第17話 幼馴染への告白

 喜緒乃ちゃんが、


「お願いしたいことって?」


 と言ってきたのに対し、俺は、


「再会したばかりのところで、心の準備が整わないとは思うんだけど、俺の恋人として付き合ってくれないかな? 俺、喜緒乃ちゃんと別れてからこの三年の間、喜緒乃ちゃんのことがずっと忘れられなかったんだ。俺、喜緒乃ちゃんのことが好きなんだ!」


 と一気に言い切った。


 この場所でいきなり再会していなければ、恐らくは言えなかった言葉だろう。


 喜緒乃ちゃんとこの公園で、予想を全くしていなかった劇的な再会をしたことにより、俺の心は、今までになく高揚していたので、こうした言葉を言えたのだと思う。


 喜緒乃ちゃんは先程よりもさらに驚いた。


 そして、考え始めた。


 俺は、


「どうか、喜緒乃ちゃん、俺と付き合ってください。お願いします」


 と言って、喜緒乃ちゃんに対して願いをし続けていた。


 俺としては、今日、何としてでも喜緒乃ちゃんと恋人として付き合えるようになりたかった。


 もう中学校の三年間のような苦しみは味わいたくなかった。


 喜緒乃ちゃんは困惑した表情を見せていたが、やがて、


「忠陸ちゃん、あまりにもいきなりすぎて、わたし、心の整理がつかない。忠陸ちゃんとは、幼馴染で、そういう意味では好きだったし、異性として認識した時もあったけど、忠陸ちゃんに対しては、恋をするという気持ちはまだ持ったことはないの。忠陸ちゃんはわたしに恋をしたと言ってくれたけど、わたしの方は、この三年間、忠陸ちゃんのことは思い出として心の底にしまっていたところはあったわ」


 と言った。


 喜緒乃ちゃんは、ここで大切なことをはっきりと言っていた。


 結局のところ、俺のことは幼馴染としてしか認識していなかったということを。


 でも、俺の心は高揚したので、この言葉は心の中には入っていかなかった。


 先程の時点ではなくても、ここまでの時点で、喜緒乃ちゃんへのアプローチを止めていれば、その後の悲劇は防げたと思う。


 しかし、俺の心は喜緒乃ちゃんと恋人どうしとして付き合いたいという気持ちに覆われていて、アプローチを止めることなど思いもよらなかった。


 俺はその後も、喜緒乃ちゃんへのアプローチを続けた。


 今までの俺では考えられなかったことだし、同じことを二度やれと言われても難しいぐらいの熱意だった。


 その結果、喜緒乃ちゃんは、


「忠陸ちゃんは、結構イケメンになってわたしの前に現れてくれて、わたしの好みにだんだんに近づいてくれたということは言えると思ってるし、わたしに対する想いの強さも本物だということはよくわかってきたわ」


 と言った。


 俺は最近、身だしなみにも気をつけるようになってきた。


 その成果が出てきたということだろう。


 喜緒乃ちゃんの心が、俺の方に傾いてきたと思った瞬間だった。


「それじゃ、俺と……」


 俺は喜緒乃ちゃんの言葉を待つ。


 緊張の一瞬。


「うん。忠陸ちゃんと恋人として付き合うことにするね」


 喜緒乃ちゃんはそう言うと、微笑んだ。


 俺は一旦ホッとした後、そこから一気に心が沸騰していく。


 中学校の三年間、夢見ていたことがついに実現する時がきたのだ。


「ありがとう、喜緒乃ちゃん。うれしくてしょうがない。好きだ。これからもよろしく」


 俺はそう言って、頭を下げた。


 喜緒乃ちゃんも、


「忠陸ちゃん、これからよろしくね」


 と言って、頭を下げた。


 こうして俺と喜緒乃ちゃんは恋人どうしになることができた。


 俺は心の底から喜んでいた。


 喜緒乃ちゃんも微笑んでくれているので、喜んでいるようだった。


 いや、喜んでいるように思っていたのだが……。


 この時の俺は、その後、悲劇が待っていようとは、想像もできなかった。


 喜緒乃ちゃんの言葉、態度をきちんと把握していれば、防げた話ではあったのだが……。


 喜緒乃ちゃんに溺れていたこの時の俺には、とても難しい話だった。

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