第17話: 嵐の力、第二段階

地面に叩きつけられたヴォルテクス・ディオニスが、苦痛に顔を歪めながらもゆっくりと立ち上がった。金色の鎧の一部が崩れているものの、彼の表情には絶望の色はなかった。むしろ、不敵な笑みを浮かべ、イビルアイに視線を向ける。


「ここまでやるとはな。さすがに感心したよ、イビルアイ。しかし、これで終わりだと思うなよ。」


ディオニスの声には明確な自信が込められていた。イビルアイは彼の言葉に警戒を強め、周囲の魔力をさらに研ぎ澄ます。


「何かを隠しているのかしら…?」


彼女が疑問を抱いた瞬間、ディオニスの体全体が再び金色の雷光に包まれた。その雷光は今まで以上に強烈で、空気が震え、森の全域が激しく揺れ始めた。


「見せてやろう。これが俺の真の力、『嵐の支配者』だ!」


突然、彼の周囲に渦巻く雷の力が膨れ上がり、巨大な竜巻のように空を切り裂いた。天からは雷鳴が響き渡り、無数の雷光がディオニスの体に集中していく。その姿はまるで嵐そのものを体現したかのようだった。


「嵐を解放するというのね…!」


イビルアイはその瞬間を見逃さず、すぐに浮遊(フロート)で距離を取る。彼女の目には明らかにディオニスが次の段階に移行したことが分かっていた。しかし、イビルアイの心には焦りはなかった。彼女の実力が彼を上回ることに自信を持っていたのだ。


「これが俺の第二段階だ、イビルアイ。お前をここで打ち倒し、我が軍の勝利を証明してみせる!」


ディオニスは叫びながら、両手を広げ、天に向かって雷光を放つ。瞬間、彼の背後に巨大な雷の竜が現れ、咆哮を上げた。その竜は周囲に雷撃を放ちながら、イビルアイに向かって突進してきた。


「くっ…これは!」


イビルアイは冷静に魔法障壁(マジック・シールド)を展開し、その雷の竜に対抗した。しかし、竜の力は予想以上に強力で、彼女の障壁が徐々に侵食され始める。


「このままでは危険ね…!」


彼女はすぐに新たな呪文を詠唱し始めた。「グレーターマジック・シールド」でさらに強力な防御を展開し、雷の竜を防ぐ。しかし、ディオニスの攻撃は止まらない。次々に雷の槍が放たれ、その一撃一撃がイビルアイを追い詰めていく。


「これほどの力を持っているとは…!だけど、まだまだよ!」


イビルアイは空中で体勢を整え、反撃に移った。彼女の手からは「魔力解放(エナジー・ディスチャージ)」が放たれ、ディオニスの竜巻を切り裂くように広がっていく。


「やるな…だが、まだ終わらん!」


ディオニスはさらに雷光を集め、自身の体にまとわせた。彼の力は最高潮に達しつつあり、全身から放たれる雷のエネルギーは彼をまさに「嵐の支配者」たらしめていた。


「これで終わりにする!」


彼は最後の一撃を放つべく、全ての雷を拳に集中させ、イビルアイへ向かって突進してきた。その速さは嵐の如く、一瞬で彼女の目の前に迫る。


「くっ!」


イビルアイは瞬時に闇の力を召喚し、影のバリア(シャドウ・バリア)を展開する。だが、その一撃の威力は圧倒的で、バリアが一瞬で崩れ去る。


「まだ…終わらない!」


イビルアイは冷静さを失わず、次の呪文を詠唱する。「グレーターメイデン」を再び放ち、ディオニスの全身を強力な魔法で吹き飛ばした。彼の雷光が一瞬にして弱まり、その体は再び地面に叩きつけられた。


「やはり…少し届かないようね。」


イビルアイは、彼の力を評価しつつも、決して油断はしなかった。ディオニスは確かに強力だったが、彼女の力にはまだ及ばない。それでも彼の第二段階は脅威であり、戦闘の結果は一瞬の油断でどう転ぶか分からないものだった。


ディオニスは苦しげに立ち上がろうとしたが、その動きは鈍くなっていた。彼の嵐の力も限界に近づいていた。


「イビルアイ…お前は本当に強い。しかし、俺は…まだ…!」


彼の声は途切れ、やがて静かに地面に倒れ込んだ。

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