第19話: ガイゼル軍
冷たい夜の風が大地を撫で、月明かりが森をわずかに照らしていた。その中を、一人の黒いローブを纏った女性が静かに歩いていた。彼女の名はナーベラル・ガンマ。ナザリック地下大墳墓に仕える戦士であり、今回はアインズの命により、ガイゼル軍に潜入し、その動向を探るために派遣された。
「やれやれ、こんな下等生物の群れに紛れるとは、少し気が進まないが…主の命令ならば従わねばならない。」
ナーベは一瞬、アインズの顔を思い浮かべ、冷静さを保つ。その美しい顔には無表情を装っていたが、心の中ではその任務に対する忠誠心が溢れていた。今回の任務は、ガイゼル軍がナザリックにとってどれほどの脅威となるかを確認するためのものであり、極秘の潜入が必要だった。
彼女は魔法の力を使い、周囲に溶け込むようにその姿を消しながらガイゼル軍の拠点へと近づいていった。高い魔法耐性を持つナーベなら、低級の警戒魔法を簡単にすり抜けることができる。森の中を進むたび、敵の動きや警戒が緩んでいる箇所を冷静に観察しながら進行した。
数分後、ついに彼女はガイゼル軍の本拠地に辿り着いた。そこは巨大な要塞のような建物で、周囲には多くの兵士たちが警備に当たっていた。幹部たちの姿は見えないが、その威圧感から彼らがこの場所を指揮していることが分かる。
「さて、どこに潜り込むか…」
ナーベは壁を超え、内部の一室へと足を踏み入れた。その部屋は薄暗く、兵士たちが行き交っていたが、ナーベは音もなく彼らの背後を通り過ぎ、物陰に身を潜めた。彼女の目的は、ガイゼル軍の幹部たちが今後どのような行動を取るか、その計画を探り出すことである。
その時、奥の廊下から低い声が聞こえてきた。ナーベは慎重にその声に耳を傾け、周囲を警戒しながら声の主の元へと近づいた。
「…次の作戦は慎重に行わなければならない。イビルアイとの戦闘で、我々が予想以上に手強い相手だということが分かった。だが、次は必ず奴らを倒す。」
それは、漆黒のローブを纏ったアクラル・セレナの声だった。ナーベは薄暗い部屋の中で、アクラルがガイゼルの幹部たちと話し合っているのを目にした。
「ディオニスはどうするのだ?彼の力をもう一度引き出すべきか?」別の男、ゾルバク・フィエンが問いかけた。
「必要ならばそうしよう。しかし、次は単純な力だけでは勝てない。相手の動きを封じる手段が必要だ。」
ナーベはアクラルたちの言葉を慎重に聞きながら、心の中で分析を進めていた。イビルアイとの戦闘でディオニスが苦戦したことから、ガイゼル軍はより一層警戒心を強めている。彼らは次の戦いに向けて、ただ力で押し切るのではなく、何か別の策を講じるつもりだ。
「ガイゼル様も、この事態を重く見ておられる。次の戦いで我々が敗れることは許されない。全てはあのお方の計画のためだ。」
ナーベはその言葉を聞いて眉をひそめた。「あのお方」とは一体誰なのか。彼らが何者かに従って行動していることが明らかになったが、その正体まではまだ掴めない。
「なるほど…次の戦いは単純ではなさそうだ。」
ナーベは静かにその場を後にし、再び暗闇に溶け込んだ。彼女の任務は、ガイゼル軍の動向を監視し、ナザリックに報告することである。アクラルたちの話から、次の一手が近いことを感じ取ったナーベは、早急にこの情報をアインズに報告するため、拠点を後にした。
「報告が終われば、次は彼らの策を打ち砕く準備だ。」
ナーベは冷静に次の手を考えながら、闇の中へと消えていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます