第7話

「リン。」



「あ、来た。遅いよ。」



「ごめん。」



いつもの店に顔を出すと、彼女はテラス席に座っていた。



「先に食べちゃったけど、何頼む?」



「日替わりランチ。」



「あんた、いつもこれね。」



リンはそう言って笑いながら、店員を呼んだ。



日替わりランチ、ケーキを3つ、それと珈琲を2つ、あ、あとお土産にサンドイッチを。



ぺらぺらと話すリンの注文を聞き取るのに必死な店員は何度も何度も頷いては確認して厨房に戻っていった。



「はー、お腹減った!」



万歳と両手を上げるリンに構うことなく、ゾーイは街を見渡した。



このカフェは軍事施設内にある。



多くの軍人が出入りしている繁盛しているカフェだ。



今日も賑やかに店を切り盛りする女将が奥で大声で笑っているのが聞こえる。



「…スペクルムのことだけど。」



リンは声を潜めて話し始めた。



「あの要塞からここまでは、軍隊ならおそらく10日も掛からない。ゾーイ、次の作戦には出てる?」



「出てないわ。」



「まあ、あんたはどちらかといえば接近戦向けか。私は参戦するんだけど、近いうちにここを閉鎖するらしい。」



「まあ、それが無難よね。」



この街を空けることの方が難しい。



避難するにしたって、ここ以上の軍事基地とその防壁がある街はないのだ。



それなら篭城した方が、国民の混乱を招かずに済む。

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