第2話: 闇の幕開けと復讐の刃
ナザリックから離れた大森林。その深奥にガイゼルは立ち、目の前に広がる小規模な冒険者の団体を見下ろしていた。彼の冷徹な瞳は、無数の死霊が従う者として背後に控えている中、静かに獲物を見定めていた。
この冒険者の団体は、周囲で恐れられている「白金の爪」だった。団員たちはみな白金ランクを誇り、数々の難関クエストを成功させてきたエリート集団だ。そして彼らの長、「雷光のヴォルフガング」は、さらに上のミスリルランクに位置し、強大な力で名を轟かせている。
ヴォルフガングは鋭い目つきで周囲を見回し、冷静に状況を把握した。
「不気味な死霊どもだが、これくらいで俺たちが動揺すると思うな。白金の爪が恐れる敵ではない」
彼の声には自信と威圧感が溢れていた。だが、ガイゼルはそんな言葉に微笑みを浮かべるだけだった。
「白金ランクか...お前たちには少しばかり過酷すぎる試練かもしれんな」
ヴォルフガングが冷笑を浮かべ、剣を抜いた。電光のような輝きを帯びたその剣は、彼の異名通り、雷光の力を帯びた武器だった。
「喋るな、死霊術師。お前に与えるのは即死あるのみだ」
一瞬、ヴォルフガングの体が空気を切り裂き、まるで稲妻のようにガイゼルへと迫った。彼の剣は雷光を纏い、轟音と共にガイゼルの胸元を突き抜けるはずだった。
だが、その刹那、ガイゼルはただ静かに手を上げただけだった。
「遅い...」
その言葉と同時に、空間がねじ曲がるように異様な霧がヴォルフガングの前に現れた。彼の剣は霧に触れた瞬間、まるで時間が止まったかのように動きが鈍り、雷光が一瞬でかき消された。
「なっ…!? 何だこれは!? 魔法か!?」
驚愕の表情を浮かべるヴォルフガングの横で、ガイゼルは冷たく微笑む。
「これは、死者の瘴気。生者の力など、この霧の中では無力に等しい」
彼は指を軽く鳴らす。すると、その周囲から無数の骸骨兵やゾンビが次々と湧き出し、白金の爪の団員たちに襲いかかった。
「くそ!みんな、迎撃だ!」
ヴォルフガングの指示で団員たちは次々に武器を構え、迫りくる骸骨兵やゾンビを迎え撃つ。白金ランクの彼らは一流の冒険者たちだ。剣と盾を構え、巧妙なチームワークで死霊たちを一掃し始めた。
一人の団員が鋭い剣技で骸骨兵を粉砕し、他の団員たちは魔法で次々にゾンビたちを燃やし尽くす。しかし、死霊たちは一向に減らない。ガイゼルは静かに指を振り、さらに多くの死者たちを召喚していく。
「終わりは見えないぞ...この数をどうやって凌ぐんだ!」
団員たちは焦りを見せ始めた。その中で、ヴォルフガングだけが冷静さを保ち、再びガイゼルに目を向けた。
「お前がこの戦いの中心だな...ならば、お前を倒す!」
ヴォルフガングは再び剣を掲げ、雷光の力をさらに強めて突進した。今度こそ全力を尽くし、ガイゼルに一撃を与えようとした。
しかし、ガイゼルはまるで予測していたかのように一瞬で姿を消し、ヴォルフガングの背後に現れた。
「…君は強い。しかし、私の敵ではない」
ガイゼルの手が一瞬輝き、次の瞬間には黒い刃がヴォルフガングの背中を貫いていた。その刃は見た目には薄く、脆そうだったが、ミスリルランクの冒険者の防御をも一瞬で切り裂いた。
「ぐっ…!」
ヴォルフガングは血を吐き、膝をついた。だが、彼の眼にはまだ闘志が宿っていた。必死に立ち上がり、ガイゼルを睨みつける。
「まだだ...まだ終わっていない…俺は、お前を倒す!」
彼の体から雷光が放たれ、その力は周囲の死霊たちを吹き飛ばした。だが、ガイゼルはそれを静かに見つめ、微笑んだ。
「ならば、これで終わりだ」
ガイゼルは指を一つ鳴らすと、彼の周囲の霧が濃くなり、ヴォルフガングの体を包み込んだ。彼の体からは急速に力が奪われ、膝を再びついた。
「…く、くそ…何なんだ、これは…」
「これは死の霧。生者の命を吸い尽くすものだ。君は強かったが、私の復讐の前では無力だ」
ヴォルフガングは完全に力を失い、そのまま倒れ込んだ。彼の後ろで、残された白金の爪の団員たちは、次々に死霊たちに押し潰されていく。彼らの叫び声が、静かな森の中に響き渡った。
ガイゼルはその光景を冷たく見下ろし、満足げに微笑んだ。
「次はナザリックだ。アインズよ、お前の時代は終わる」
復讐者の旅は、ここからさらに進んでいく。ナザリックへの挑戦が、今始まろうとしていた。
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