第10話: ナザリックの策謀


ナザリック地下大墳墓では、巨大なモニターに映し出される戦闘映像を、アインズ・ウール・ゴウンが無表情で見つめていた。彼の隣には、忠実なる部下であるデミウルゴス、アルベド、そしてコキュートスらが集まっている。


「ご覧ください、アインズ様。」デミウルゴスが一歩前に出て、落ち着いた声で話しかける。「あの冒険者、モモンがガイゼル軍の幹部たちを瞬く間に倒しました。これほどの戦闘力を持つ者が、この地に存在しているとは…。」


アインズは黙ったまま、映像を注視していた。モモンが次々と強敵を打ち倒す姿を見ても、感情を動かすことはない。しかし、その背後で繰り広げられる策謀の糸が確実に形を取りつつあることは感じ取っていた。


「ガイゼルという男は一筋縄ではいかない。彼の変身形態についての報告もあるが、現時点で第1形態しか見せていないようだ。」アルベドが冷静に状況を分析し、言葉を続けた。「それに加え、ガイゼルの軍団もただの集団ではなく、極めて強力な存在。今回、モモンが倒した幹部たちはその中でも精鋭でした。」


「ふむ…」アインズはゆっくりと頷いた。「モモン、いや、私があの戦場に出ていることで、何かが起きる可能性があるのか?」


「その通りです、アインズ様。」デミウルゴスはにっこりと笑みを浮かべた。「モモンという姿が非常に有効に働いているように思います。このままモモンを前線に出し続け、私たちの策を進めるには好都合です。」


「確かに、現状では誰もモモンとアインズが同一人物であるとは気づいていないようですね。」アルベドも同意しながら、慎重に提案を続けた。「今はナザリックを動かさず、引き続き彼の監視を続けるべきかと。」


「そうだな…まだ時が来ていない。」アインズは腕を組んで思考を巡らせる。彼自身の姿で動くのは、まだ早いと判断していた。


その時、コキュートスが重々しい声で口を開いた。「アインズ様、次なる行動は何でしょうか? 我々に指示を。」


「今はまだ動くな。」アインズは静かに答えた。「モモンとして、さらに調査を進める。ガイゼルについての情報を集め、その力の全貌を見極めたい。」


デミウルゴスは頷き、すぐに提案を投げかける。「ならば、私に任せてください。ガイゼル軍にさらなる混乱をもたらすための工作を進めてみせます。」


「ふむ、それでいい。頼むぞ、デミウルゴス。」


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その夜、モモンとしての冒険を続けていたアインズは、森林の奥で一つの異変に気づいた。静寂が深まり、風の音すらも聞こえない異様な空気が漂っている。彼の隣で、ナーベラルが眉をひそめ、警戒の表情を浮かべた。


「モモン様…これは、何かおかしいです。」


「そうだな。」モモンはゆっくりと大剣を構え、森の奥を睨みつけた。「ガイゼルか、それとも別の何者か…この地には、まだ何か潜んでいるようだ。」


しかし、その正体は依然として不明だった。モモンはすぐに動かず、じっくりと状況を見極めることに決めた。監視するべき相手が多すぎる今、動くタイミングは重要だった。


「この先に進むべきかどうか…慎重に判断する必要があるな。」モモンは静かにそう呟いた。


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ナザリックでは、アインズの策略が着々と進行している。ガイゼルという新たな強敵、そして彼の軍勢がこの先どのように動くのか、アインズの興味はますます深まっていく。そして、モモンとしての冒険はさらなる危険を孕みながらも続くのであった。

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