第12話: 一時撤退

モモンはバルドルスとの戦いを終え、辺りに漂っていた魔力の気配が次第に消えていくのを感じた。ナーベラルも周囲を確認しながら、少し警戒心を解いた様子だった。


「モモン様、敵の気配がほとんど消えました。これ以上の脅威はないようです。」


モモンは無言で頷きながら、戦場となった森を見渡した。先ほどの魔物やガイゼル軍の残党がすでに消え去り、静寂が戻りつつある。しかし、ただの静寂とは違った。何かがまだ潜んでいるような…不安が残る。


「…これ以上ここに留まっても得られるものはなさそうだな。引き返すべきかもしれん。」モモンはそう言いながら、森の奥に目を向けた。


ナーベラルもその意見に同意し、声をかける。「はい。あまりにも気配が突然消えたのが気になりますが、モモン様が仰る通り、今は一旦退いた方が賢明かと。」


彼らは戦いを重ねる中で手応えを感じつつも、さらなる罠や隠された敵の存在を警戒していた。ガイゼル軍の幹部、バルドルスは確かに強力だったが、彼がただの前哨戦の駒に過ぎない可能性は十分に考えられる。ガイゼル本人がまだどこかで動いているかもしれない。


モモンは剣を背負い直し、意識を切り替えた。「一度ギルドに戻り、情報を整理しよう。次に進む前に、もっと手掛かりが必要だ。ナーベラル、行くぞ。」


彼女は無言で頷き、モモンの後に続く。2人は静かにその場を後にし、森林地帯を後退し始めた。


ナザリックでは、アインズが再び戦いの状況を映像で確認していた。その目は冷静かつ計算高く、彼の脳内では今後の計画がすでに動き出していた。


「気配が完全に消えた…この現象は一体何だ?」アインズは眉をひそめ、ナザリックの幹部たちに問いかけた。


「アインズ様、戦場の記録を見る限り、敵の撤退が意図的なものかどうかは判断しづらいですが…何か別の意図があると考えるべきでしょう。」デミウルゴスが即座に答える。


「そうだな。ガイゼル軍はまだ本気を出していない…彼らが何を狙っているか、もう少し様子を見る必要があるだろう。」アインズは再び映像を見直しながら、慎重に言葉を紡いだ。


「しかし、モモンがここで退くのは賢明だ。今は情報を集め、次に備えることが重要だ。」


アルベドもその言葉に同意する。「はい、アインズ様。慎重に動くべきかと存じます。」


こうしてアインズは、モモンとしての行動を一時中断し、ナザリックから次なる動きを見据えていた。森の静寂の裏に隠された謎と、ガイゼル軍の真の力。それらが解き明かされる日は、まだ遠くない。


一方、ギルドに戻ったモモンとナーベラルは、冒険者ギルドで得られた情報を元に次の計画を練り始めていた。ガイゼルの動き、さらなる敵の気配、そしてナザリックの介入をどう導くか…すべては計画の一部に過ぎなかった。

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