心の中が一杯になっていたのだ。


 そして、俺は喜緒乃ちゃんに会いたいという気持ちが一日ごとにつのっていった。


 しかし、再会できる見込みは立たず、落ち込むこともしばしばだった。


 だからこそ、喜緒乃ちゃんと再会できた時は、とてもうれしかった。


 その勢いで喜緒乃ちゃんに告白し、喜緒乃ちゃんのOKをもらって恋人どうしになった時は、今までにないくらいのうれしい思いをした。


 これで、俺にも幸せが訪れ始めたと思っていた。


 俺たちは、それから二か月の間は、順調に仲を深めていった。


 そして、六月上旬のデートの時は、唇と唇を重ね合わせたキスこそできなかったものの、喜緒乃ちゃんのほおに唇をつけることができたので、夏休み中には唇と唇のキスだけではなく、二人だけの世界に入ることができそうだと思っていた、


 そして、婚約、結婚につなげていくことができると固く信じ初めていたのだ。


 しかし……。


 俺と喜緒乃ちゃんがせっかく築き上げてきた関係を、イケメン糸敷は、あっという間に壊してしまったのだ。

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