第1話: 復讐者、暗黒から目覚める
地上から数百メートル、ナザリック地下大墳墓の影に隠れるように、忘れ去られた廃墟が静かに存在していた。かつては偉大な魔術師たちが集い、強大な力を振るっていた場所だったが、今では崩れかけた石壁と薄汚れた装飾がその過去を物語るだけだ。
この廃墟の最深部、闇に覆われた部屋の中で、ガイゼルは静かに瞳を開けた。冷たい石のベッドに横たわっていた彼の体は、長い間眠りについていたかのように硬直していたが、その目には確固たる決意が宿っていた。
「...もう一度、始める時が来たか」
声はかすかに震え、だがその裏には力強い復讐心が秘められていた。彼はかつて、アインズ・ウール・ゴウンに挑み、無慈悲な敗北を味わった。ナザリックの絶対的な支配者の前に、すべてが無意味に思えた瞬間だった。しかし、その屈辱がガイゼルを絶望から復活させたのだ。
彼の手元には一冊の古い魔導書があった。魔導書の表紙は不気味にひび割れ、長い年月が経っていることを物語っていた。この書は、彼が死霊術師としての道を極めるための最終手段だった。
「禁断の術式…これが私の力となる」
彼はゆっくりとその魔導書を開き、流れるような死霊術の文字を指でなぞった。この書には、かつて誰も成功したことのない禁断の力が記されていた。ガイゼルはその力を手に入れ、アインズに再び挑むためにこの場所で長い間待ち続けていたのだ。
ガイゼルの心には、ただ一つの思いしかなかった。
「必ずアインズを超える...そして、彼にふさわしい死を与えてやる」
ゆっくりと立ち上がった彼は、手を広げ、周囲に存在する霊気を操り始めた。薄暗い空間に冷たい風が舞い上がり、ガイゼルの足元から骨のような亡霊たちが現れた。彼は死者たちを従えて復讐のための軍勢を築き始めるのだ。
「まずは手始めに…少しばかり実験をしようか」
ガイゼルは冷たく笑みを浮かべ、ゆっくりとその場を後にした。
ナザリックから離れた辺境の村。そこでは今日も静かに暮らしが営まれていた。住民たちは平穏を守るため、外界の危険に怯えつつも日常を送っていた。しかし、その平穏は長く続くことはなかった。
夜が更けるにつれ、村の空は不気味に赤く染まり始め、辺り一帯に冷たい霧が漂い始めた。やがて、村の中心にある教会の鐘が鳴り響き、不吉な予感を村人たちに与えた。
「な、なんだ?何が起きているんだ...」
震える声で叫ぶ村人たち。彼らの視線の先、霧の中から現れたのは無数の死霊たちだった。白骨の手を持ち、虚ろな瞳で人々を見つめるその姿に、村人たちは逃げ惑うしかなかった。
「死霊が出たぞ!皆、逃げろ!」
混乱が村を覆い尽くし、逃げ場を求めて人々は教会や家屋に駆け込んだ。しかし、死霊たちは容赦なくその後を追い、冷たい手で次々と村人たちの命を奪っていく。
その光景を、村の外れの丘から見つめる一人の男がいた。ガイゼルは冷たく微笑みながら、その光景を満足げに眺めていた。
「まだ始まりに過ぎない。この力でナザリックすらも侵略してみせる」
復讐者としての第一歩を踏み出したガイゼルの旅は、ここから始まったのだ。
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