モモン──アインズ・ウール・ゴウンとして知られるアンデッドの魔法王は、ギルドの依頼を受け、高難易度の森林地帯に潜入していた。彼の目的は、ギルドが依頼してきた強力な魔獣の討伐だったが、それ以上に重要なのは、ナザリックに接近している未知の勢力、ガイゼル軍の情報収集だった。

「ナーベ、周囲に注意を払え。何かが潜んでいる。」モモンとして行動しているアインズは、従者であるナーベラル・ガンマに指示を出す。

ナーベラルは敬礼しながらも、少し緊張した表情を見せる。「はい、モモン様。この森はただの魔物の巣窟ではないようです。何か異常な気配を感じます。」

「そうだな…強力な存在がいるのは間違いない。」アインズは冷静に頷き、黒いヘルメットの下で笑みを浮かべた。この状況を楽しんでいる自分に気づきながらも、慎重に足を進めていく。

森は昼間でもほとんど光が差し込まず、濃密な霧が漂っていた。鬱蒼とした木々が無秩序に立ち並び、足元には不気味なツタが絡み合っている。まるで、自然そのものが敵となっているかのような感覚だった。

「モモン様、何か近づいてきます…！」ナーベラルが突然警告を発した。彼女の声が森の静けさを切り裂く。

次の瞬間、巨大な魔物が茂みから姿を現した。まるでライオンのような体躯に、黒い鱗が全身を覆い、赤い目がモモンたちを鋭く睨んでいる。その姿から発せられる圧倒的な殺気に、普通の冒険者なら逃げ出してしまうだろう。

「ナーベ、下がれ。」モモンは冷静にナーベラルを下がらせ、大剣を抜く。その刃は闇の力で黒く染まり、まるで世界そのものを斬り裂くかのようなオーラを放っていた。

「ガオォォォォ！」魔物が咆哮を上げ、モモンに向かって猛然と突進してきた。そのスピードと威力は尋常ではなく、地面を抉りながら迫ってくる。

しかし、モモンは微動だにせず、獣の一撃を正面から受け止めた。衝撃で大地が揺れ、周囲の木々が軋む音を立てるが、モモンはそのまま押し返し、逆に獣を宙に放り投げた。

「この程度か…。」モモンは静かに呟くと、漆黒の剣を一閃させた。刃が空気を裂き、獣の頭部を瞬時に切り落とす。頭を失った巨体が地面に崩れ落ち、森の静寂が戻った。

「次だ。」モモンは一瞥することなく、さらに奥へと歩を進めた。ナーベラルも無言で従い、その忠誠心が揺るがないことを示していた。

しかし、その様子を遠くからじっと見つめる影があった。ガイゼルの軍に所属する幹部の一人、リーヴァス・グレイブが、森の高所からモモンの動きを見守っていたのだ。

「モモンか…。思った以上に手強いな。」リーヴァスは冷静に呟く。彼の目にはモモンの戦闘能力が計り知れないほど強力であることが映っていた。だが、リーヴァスはただ見つめるだけで、まだ動くことはなかった。

「ガイゼル様の命令だ。まだこちらからは手を出すな、か。だが、いずれは対処が必要だろう。」リーヴァスはモモンを一度だけ振り返ると、静かに姿を消した。

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一方、ナザリック地下大墳墓では、アインズがモモンとして活動している間も、その動向は逐一監視されていた。アウラとマーレが巨大な魔獣の動きを報告し、ナザリック全体で緊張感が漂っている。

「アインズ様、ガイゼル軍の動きはますます活発になっているようです。ですが、まだ直接の敵対行動は見られません。」デミウルゴスが報告を終えた。

「ふむ…。監視を続けろ。まだこちらから動く段階ではない。」アインズは椅子に座り、静かに考え込んだ。彼の計画は常に一歩先を見据えていた。ガイゼルという存在を見極めるまで、モモンとしての役割を全うするつもりだった。

だが、今のところはまだ様子見の段階だ。

「モモン様、次の魔物の気配があります。」ナーベラルが森の奥を指差す。

「行くぞ、ナーベ。まだ終わりではない。」モモンは冷静に応え、そのままさらに深い森の中へと足を進めた。

そして、彼の背中を見つめ続ける者たちの視線が、遠くから絡みついていたことに、モモンはまだ気づいていなかった。

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