第2話『再会』

 ガタンゴトンと電車に揺られて数時間。母と共に私は3年……いや、もう4年ぶりか。とにかく超絶久しぶりに母の実家を訪れていた。祖母の葬式に参列するためである。

 本当ならば今日から学校があるのだけれど、流石にこちらが優先だ。晩年は交流がなくなってしまったけれど、子供の頃はよく遊びに行ったし、会いに来てくれもした。『好き』という気持ち自体は今でも変わらないし、こんなことなら、もっと会いに行けば良かった。せめて、電話だけでもしておくべきだった。

 ほんの少し、ほんの少しだけ早く、そう思えていたならば。後悔が胸を締め付けるけど、『祖母孝行、したい時には祖母はなし』だ。どれだけ元気そうに見えても、次の朝は分からない。

 祖母も、ちょっとした夏風邪をこじらせた事で急変したらしい。今となっては、遺体が傷む前に発見される環境で良かったと、そう受け止めるしかなかった。昨日の昼過ぎに旅立って、今日の夜に通夜を行って、明日の昼過ぎに火葬をする。死後の対応としては、これ以上ない速さだった。


(ちゃんと、顔を頭に刻み込んでおかないと)


 遺影などではなく、直接顔を見れる、最後の機会だ。疎遠になったキッカケでもある、『あの娘』の顔を見る事にもなるけれど。それはとても気まずくて、怖くて、今からでも逃げ出したくなるけれど。


(ちゃんと最期の別れをしておかないと、絶対に一生、後悔する)


 どうせ会うことになるのなら、私から会いに行くべきか。そう思ったから、母に一声かけて、家を出る。数年振りの道を歩いて、彼女の家まで辿り着く。インターホンを鳴らしたら、それからではなく、庭の方から声がした。


「はいはーい、今行きます! ……なんだ、千春じゃん」

「ひ、久しぶり……」


 冷たい眼差しを向ける彼女――紅葉に、私は片手を上げつつ、挨拶をした。

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