第4話

その女性は、私を上から下までじっくり見た後、




「あんたが今日から働く透って子だね。そんなに細い体で働けるのかい?」




と怪訝そうに目を細めて訊いてきた。



今になって、自分がなんの仕事をするのか不安になってきた。

たしかに男にしては細身に見えるだろうし

頼りにはならなさそうだとも思う。



けれど事務作業だったら、それほど支障はないはずだった。



と、まあ、頭ではとやかく考えたが、ここまで来たんだ。

戸惑いひとつ見せてはいけない、とそう思い

浮かんだ疑問もぶんぶんと頭を振ってかき消した。



「……恐らく問題ないかと。何卒ご指導のほどよろしくお願いします」




涼しい顔をして答えた私を見るやいなや、

さっきまで怪訝な顔をしていたのが嘘のように

初老の女性は満足気に微笑んだ。




「いい気概だね。

途中で根をあげるんじゃないよ。とにかく中へ入りな、説明はお父様から直々にあるそうだからまず部屋へ案内するよ」





踵を返し豪邸の中へ入っていく背中に

わかりました、と返事をしてその後を追った。

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