第7話: ガイゼル軍の幹部たち
モモンたちが森林の奥深くに挑む中、ガイゼルの玉座の間では、不気味な静寂が広がっていた。冷たく広大な空間に響くのは、ガイゼルの低い息遣いのみ。彼の前には忠実な五人の幹部が並び、これから始まる動乱に備えて集結していた。
「さて…状況はどうなっている?」ガイゼルの問いかけに、最も前に立っていた男が口を開く。
「ヴォルテクス・ディオニス、嵐の王の名を冠する私が、すでに森の入り口で偵察を行わせています。モモンという名の冒険者の動きは確かに見られますが、まだ深部には到達していないようです。」
ヴォルテクス・ディオニス、その名が示す通り、嵐を操る男であり、彼の金色の鎧は常に雷光を帯びていた。かつて数多の戦場で嵐を巻き起こし、敵軍を壊滅させた伝説を持つ。彼が戦場に立つとき、雷鳴が轟き、大地が揺れると言われていた。
「ふむ…だが、やつは単なる冒険者ではない。」ガイゼルはゆっくりと立ち上がり、玉座の間を歩き出す。その背後で、他の幹部たちが無言のまま彼の動きに目を向けていた。
「私が闇で包み込めば、奴が何者であれ無力化できるでしょう。」
そう冷たく響いた声の主は、漆黒のローブを纏った女、アクラル・セレナであった。彼女は「影の魔女」として恐れられ、その黒き力は虚無と同義。彼女の魔法は影と闇を操り、敵を幻惑し消滅させる。「漆黒の世界に堕とせば、やつも逃れられない。」
「だが、その必要はない。やつの力をもう少し観察し、どの程度の脅威か見定める。」ガイゼルの声に、アクラルは一歩下がり、静かに頭を垂れた。
その横には、巨体を持つ寡黙な男が控えていた。リーヴァス・グレイブ、彼は常に無口であったが、その存在感は並外れていた。巨大な盾を構え、黙々とガイゼルを護衛するこの男は、「鉄壁の守護者」として知られ、どんな攻撃も跳ね返す絶対的な防御を誇る。彼の一言は少ないが、戦場におけるその盾は無敵に等しかった。
「モモンの実力が如何ほどか、奴が防御を突破できるかどうかも見ものだな。」ガイゼルが微笑むと、リーヴァスは静かにうなずいた。
さらに後ろに控える細身の男が、薄い笑みを浮かべて言った。「もし奴が我々に敵対するなら、私が少し苦しませてやりましょう。」
その男、ゾルバク・フィエンは、「毒の司祭」として暗殺や毒の技術を極めた者であり、彼の一撃は必ず相手に苦痛を与える。彼の毒は即死ではなく、相手をじわじわと蝕んでいくのが特徴だった。「少しばかり楽しませてもらいたいものです。」
「やりすぎるな、ゾルバク。必要ならば、その時は命令を出す。」ガイゼルは冷たく言い放った。
最後に一人、玉座の間の隅で静かに立っていた男が一歩前に進み出た。ルクシオン・クロノ、彼は時間を操る能力を持ち、未来を見通す「時の操り手」であった。「モモンという名の男の未来…いずれ見定めましょう。だが、今はその時ではない。未来はまだ定まっていないのです。」
ガイゼルは再び玉座に座り直し、鋭い眼差しで幹部たちを見渡した。「準備を怠るな。我々の計画は完璧に進んでいる。だが、モモンという存在は警戒すべきだ。今は監視を続けるのみだが、必要な時が来れば、行動を起こす。」
幹部たちは一斉にうなずき、各自の役割を理解したまま玉座の間を静かに去っていった。嵐、影、鉄壁、毒、そして時。ガイゼルのもとに集う強者たちの力が、これからの戦局を大きく揺るがすことは、誰の目にも明らかであった。
モモンが何者であれ、彼を待つ運命は確実にガイゼルとその軍団によって左右されようとしていた…。
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