第11話 俺と疎遠になる幼馴染

 小学校五年生の三学期になると、俺は喜緒乃ちゃんのことをさらに異性として意識をするようになった。


 俺は喜緒乃ちゃんに恋をするというところまで、気持ちが到達し始めていたのだ。


 喜緒乃ちゃんの方も、俺のことを異性として意識していることは伝わってきていた。


 ただ、俺に恋をするところまで、気持ちが到達しているかどうかはわからなかった。

 そこで、俺は告白をすることを考え始めるようになった。




 俺が喜緒乃ちゃんのことが好きだという気持ちを喜緒乃ちゃんに伝える。


 そうすれば、喜緒乃ちゃんが俺に対して持っている気持ちがわかる。


 俺に恋をしてくれていれば、その時点で恋人どうしになれる。


 もし、喜緒乃ちゃんが俺に対してそこまでの気持ちに到達していかなかったとしても、それはこれから到達させていく為、努力をしていけばいい。


 まずは現在の状況の把握が必要だ。


 その為には俺が喜緒乃ちゃんに告白をする必要がある。


 また、俺の周囲では、カップルが誕生し始めていて、そうしたことの影響も受けるようになっていた。


 つまり、そうした人たちにあこがれを持ち、うらやましいと思うようになっていたのだ。


 そこで、俺は喜緒乃ちゃんに告白しようと決意した。


 それと同時に、俺は自分のことを他人に言う時は「ぼく」という言葉を幼い頃から使っていたのだが、これを機に「俺」という言葉に切り替えていくことにした。


 喜緒乃ちゃんに告白をする時は、「俺」という言葉を使わないと断られる可能性が高くなるような気がしたので、普段から使うことによって慣れておこうと思ったからだ。


 そして、デートの計画も立て始めることにした。


 小学校六年生になったら、恋人どうしとしての楽しい生活が待っていると思っていたのだ。


 しかし……。


 一日一日が経つ間にどんどんかわいくなっていく喜緒乃ちゃんを目の前にすると、恥ずかしくて、告白する気力が急激になくなってしまう。


 話どころかあいさつも満足にできなくなっていく。


 この現象に俺は悩まされることになった。


 小学校六年生になって、俺はクラスが初めて喜緒乃ちゃんと別になったので、より一層喜緒乃ちゃんと話をする機会を作らなければならなかったのに、俺にはそれができなかったのだ。


 その為、小学校六年生の一学期の間に、俺と喜緒乃ちゃんはだんだん疎遠になっていった。


 せっかく小学校五年生の三学期になって、お互い、異性として意識をし始めていたというのに、俺はともかく喜緒乃ちゃんの方は、小学校六年生の一学期の間に、俺のことをただの幼馴染だという思う認識に戻ってしまったようだった。


 また、この頃になると、魅力を増していく喜緒乃ちゃんのことが好きになった男子たちが、告白をするようになっていた。


 俺としてはそう言った話を聞く度に心が揺れ動く。


 幸いにも、喜緒乃ちゃんはそうした男子の告白をすべて断っていたので、その度に俺はホッとしていた。


 小学校六年生の二学期になってしばらくすると、喜緒乃ちゃんや俺とは違うクラスで。小学生でありながら既にイケメンと言われている男子が、喜緒乃ちゃんのことを好きになったという噂が流れてきた。


 喜緒乃ちゃんの方もその男子に好意を持っているという噂だ。


 そして、喜緒乃ちゃんに告白をするのでは、という噂も流れてきた。


 その話を聞いた時、俺は目の前が真っ暗になった。


 イケメンが好きな喜緒乃ちゃんなので、その男子に告白されたらOKしてしまうのでは?


 もしそんなことになったら、俺の心は壊れてしまいそうだ。


 俺はこの話を聞いて以降、喜緒乃ちゃんと話すことは、ますますできなくなっていった。


 このような状態では、俺から告白することなどますますできなくなっていく。


 悶々とした状態で、十二月を迎えると、そのイケメン男子はついに喜緒乃ちゃんに告白するという噂が流れてきた。


 しかし、俺には何もできない。


 喜緒乃ちゃんにその男子のことをどう持っているのか、聞くわけにもいかない。


 俺はさらに悶々とするようになった。


 結局、そのイケメン男子が、喜緒乃ちゃんに告白することはなかった。


 その男子には幼馴染がいて、その女子に告白をした結果、付き合うことになったそうだ。


 俺はホッとすると同時に、うらやましいと思った。


 何もできない俺に対して、その男子は、きちんと好きな子に告白して相思相愛になり付き合いを始めている。


 俺も何とかしなければならないと思うのだが、何もできなかった。


 自分が情けなくてたまらない。

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