第5話

「あの、お名前を教えて頂いてもよろしいでしょうか」



後ろから声をかけると



「あぁ自己紹介がまだだったね、私は家政婦長のハタだよ。よろしくね」



そう言って、ハタさんは不意にこちらを振り向いた。微笑むと目尻のシワがくしゃっとなる。


言葉は刺々しいものの、悪い人ではないらしい。



よろしくお願いします、と私も返す。




階段を上がり突き当たりを右に曲がったところがお父様の部屋、もとい真田家当主の部屋だった。




「ここだよ」



そう言って3回扉をノックして、ハタさんが声をかける。



「ハタです。お連れしました」



「…………はーい。お通ししてー」



なんとも呑気な声が返ってきた。



私の肩をポンポンと景気づけするみたいに叩くと、ハタさんは「さあ、入りな」と目で合図をした。

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