第14話: 激戦の果てに

青空が広がる中、ガイゼル軍の手下たちが静かに進軍を続けていた。彼らは一人残らず鍛え抜かれた強者ばかりで、闇の中に潜む狡猾さと、残忍さを持ち合わせている。森の中を歩むその姿は、自然の風景に溶け込みながらも、不穏な気配を漂わせていた。


その先、ガイゼルの手下が一行を率いていたのは、彼の側近の一人、バロック。彼は冷静でありながら、その瞳には凶暴さが宿っている。戦場では残忍さと計算された攻撃が特徴で、ミスリル級の冒険者をも圧倒する実力を持つ。


「今日も狩りを楽しませてもらうとしようか…」バロックは微笑みながら手を広げた。


彼らの行く先に待ち受けていたのは、ミスリル級冒険者のチームだった。彼らはナザリックの異変に備え、エリアの偵察と討伐任務を行っていたのだ。


「ガイゼル軍だ!気をつけろ!」先頭を歩く隊長、カシスが仲間たちに警告を発した。


その言葉が終わるやいなや、戦いが始まった。バロックは素早く動き、カシスの目の前に現れる。彼の大剣が音もなく振り下ろされた瞬間、金属同士がぶつかる鋭い音が森に響き渡る。


「くっ…この速さ…!」カシスは驚愕の表情を浮かべた。


バロックは笑みを浮かべながら、さらに攻撃を加える。鋭い一撃一撃がカシスの防御を貫きそうになるたびに、カシスは何とかそれを受け流していたが、そのプレッシャーは計り知れない。


「弱い…これがミスリル級だというのか?」バロックは冷酷に言い放つ。


だが、カシスも決して無力ではなかった。彼は隙を突き、バロックの腹部に剣を突き立てようとした。だが、その瞬間、バロックは手のひらで剣を受け止めた。あり得ない速さだ。


「残念だったな。」バロックは微動だにせず、次の瞬間、強烈な蹴りをカシスの腹に放った。


「ぐはっ…!」カシスは息が詰まるほどの衝撃を受け、地面に倒れ込んだ。だが、仲間のミスリル級冒険者たちがすぐに彼を助けるために駆け寄った。


「奴は一人じゃない!全力を尽くせ!」


ミスリル冒険者たちは一斉にバロックに襲いかかる。だが、バロックはそれを楽しんでいるかのように軽々とかわし、時には反撃を加える。その動きには無駄がなく、常に冷静だった。


だが、戦いが続く中で、突如として空気が変わった。


「これ以上の虐殺は許さない…」


その声が静かに響き渡った。ミスリル級冒険者たち、そしてガイゼル軍の手下たちが戦いを止め、一斉に声の方向を見やる。そこには、イビルアイの姿があった。彼女は冷たい瞳で戦場を見下ろしながら、その手には魔法の力を集中させていた。


「イビルアイ…!」バロックの顔から笑みが消えた。


彼女の存在は、ガイゼル軍にも危険視されている。伝説的な冒険者「蒼の薔薇」の一員であり、その実力はまさに本物だ。彼女の瞳に宿る魔力は、今にも爆発しそうなほど強大だった。


「貴様ら、ここで好き勝手にはさせない。覚悟はいいな?」


イビルアイは一言そう告げると、手から放たれる光弾がバロックに向かって一直線に飛び出した。彼はそれを瞬時にかわすが、その余波だけでも周囲の木々を粉々にするほどの威力があった。


「なんて魔力だ…!」


バロックは焦りを隠せなかった。彼の仲間も戦慄している。しかし、彼はそのまま引き下がるわけにはいかなかった。自らの力を誇示するため、バロックは大剣を振りかざし、イビルアイに向かって突進する。


だが、その一撃は彼女には届かない。イビルアイは冷静に回避し、次の瞬間、空中に浮かび上がりながら呪文を唱える。


「《メテオフォール》…これで終わりだ。」


巨大な隕石が空から降り注ぎ、バロックを中心にした大地を揺るがす。彼は必死に抵抗しようとするが、圧倒的な力の差がそこにはあった。


「これが…イビルアイの…力…」


バロックの声は次第にかすれていき、隕石の衝撃によって大地に押しつぶされた。


イビルアイはその場に着地し、残りのガイゼル軍の手下たちを冷ややかな目で見下ろす。彼らは完全に戦意を喪失していた。彼女の力を前にして、戦うことが無意味だと悟ったのだ。


「これ以上の無駄な戦いはやめなさい。さもなくば、貴様ら全員ここで終わりだ。」


イビルアイの冷徹な声が森に響き渡る。その姿には、誰もが畏怖の念を抱かざるを得なかった。


ガイゼル軍の手下たちは次々と退却し、バロックの無残な姿をその場に残して消え去った。イビルアイは深く息をつき、周囲の冒険者たちに目を向けた。


「これで、少しは平和が戻るかしら…」


だが、彼女の胸には不安が渦巻いていた。この戦いはまだ始まったばかりであり、ガイゼルという存在の恐怖は、今後さらなる災厄をもたらすだろうと感じていた。

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