第6話 致命的な打撃

 喜緒乃ちゃんと糸敷の二人はしばらくの間、キスを続けていく。


 やがて、時間が少し経った頃、二人は唇と唇を離した。


 そして、糸敷は、


「どうやら心に大きな打撃を受けたようだな。だから言わないことはない。お前があきらめないからこうなるんだぞ。全くしょうもないやつ。喜緒乃よ、これで喜緒乃はお前のことをあきらめてくれそうだ」


 と勝ち誇ったように言った。


 喜緒乃ちゃんも、


「もうわかったでしょう? 舞助くんとわたしは一心同体なの。もうあきらめて」


 と言ってくる。


 俺はもう反撃する気力がなくなってきていた。


「ではそろそろホテルに行くか。今日もお前との仲を進めていけると思うと、うれしいよ」


 糸敷が微笑みながらそう言うと、喜緒乃ちゃんも、


「わたしも舞助くんとの仲を進めることができると思うと、うれしくてたまらないわ」


 と少し恥ずかしそうにしながらそう応える。


 ホテル!


 ただのホテルではない。


 男性と女性が仲を進めていくホテルに、いよいよ二人は入ろうとしている。


 今までの話で、二人は既に入った経験が何度もあるようだ。


 言葉で聞くだけでもつらいことなのに、二人は今、俺の目の前でそのホテルに入ろうとしているのだ。


 つい先程、俺の目の前でキスをした二人。


 既に俺の心は大きな打撃を受けている。


 それなのに、二人はさらなる大きな打撃を俺に与えようとしている。


 喜緒乃ちゃんはなぜそのような仕打ちを糸敷と協力して、俺に対してしなければならないのだろう?


 俺は幼い頃から喜緒乃ちゃんのことを大切な存在だと思い続けていたし、そういう扱いをしてきたというのに……。


 いくら俺を自分からあきらめさせたいと言っても、常軌を逸しているとしか思えない。


 俺は、


「喜緒乃ちゃん、俺ともう一度、恋人どうしになってほしい」


 と言って、喜緒乃ちゃんに哀願をする。


 しかし、喜緒乃ちゃんは聞く様子がない。


 喜緒乃ちゃんとは幼い頃から一緒。


 思い出もたくさんある。


 喜緒乃ちゃんをこのまま糸敷のものにしておくわけにはいかない。


 それに、俺は噂で聞いていたのだが、糸敷が中学生の頃は何人もの女子生徒と付き合っていて、二股は当たり前で、飽きたら捨ててしまうということの繰り返しだったそうだ。


 そんな男なのだから、喜緒乃ちゃんもやがては飽きられて、捨てられてしまうだろう。


 俺は、


「喜緒乃ちゃんは聞いたことはないの? 糸敷くんは飽きたら付き合った女性を捨てるという話」


 と何とか声を出して言った。


 それを聞いた喜緒乃ちゃんは、


「舞助くんが中学生の頃、何人もの女子生徒と付き合っていたことは聞いていて、全員と別れたことも聞いていたけど、わたしは別よね。わたし別れるとか捨てるとかそういうことはないわよね」


 と糸敷に言った。


 喜緒乃ちゃんもその点は気になっていたようだ。


 ようやく少しではあるものの、喜緒乃ゃんの心を動かすことができたと思った。


 しかし、糸敷は、


「俺は喜緒乃のことが好きなんだ。心配することはない。今まではそこまで好きになった子がいなかっだけの話だ。俺が喜緒乃を捨てることなどありえない。俺はそこまでお前のことが好きなんだ」


 という甘い言葉を喜緒乃ちゃんにかけていく。


 すると、喜緒乃ちゃんは、


「舞助くん、ありがとう。わたしのことを捨てることなどありえないという舞助くんの言葉を信じるわ。わたしも舞助くんのことが好き。誰が何と言おうと、舞助くんのことが好きなのよ。これからも二人の仲を進めていこうね」


 と言って微笑んだ。


 二人の仲はさらに強固になった。


 そして、喜緒乃ちゃんは、俺に対して、


「倉春くん、舞助くんとわたしの仲をじゃましないで!」


 と厳しい口調で言ってきた。


 俺はもう何も言うことができない。


 喜緒乃ちゃんのこの言葉によって、俺は致命的とも言える打撃を受けたのだ。


「倉春よ、じゃあな」


「倉春くん、じゃあ、行くね。バイバイ」


 二人は、手をつないでホテルに入っていく。


 俺は涙を流して、ただ二人を見送ることしかできなかった……。




(あとがき)


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