第19話 金色のコインっていくら?
古着屋に連れて来られた私は項垂れている。
だって古着屋って綺麗な服が売ってあるという感じじゃない。ちょっと流行から外れたものとか、汚れていたら買い取ってくれないじゃない。そのイメージしかない私は、店の中で項垂れていた。
なんというか一番いいたいことが臭い。いつ洗った服というのが置かれている。そして、破れていたり酷いのは赤黒い汚れまでついている。
それがワゴンセールと言わんばかりに積み上げられていた。
これ殺人事件が起こったよねという服だ。
私は小声でクロムに話しかける。
「クロムさん。新品の服というのはないのですか?」
先にタオルが欲しいと言ったときは、布屋さんで綿の手ぬぐいのようなタオルを十枚は買った。いや、どう見ても手ぬぐいだと思う。
「新品はオーダーメイドになるから、それはカリンの要望には合わないだろう」
確かに私は今すぐ欲しい。
こうなったら、掘り出しものをみつけてやる!
取り敢えず下着……シミーズというのが普通なのかな? それも麻なのか肌触りが悪い。せめて綿生地がいい。
店の奥に行くとちょっと雰囲気が変わった。生地の質感がいい服が畳まれて並べられている。
なんでここだけ雰囲気が違うのだろう?
店の入口で、外を気にしているクロムをそこまで連れてきて聞いてみた。
「ここの服は綺麗だけどなに?」
「商人用だな。商人は金を持っているから、質がいい」
「あと下着はどこ?」
「……ちっ!」
舌打ち!
舌打ちをしたクロムはある一角を指してまた、店の入口に戻ってしまった。
これは女性の長い買い物に付き合うのにイライラしているってやつ!
ヤバい。さっさと決めてしまおう。
ブチ切れて、買う商品を決めていないのに、店を出るぞと言われるかもしれない。
私はよくわからないけど、良さそうな服を適当に両手に抱えていくのだった。
「おい、店を出るぞ」
私が慌てて抱え込んでいると、五分もしない内にクロムが戻ってきた。
やっぱり、長い買い物に付き合うのに苛ついていた!
私が両手に抱え込んでいる衣類をクロムが抱えて、店主がいるカウンターまで持っていき、何かを言って、クロムは亜空間収納というのにしまっていった。
不思議なのだけど、どれだけしまえるのだろう? かなり私の貢物がしまってあるはず。
そしてクロムは金色のコインを一枚カウンターに置いて私の腕を引っ張って店を出る。
え? あれだけ買ったのにコイン一枚だけ?
私は両手に抱えていたよ。古着だといってもそれなりの値段になると思うのだけど。
後ろを振り返ると、店主は頭を下げて見送っていた。なんか上客扱いされている!
「ねぇ。どうしたの? これ戻ってない?」
私は香辛料が欲しいと言ったときに、それは街の反対側の出入り口に店があると言っていたはず。
「なんだ? カリンはどこに向かっているのかわかるのか?」
「だって、これ来た道だよね?」
「てっきりわからないと思っていたのだが?」
うん。クロムから馬鹿扱いされているのがよく分かった。
「何を急いでいるの?」
クロムはどこか焦っているように見える。それも周りに視線をめぐらせて警戒しているようだ。
「カリンの所為だな」
何故か私の所為にされている! 私はなるべくクロムの言われたことを守っていた……はず。
「『ドラゴン』って口にしたことだ」
「え? それが駄目だったの?」
「聞いた奴らが、仲間を集めて追いかけてきている」
いや、だってこの街からは遠いけど、ドラゴンたちが子育てをする山があるぐらいは知っているんじゃない?
だからこの辺りでドラゴンを見かけても、問題はないはず。
ああ、子育て中のドラゴンなんだなって。
「いいか、ドラゴンの素材は高く売れる。卵の殻だけでも一千万
ローグという単位がわからないけど、あの金色のコインの数からいけば、千枚はあったということかな?
金色のコインは一万ローグ? ということは買った服はあれだけで一万ローグ。安い!
「因みにその首輪は五十万
「首輪って言った!……酷い。って一年で五十万しか稼げないってことに驚き」
私が大型犬の首輪と思っていたことに、間違いはなかったらしい。クロムから見ても首輪だったということだ。
年収五十万とするなら、あの服は高い! 月給の四分の一を服に使ってしまったことになる。
「あれ? 鱗を出さずに、卵の殻を出したってことは、鱗だとどうなっていたの?」
「たぶん、裏に連れて行かれたな」
これは裏に連れて行かれて、もう無いよと言っているのに、ジャンプしろと脅されて、ジャンプしたら、お金があることがバレてしまうっていうカツアゲに遭うってことか!
これがクロムが言う人が恐ろしいということ?
「お前、変なことを考えているだろう?」
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