鏡の国

@2housenka

スペクルム陥落

第2話

幻歴1239年、鏡の国。


「スペクルムが陥落した。」



大佐の言葉に、ゾーイは耳を疑った。



(あそこには、ヒューイが…。)



スペクルムは、この鏡の国の中でも大きな要塞のある北の土地だ。



大きな軍隊が駐在しており、さらに寒さの厳しいあの土地を抜けてくるのは容易ではない。



敵がそこを突破したということは、軍隊に入っていた友人は…。



ゾーイは思わず唇を噛む。



同じような心境の者がいたのか、どこからか鼻を啜る音が聞こえた。



敵の姿をこの王都で見るのはそう遠くはないだろう。



その場にいた兵士達に、戦争という現実が強く突きつけられた。



「地上戦になる日は近い。いつ接近戦になるかわからん、鍛錬は抜かるな。明日の作戦についてだが…」



大佐は淡々と書類の重要事項を読み上げていく。



それに耳を傾けつつ、ゾーイは物思いにふける。



(ここも戦場になるかしら…)



鏡の国の都である、このカスレフティスには全体の70%以上の国民が住んでいる。



この場にいる兵士の血縁者が住んでいるケースも多い。



もしも都カスレフティスが戦場になれば、その被害はこれまでの戦の比ではない。



それだけは、この国の軍人として何としても避けなくては…。



「ゾーイ?」



ふいに声をかけられ、彼女はハッと俯いていた顔を上げた。

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