第8話

「とはいえ、難しい作戦になりそう。」



リンは嫌そうに顔を顰めた。



「街に入れる前に撃退しなくちゃいけない。慣れているとは言っても、どこまで軍の体力が持つか…。」



「…こういう時こそ、私たちの出番かしら。」



運ばれてきたランチプレートのサラダをつつきながら、ゾーイはぼんやりとそう言った。



「そうかもね。」



不意に目に止まった1人の通行人。



耳に釦の痕。


あれは改造人間サイボーグだ。



三年前、この国の研究者は、改造人間サイボーグを発明した。



彼等が行き交う姿を見るのも、今の軍施設内では珍しくない光景だ。



「まだ極秘の存在だけどね。」



改造人間サイボーグの存在を知る軍人は多くはない。



まだ一般化されていないそれを公にするつもりは、少なくとも当分の間は、軍上層部にはないらしい。



ゾーイはそっと自分の右耳に触れる。



釦痕の感覚が指に伝わる。



聴覚にだけ、やや課題が残る改造人間サイボーグは補聴器のような機械を耳につけている。



今や、その耳の釦痕が改造人間サイボーグである証になりつつあった。



「あんた達みたいなのがいると、こっちは心強いわよ。」



「私は中途半端だからなんとも言えないけど。」



「もし戦争に出るなら、あんたは最前線ね。それだけ体術使えるんだし。」



大きなケーキが運ばれてくる。



体の細いリンが三つもこれを食べるのだから、周りの客の視線を集めっぱなしだ。



当の本人はそんなことを気にも留めずに甘そうなクリームを口いっぱいに頬張る。

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