第13話: 真実の帰還

冒険者ギルドの任務を終え、モモンとナーベラルは静かにギルドを後にした。異変を察知した森での戦いからの撤退、その後の分析。すべてが計画通りだったが、モモンは何かを悟ったかのようにギルドのドアを静かに閉じ、ナーベラルに目配せをする。


「これで一旦、ナザリックに戻るぞ。」


「はい、モモン様。」


2人はその場を離れると、すぐさま転移の魔法を使って姿を消した。次に現れた場所は、壮大な地下墳墓――ナザリック大墳墓。いつもの重厚な雰囲気が漂うその空間に、モモンとナーベラルは無事に帰還する。


「おかえりなさいませ、モモン様。」


周囲にはアルベドやデミウルゴスをはじめとするナザリックの幹部たちがすでに待ち構えていた。アインズ・ウール・ゴウン、すなわちアインズ本人が玉座に座り、静かに彼らを迎える。


そして――モモンの姿がふっと揺らいだ。次の瞬間、黒い鎧が解け、彼の正体が現れた。


「パンドラズ・アクターか。よくやってくれたな。」


アインズが玉座から立ち上がり、パンドラズ・アクターに歩み寄る。その言葉には冷静な評価と共に、わずかな信頼感が滲んでいた。


「ありがとうございます、アインズ様。」パンドラズ・アクターは敬礼をしながら答えた。彼の目には、任務を成功させた自信があった。


ナザリックにおいてモモンとしての行動を任されるのは、今やパンドラズ・アクターの役割であり、彼はその任務を見事に果たしていた。アインズの代理として、外部からの干渉を避けつつナザリックの影響を与える。森での戦いも、その一環だった。


アインズはしばらくの間、パンドラズ・アクターをじっと見つめてから、彼に問いかけた。「今回の戦い、どう感じた?」


「はい、アインズ様。敵の強さは予想以上でしたが、私はそれに適応し、計画通りに撤退することができました。しかし、ガイゼル軍の幹部たちはまだ全貌を現しておらず、彼らの真の力は未知数です。」


アインズは静かに頷いた。「うむ、やはりそうか。あのガイゼルという存在…ただの冒険者ではないことは確実だ。もっと慎重に観察する必要があるな。」


「はい、アインズ様。」


ナーベラルがパンドラズ・アクターの横に立ち、無言で彼の任務遂行を認めていた。彼女も今回の偽モモン作戦の一環として行動していたが、やはり彼女も何かを感じ取っていたようだ。


「アインズ様、もしガイゼル軍の動きが活発化するようであれば、我々が早めに介入するべきかと…」デミウルゴスが慎重に進言する。


「いや、まだだ。今はまだ監視を続ける段階だ。ガイゼル軍がどれほどの力を持っているか、そして彼らの真の狙いが何なのかを見極めなければならない。」アインズの声は冷静で、確固たる意志が感じられた。


「次の手を打つのは、彼らがさらなる動きを見せたときだ。その時まで、私たちは準備を整えておく。」


こうして、パンドラズ・アクターによるモモンとしての任務は一旦終了し、ナザリックは再び静かな監視体制に入った。しかし、ガイゼル軍の背後に潜む危険と謎は、まだ完全に解き明かされていない。次の戦いは、さらなる力を必要とするだろう。アインズの目には、すでに次なる局面への覚悟が宿っていた。

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