【天敵】

第2話 「試練」



きっと貴方に出会ったときには勝敗は決まっていたー。





※※※※※





この頃寒さが目立ってきた。




炎界と雲界は暖かくできるが、氷界と虹界は頑張って冬を乗り越えないといけない。




そう思えばまだ楽の方だと思う。




氷界と虹界はずっとスカーフを巻いたり厚着したりと見ただけで暑苦しい。




だから世間で最近話題を呼んでいるルビナは戦うのがさぞ大変なことだろう。




ールビナとは、氷界の界人で、界王の娘。


ー界王とはそれぞれの界の王の事で、優秀な界王は時々 “神” の手伝いをさせられる時がある。


ーそしてルビナは界王の娘として反響を呼んでいる。インタビューを受ける時もある。


ー私は界王の娘ではないが、実力があるのでルビナ程ではないが、知名度は上がってきている。




今私は冬だが炎で飾られた煉瓦道を歩いている。




今日は週に一度の “要教育者の朝礼” に参加する。




ー要教育者とは力はついているがまだ未熟の為、教育係が教える必要があるという人の事だ。私とルビナは史上最年少でこの位に上がった。




何を言われるのか不安に思いながらもうすぐ終わりに近づくこの煉瓦道をゆっくりと進む。




朝礼はいつも神界で行われる為、朝礼がある日の来る時と帰る時の2回のみ、専用の階段がそれぞれの界域に降ろされる。




その階段も朝礼が始まると共に神の手によって直される。




隣に今ルビナがいると考えると吐き気がしてしまう。




神界に近づくにづれ鉛のように重くなる足を無理矢理上げながら最後の一段を登り終え、炎界専用のスペースに移動する。

ルビナに気づかれないように。


そう思った時だった。




「あれあれ〜???エリちゃんだ〜!!!てっきり “要介護者” の位に落ちたのかと思ったよ〜!」




気持ち悪い声を耳元に囁かれながら無言でふわふわの道を歩く。




既に緊張感が高まっているこの場を眺めることができず、黙々と専用スペースに向かう。




(はあー、疲れるー)




自然とため息が出てしまうぐらい一気に疲労が溜まり見覚えのある仲間を見て一安心しながら三角座りした。




それから少しして神が出てきた。緊張感が一気に増す。




「おはようございます、皆様」




神の声は就任時よりもか細くなっている。

既に少し聞こえ辛くなっているその声は少し柔らかくなったような気がするのは私だけなのかと少し気になったりもする。




「今日は君たちに新しい試練を突きつけようと思う。」




朝礼の時は界王の時以外返事は無しというルール。神から催促される時以外は。




「君たちは界王らに教えてもらいながら幼い “幼稚児” の教育者となって欲しいんだ。」




「ルビナとエリには期待しているよ。両立して欲しいな。ルビナはルーツとルレン、エリにはエニアとエシルをお願いしたい。返事は?」




「「了解です!」」




ー詳しくは界王を通じて伝える。


そう言い残し、朝礼は終了した。





※※※※※



みんなが待つ家に向かう道中、界王のエデンが目の前に立ち塞がった。




「エリ。最近の活動は妻や神から聞いている。」




珍しくエデンが褒めてくれた。嬉しい。


そんなことを一瞬思った。




「神から聞いているだろうが、エニアとエシルの事だ。エニアとエシルは産まれた時から仲が良いようだ。決してその仲を引き裂くような真似はしないように。それだけだ。」




それだけ、?もっとこういうことを教えなさいとかあるんじゃないの、?


気がついたらエデンに話しかけていた。




「エデン王、エニアとエシルには何を教えれば良いのですか?」




恐る恐る聞いたその言葉の返事は…




「彼らは私達のこの能力を戦いで使うと認識してないのだそうだ。ただの遊びで使うものだと考え、今まで沢山の人を傷つけたという記録が残っている。その考えから徹底的に直せ。分かったなら行くぞ。」




分かったなら、。


その言葉が本当なら何故貴方はもう背を向けてご自宅へと向かっているのですか、?



そんな事、言えるはずもない。


一日、会ったこともない二人の子のことを考えていた。



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叶わない願いを叶えてくれますか? 有茶川みるく @miruku387

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