第10話 異性としての認識

 俺は小学校に入学した。


 小学生になってからも、一部の人たちからのイジメは続いていた。


 面倒なことだとは思っていたし、心への打撃もあった。


 でも。俺は負けない。


 俺はイジメられる度に毅然とした態度を取り続け、その努力の結果、小学校の高学年になると、俺をイジメる人たちの勢いは弱まり始めていた。


 ただ、それでも俺へのイジメを全くなくすということはできなかった。


 中学生になっても俺と俺をイジメる人たちとの戦いは続くことになる。


 俺は結局のところ、実の両親が離婚して、そばにいないというだけで、幼稚園の頃から中学生の時まで、イジメを受け続けることになってしまった。


 それでも俺は毅然とした態度を取り続けていたので、酷い目には合うことはほとんどなかったと言えるだろう。


 しかし、心の打撃については、それが弱いものであることが多かったにしても、受けざるをえなかった。


 イジメている人たちに対しては、毅然とした態度を取り、心の打撃を受けているというところは一切見せることはない。


 しかし、そうしたことがあった後の夜、自分の部屋にいる時、心の中では、


「なぜぼくは実の両親と一緒に暮らすことができないんだろう……」


 という思いが湧き出してくることがよくあった。


 そういうことを思うこと自体、愛してくれている祖母には申し訳ないことだと俺は思うので、その思いを一生懸命抑え込んでいく。


 でも、抑え込めきれないことも残念ながらあり、その時は、つらい思いをすることになってしまう。


 俺は、小学生の高学年になるまでは、実の両親がどういう人かということを知らなかった。


 祖母も周囲の人たちも、俺のことを気づかって、話をしようとはしなかったからだ。


 実の両親のことをよく知らなかったことにより、俺は実の両親というものにあこがれをもったままだったので、そういうつらい思いをすることになったのだと思う。


 もし、その段階で実の両親のことをよく知ることができていれば、つらい思いをすることなどなかったことだろう。


 そうした俺の心の癒しになってくれたのが喜緒乃ちゃんだった。


 小学生になってもクラスが一緒になったこともあり、依然として俺と一緒に遊んでくれた。


 幼稚園の時ほどではないが、クラスで孤立気味な俺にとっては、ありがたいことだった。


 クラスがその後も一緒だったこともあり、小学校三年生の頃までは、仲良く遊ぶことができていた。


 俺は喜緒乃ちゃんと一緒にいるだけで心が癒されていた。


 ただ、今思うと、喜緒乃ちゃんは、イケメンを求める気持ちが年々大きくなっていた。


 当時の俺は、喜緒乃ちゃんから、幼稚園の頃から聞いている話だったので、その気持ちが大きくなるということの重要性に全くと言っていいほど気がついていなかった。

 もともと喜緒乃ちゃんは、幼い頃から美少女の片鱗を見せていた。


 その美貌に磨きがかかり始めていく。


 俺は次第に喜緒乃ちゃんのことを異性として認識するようになった。


 喜緒乃ちゃんも俺のことを異性として認識するようになっていく。


 その結果、二人での会話自体は毎日続けてはいるものの、お互い恥ずかしい気持ちになることが多くなっていた。


 そして、小学校五年生になる頃には、毎日の会話こそ続いているものの、二人で一緒に遊ぶということはハードルが高いものになったので。遊ぶことはなくなっていった。


 俺は寂しい気持ちになった。


 しかし、その気持ちも恥ずかしさがあって、喜緒乃ちゃんに伝えることはできなかった。


 そうした小学校五年生の夏休み前のある日。


 俺は祖母に、俺の実の両親についての詳しい話を初めて聞かされた。


 俺が思春期を迎え始めたということで、話をしても理解ができると判断されたのだろう。


 その時の衝撃は今でも忘れることはできない。


 俺の実の両親は、俺の想像をはるかに越える酷い人たちだったのだ。


 俺はこんな両親から産まれてきたと思うと、とても悲しい気持ちになった。


 実の両親に対するあこがれは、この瞬間、全くなくなり、憎しみの気持ちが湧いてくるほどだった。


 それと同時に、俺を養子にして養ってくれている祖父母に対しては、改めて感謝をした。

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