第3話

いつのまにか集会は終わっていた。



指先まで伸ばした手の力をだらりと抜いて、ゾーイはほっとしたように息をつく。



「大佐かと思った?」



ゾーイの同僚であるリンは、蜂蜜色の瞳を悪戯っぽく緩めて笑った。



「まさか。大佐はもっと怖いもの。」



「へえ、言うじゃん。」

  


「あなたの方がわかってるくせに。」



このリン・ホワードは、先ほど無機質な声で事務連絡をしていた大佐ーーキム・ホワードの妹だ。



ふとした瞬間の眼光の鋭さや、美しく弧を描く薄い唇はその面影がある。



「次の訓練は昼からでしょ?お昼食べに行こ。」



「後でいく。少し右手の調子を整えてくる。」



「じゃ。あとで!」



リンはひらひらと手を振ってその場を去っていった。



男性と比べても背の高いリンは歩いていてもよく目立つ。



彼女の一つ出た頭をぼんやり見送った後、ゾーイはくるりと踵を返して階段を上った。

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